とある英雄の手記
【序章】
『人類は伝説を手に入れた。
大陸中が歓喜に沸き、見たこともない神と英雄に感謝の祈りを捧げた日から、十一年。
我らが帝国は目覚ましい発展を遂げ、国民は平穏きわまりない日々を過ごしている。
道行く者に「幸せか?」と問えば、八割くらいは「まあそれなりに」と答えるだろう。
満ち足りてはいなくても、笑える日がある生活。
さして努力をしなくても、明るい未来が待つ人生。
そして、俺は自分の過ちを知った。
過ぎた欲求のツケは自分自身が支払うことになる。
その事の重大さに、俺は気づいていなかった。
分不相応の幸福など望むべきではなかったのだ。
幸せなんてものが、そう簡単に手に入るわけがないというのに。
死ぬまでに罪を償いきれるだろうか。そもそも、タイムリミットはどれくらい残されているのだろう。
せめてあの子に類が及ばなければいい。
あんな身体にした親がどの口でほざくのかと自分でも思うが、それ以外に望みはない。
亡き妻とも約束した。
俺は残りの人生を賭して、責務を果たそうと思う。
愛する我が子の未来に、負の遺産だけは残すまい。
Nov,20,1098』