Miserable
リンダは、17歳の少女である。
性格はまじめだが、勉強はよくできる方とはいえない。
リンダと同じ学校の人々はみんな頭がよくて、いくらリンダが頑張ったところで彼女らに届くことはなかった。そんなみじめな学校生活に引け目を感じているうち、気が付けば日常的に話をするような友達は一人もいなくなっていた。
しかし彼女はそれほど心配していなかった。
…家で飼っている猫とは仲良しだったのだ。
学校へ着くと、人はたくさんいるけれど、リンダに「おはよう」と話しかけてくる相手は誰もいない。目の前で、誰かと誰かが挨拶を交わして駆けていく姿をぼんやりと見つめながら歩き続ける。そんな毎日には慣れっこだった。
それ故に、今朝の夢で人に話しかけられたのは本当に驚いた。
―あの女の子、なんて名前だったかな。
リンダは夢の内容を想う。
―たしか、メリーさん。
彼女は私を知っているらしかった。
夢の中でリンダが会ったメリーという名の少女は、ふんわりとウェーブのかかった長い髪にリボンを結び、淡い水色のワンピースを着ていた。おとぎ話のような人だった。
―それに、あのお花畑。
どこか懐かしい感じがした。以前にも来たことがあるような…
「リンダ!」
「!?」
そんなことを考えているうちに、いつの間にか授業中になっていたらしく、リンダは先生に刺されたのだ、ということに気づくのに時間がかかった。
「えっと…」
刺された問題について考えようとした矢先、後ろから誰かが答えと思しき単語を口にする。先生は、「正解!」とその生徒にきりっと笑顔を向けると、また黒板とにらめっこを始めてしまった。
…まただ。
リンダは思った。
―私はいつもこうなのだ。
答えようとして考えようとした途端、他の誰かにいつも持って行かれる。
けっこう、辛い。