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Free love  作者: 依川 春
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見えないナニカ

放課後の掃除は当番制で、各クラスの監視役は担任の先生の仕事。そして、ゴミ置き場はその他の教科担任の先生が行っている。

月曜日。今日は私だ。外に行かなきゃならない。

靴箱に向かいながら、そう言えば昼休みが終わるあたりから雨が降り始めた事を思い出した。

「…こんにちはー」

「こんにちは」

廊下を歩きながらすれ違う生徒の挨拶を返していく。皆いい子だなぁ。龍ちゃんなんて学生の時とか先輩にも挨拶しなかったな。…なんでシメられなかったんだろ。…って龍ちゃんはいいから。いいから。

靴箱に着き、靴に履き替える。

昇降口を出るとちょっと湿っぽさは残っていたけれど雨は降っていなかった。

自転車置き場の前を歩き、右に曲がる。少ししてゴミ置き場に着くと、数人の生徒がゴミ袋を脇に抱えて待っていた。やば!

「ごめんね待たせちゃったね!!」

謝りながら急いで走って鍵を開ける。

お待たせしましたーなんて言いながら扉をあけて、生徒達にゴミ袋を置かせる。

燃えるゴミ、燃やせないゴミ、資源ゴミ。

各々置くと、「よーっしゃ、これで帰れるわー」「えーどっかよろー」「いや金欠って言わなかった?」

口々に話しながら帰っていった。

「………はぁ。」

いいなぁ。私も恵美となんか美味しいもの食べたいなぁ…お腹すいたなぁ。私も一緒に行きたいなぁ…

「あ!鶴賀先生!」

「…?」

声のした方を向くと、英語の白石しらいし先生が立っていた。いつものニコニコ顔だ。

「先生今日は彼氏と合ったりする?」

くりくりした目がキラキラ輝いている。可愛い。

「ううん、なんにも予定ないよー」

実は白石先生とは同い年で結構友達だ。学校から外を出たら名前呼び。もしかして、一緒に飲んでくれるのかな。

「じゃあ今日一緒に飲まない!?ホントいうと合コンおじゃんになっちゃって!」

「え、そうなの?じゃあ今日一緒に飲も!」

今日は恵美も残業入るって連絡あって一人で家にいるのもどうかと思ってたんだよなぁ。良かったー。

「やった!じゃあいつもの「先生」」

「「!!」」

白石先生の後ろを除くと…あ、松永君だ。

「…燃えるゴミ…入れに来たんですけど…」

ちょっとだけ困ったような顔だ。

「うわ、松永君ごめんね!めちゃめちゃプライベート話しちゃってたよー」

眉尻を下げて謝る白石先生と共に私も謝る。

「本当ごめんねっ、松永君はい、ゴミ袋頂戴」

…今日って、松永君に対して教師失格過ぎるでしょ…。ゴミ袋を受け取りながら、テンションが下がってく…。

「いや、別に…」

「?松永君、顔色悪くない?大丈夫?」

「え?」

松永君は、そんな事ないと言いたげな顔をした。

松永君は優しげな目で、色白でそれはもうイケメンだ。私も学生時代にこんな人と勉強してみたかったくらいに、性格もいいし、人当たりもいい。…でも今日の昼休みからなんだかおかしいのだ。白石先生の言う通り、なんだか本当に青白い。どうしたんだろう。

「だ、大丈夫?保健室行く?」

顔をのぞき込んだ瞬間だった。頬がみるみる朱色になっていった!え、え?え?

「ちょ、松永く」

「さようなら!」

また私の前から駆け出した松永君は周りも見えないのか人を押しのけるように走っていった。

「…ふ、不思議な子……」

「……」

宙に置き去りの私の手は、降ろされる。

「…先生の方が不思議な子よ」

白石先生はちょっとだけ途方に暮れたようなあ諦めたような、変な顔をした。

…ええ?


空はどんよりした曇り。松永君、悩んでることがあるのかなぁ。

「…ふー。まぁ今日は語り合お!職員室で待ってる!」

「うん分かった!待っててー」

手を振り、右に視線を動かすと女子生徒が歩いてきていた。

「はいこんにちはー」

挨拶を返しながら、最後の仕事に集中しようと気持ちを切り替えた。

はやく雲間から太陽が見えますように。

今日はもう終わるけど。



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