素直に感じたトキを
30分もすると大君はやってきた。走ってきたのか、息を切らせた彼は、焦っていた。とりあえず、コーヒーを飲ませて落ち着かせる。…ってあれ、カフェインて逆効果?
「……で、今龍はどうなってんの?」
恐る恐るという感じで恵美が聞く。もう一口コーヒーをすすった大君が、目線をしたにそらし口を開いた。
「…夏紀ちゃんが恵美の家に着いたって連絡受けたあと、まぁ龍もショックだろうしって気使って明日の昼頃話聞いてやろうと思って」
「…ん。で?」
恵美が大君の話を促す。
「それで、今さっき行ったわけよ。そしたらあいつん家、まじで静かなの!!新聞は突っ込まれたままだわ、インターホンには気づかないわでさ、おかしいと思って試しにドアノブ回したら鍵も開いてたからね!」
……龍ちゃん。…生きてる?
「で、まぁ、入ったんだけど……ねぇ、夏紀ちゃん部屋のどこで龍と別れた?」
「…え?…えっと確か…」
朝ごはん作らないで、龍ちゃんが寝てるちょっとの間に荷造りしてたのをまとめておいたんだよね。それで…龍ちゃんが冷蔵庫あけて水飲もうとしてたから……。
「確か龍ちゃんはキッチンにいたよ」
「っはぁーーーっ!!!良かったああああ…」
いきなり安堵…?どういうこ、
「ちょっと話分かんないんだけど!!」
おぉ、恵美姐さん。
「いやおれ最後の別れ場所分かんないからさ、龍がいきなりキッチンに座ってたから…色々想像しちゃってね?」
…まさか!!
「アンタならしそうだわ…」
げんなりと肩を落とした恵美。
「…じゃ、じゃあ龍ちゃんは今、何してるの?」
「あ、あぁ、龍は目の色なくなってて、ぼーっとしてたんだけど話しかけたら、昨日の朝から飯食べてないって言うからとりあえず冷蔵庫にあった栄養ドリンク飲ませてからベッドで寝かせたよ」
「…そっ………かぁ。」
龍ちゃん、ちゃんと私の事でショック受けてたのか。良かった。……え、良かった?
「っちょ、待って!龍ちゃんそれじゃ仕事行ってないじゃん!!会社には連絡してないの!!?」
あああ!それってやばくない?社会は甘くないんだよ!龍ちゃんあんまりぼーっとしてたらクビになっちゃう!あ、でも私試してるからそのままで…ってやばい!こんがらがってきた!
「いいから、いいから。…とりあえず龍に関しては一先ず安心ね。…まぁ、そんなにまでさせた夏紀の言葉にあたしは興味があるんだけど」
「…え、?」
すると大君が手を挙げた。
「おれもー。あの無表情で無感動な龍が灰になった原因を知りたいよ」
ちょ、な、なにそれ。
っていうか、やっぱり駄目だったのか?でもだって試すくらいならこんなの、言っても良かったんだよね。
「「で、なんて言ったの」」
「え、えっとー…もう、終わりにしようか…って、言った。」
何故か2人の時間がとまった。
「…え?」
***
「……いやぁ、大が龍の携帯使って会社に連絡してくれて良かったけどさぁ」
私のあの一言の後、冷めて飲めないのをもう一度いれ直したコーヒーをすすった恵美がため息をついた。
「別に普通だったからびっくりしたよーっ」
それにけらけら笑った大君が、
「でもまぁ、それだけ夏紀ちゃんの事好きなんだって分かったんじゃないのー?…どうする?試すの、もう終わる?」
終わりにしようか?ってのが、不味くなかったのはちょっとだけ安心したのは、正直な気持ちなんだけど……確かに、好きなのかってとこを試したわけなんだけど…。
「…私、…終われない…か、も。」
「…ま、そうかもね」
恵美を見ると、頷いてくれた。
「だってそれは、大からの情報だよ。龍が面と向かって夏紀に気持ちを伝えてこそ、試した結果の答えになるんだから」
そうだよね。
意地とかじゃなくて。私は、龍ちゃんを知りたいんだから。
「んな生温くないからねぇーっ…でも、」
恵美は、再びこちらを見ると言った。
「その時には、夏紀も夏紀自身の気持ちを伝えなきなゃ。ね。」
私は、それに力強く頷いた。
***side恵美
片付けを夏紀がかってでてくれたので、ソファでのんびりしていると、大がこちらを見てニッと笑った。
「おれも夏紀ちゃんに便乗しようかなぁ」
出会ってからのいつもの調子に、あきれる。
「…好きにすればー?」
すると、人ん家のテレビを勝手につけてはぁーいとのたまった。
テレビは、ちょうど通販番組をやっていた。
「なんと!今だけ送料無料っ!!」
「えぇ!良いんですかぁ!!」
箱が豪華なとか、あれがどうとか、色々言いたい放題なうざったいのに長ったらしい番組。別に批判するわけじゃないけど。
いつか、本に書かれていたのを思い出す。夏紀や龍、…大もかもしれない。
「……あっ!私マッサージチェア欲しいんだーっ」
「…夏紀…あんたってば」
―――確かに、恋だって無料らしい。
するのだって、個人の自由だ。ただ、それにリスクが伴う。
それらを抱える勇気があるのか、ないのか……なんだよね?
「夏紀ちゃん…へんなのに引っかからないで良かったわぁ~」
「え、どうゆうこと?」
ねぇっ!と、振り向いて笑う大が、殊更に眩しかった。