話を聞くよ
一応書いておきます!
白石先生のフルネーム:白石 奈子
「教頭先生ちょっとめんどくさくない?」
「なんとなく分かる…」
学校のある駅から2つ行ったところの安いけどお洒落な隠れ家的な居酒屋。いつものこの場所はまだ恵美とも来ていなかった。今度連れていこうかな。
淡い照明が優しく顔を照らしてくれる。
「…話変わるけど、夏紀ちゃんってー」
目の前の軽く酔った人はふにゃふにゃ笑った。奈子ちゃんってこういうとこ可愛いよなぁー。
「モテたよね?」
「…え?」
水に伸ばした手がとまる。
…今日手、とまるな…。っていうか、モテるとかそういうの以前に、、。
「…うーん。奈子ちゃんこそモテてそうだよね。私、告白されたの今付き合ってる人だけだもん」
龍ちゃんだけなんだよね、私の事が好きだって思ってくれた男の人。
すると奈子ちゃんは何かを感じとった様に真顔になった。ジョッキを手に持ち口元に当てる。
「…まーじか。夏紀ちゃんとこはそういう感じなんだー」
「ん?」
なにがそんな感じなんだろ。…んーまぁいいや。
「…ところで奈子ちゃんは彼氏とか、そういう好きな人いないの?」
こういう話題ふってきたの奈子ちゃんの方だったからいいよね!
と、奈子ちゃんは、一瞬フリーズした。
ど、どうしたんだろ。
「…今ね、好きな人はいないんだけど…」
なんかまずい話かな…ダメだったかな…。なんとなく明るい雰囲気が暗く重くなっていく気がした。ど、どうしよう。奈子ちゃんがちょっと変だ。
「……元彼と今こじれてるの。」
…わ、。まじか、そうなのか。
「………大丈夫なの?」
その場しのぎに聞こえるような事しか言えなかった私を目の前に、ジョッキを持ったままの彼女は、うつむいた。カラッと音を立てて氷が揺れる。
「なんかー…ダルイから連絡あっても放置してる…」
それ、…やばそうだよ。
「奈子ちゃんそれ、危ないんじゃないの?」
ゆっくり顔をあげた奈子ちゃんはニコっと笑った。え?
「危なくないよー。だってあたし今日合コン行こうとしてたんだから!!」
あははっと笑った彼女は携帯を見て、そろそろお開きにしましょうかと呟く。
「……」
ちょっと待って。そういう事じゃなくない?奈子ちゃんはもう財布を取り出していた。
店から出ると外はもう真っ暗だった。
「……奈子ちゃ」
「夏紀ちゃん、電車一緒に待つよ」
私を見てまたニッコリ微笑んだ。
今、いつもの笑顔の彼女は、本当は泣きたいんじゃないだろうか。だったら、へたくそすぎない?聞かれたくないならもうちょっと上手くやるよね。
それだけ、辛いんだよね?
「行こう。…私のお家じゃないけど。」
次の瞬間、奈子ちゃんの顔が崩れた。