Smokey
授業を終え、帰宅すると、細い革ひもの首輪にちいさな鈴をぶらさげたロシアンブルーの猫がちりんちりん、とリンダの足元にすり寄ってくる。
「スモ―キー!」
リンダは鞄をおろすなり、その愛らしい飼い猫を抱きしめ、そのままベッドへ横になる。
「どうしていつもこうなるのかなー、学校なんて苦しいところどっか飛んでってスモ―キーとずっと遊んで暮らしていられたらいいのにねぇ」
馬鹿みたいにひとりごちてみる。そうでもしないとやっていけない。
撫でると気持ちよさそうにゴロゴロと喉を鳴らすスモ―キーに目を細めながら、リンダは夢に微睡んでゆく。
「リンダ!!」
「…また、あなたなの!?」
リンダは、例のお花畑にいた。そして、目の前にはメリーがいた。
「また来てくれたのね、嬉しいわ!」
喜びをあらわにするメリーと、現状を訝しむリンダ。
「あれ、私スモ―キーといたはずなのに…」
「スモ―キーって?」
「ああ、飼ってる猫よ。ロシアンブルーの可愛い子なの!」
「まあ!見たいわ!!」
…
そうして会話は続き、気が付くとリンダとメリーはさまざまなことを語り合っていた。学校でのことも、猫のことも、好きなことも、たくさん話をしていた。
それからは毎晩、眠りにつくたびに会うので二人はすぐに仲良くなった。
リンダは普段、話し相手がいないのでメリーと話すことはとても幸せなことになっていた。日頃の嫌なことを忘れさせてくれた。毎晩、眠りにつくのが楽しみになり、友達ができたようで嬉しかった。
メリーはリンダと同い年で、甘いものが大好きだということがわかった。花言葉にも詳しかった。
しかし、どんなに話をして、夢の中の花園を駆け回っても、彼女が何者なのかは明かそうとしなかった。
「リンダが覚えていないなら、別にいいの」