23話
奏視点です。
およその予想は最初の最初、つまりは時間を止めるという荒業によって動きが止められたあのとき、一目見た時点でついとった。
蛍、雫、そしてもう一人の蛍の下へと向かう最中、この事態の原因とも呼べるワシの誤算について考えていた。もちろん後学のため、誤算を正すため。
雫というワシの手抜きによって記憶の恐らくは感情の僅かな穴を見過ごしてしまった。それだけではない。あろうことか蛍の分身とも言える水蛍(区別するために仮にそう呼ぶことに始めてあったときに決めとった)をただの双子と勘違いするという失態。それだけに留まらず初めて二人を見るまで気付けんという間抜けぶり、それどころか、強引にワシがこの場に残り二人の、特に水蛍に会えなくなるほどの消耗をして、二人の帰還を待つなどという下らん考えに一度は頭が犯されるとったくらいじゃ。
しかしそれにしても、水蛍がワシにあのときの仕返しをしに来たとばかり思っとったが、見た目がこうも変貌しとっては気づけんのじゃったろうな。そのせいも大いにあってじゃろうが、蛍や雫にばかりちょっかいを出し取る。
これではワシが本当に何もせず、それどころか事実すら隠したまま全てが終わりかねん。
しかし、もう全てが終わりかねていることを察知した。無駄に状況判断の能力が付いているというのも困るものじゃ。
血に濡れた日本刀。
泣きじゃくる蛍。
目を丸くする雫。
全てを理解した上でワシは叫んだ。
「何があったんじゃ!」
白々しいことこの上ないのぉ。
ワシは自分のことが嫌いになってしまいそうじゃ。
というわけで、23話でした。
至らぬ点が多々あるとは思いますが、少しでも楽しんでいただけていれば幸いです。




