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死者の悟り

…………。


ここは、どこだ___?



僕は眼を一杯に開き、自分が今横たわっている場所を確認しようとする。だが、出来ない。目がチカチカとして、焦点が一向に定まらない。

感触からして、ベッドの上なのか……?よく分からない。


妙な感覚から逃れるように起きようとするも、体が言うことを聞かない。ダルさがあるとかそのようなものではなく、もう既に脳と体の感覚が切られているような、起きる行為そのものを自分の体が知らないというような、そんな感じがした。




そして。



ああ、自分、死んだんだっけ____と。


不意に悟った。

悟ったのだ。思い出したのではない。未だ自分の記憶はどこかに飛んでいってしまって、戻ってくる気配がない。

ただ自己の死を自覚したことで少し気が楽になった。同時にまわりの景色も晴れてゆく。


どうやら、病院らしい。あのよくある薬品の匂いは一切してこないが、天井や壁の溢れるような白さと、自分が横たわっているらしかった簡易ベッド、点滴、心電図を標示するモニターなど、ここが病院と判断出来るには充分すぎる内装だった。


心電図モニターには何も書かれていない。もちろん0という表示もない。不意に気になって辺りを見回したが、あまり見えなかった。ただ誰かが見舞いに来たり悲しんでくれる人がいたりなどということは一切無かった。別にこのような時に自意識過剰になるわけでもないが、身内くらいは居ても不思議ではないはずなのに。もしかすると家族ごと死んだのかもしれない。


ただ動けない以上、何も出来ない。寝ることも出来なさそうだ。なんと不都合な。死ぬと自分の意志での睡眠も許されないのか。

どうしたものだろうともう一度心電図モニターに目をやった。するとそのモニターはある文字列を表示し出した。


仲村 智久

119/120


仲村智久。そう書かれていた。



___ああ。これ、自分の名前だ。そうだった、そうだったな。そんな名前だった。自分の元から飛び去っていた記憶が、一部帰還したようだ。相変わらず自分の死因などを含め、死亡時の記憶に関しては依然として思い出せないが。

しかしそれでも、自分が死んだという思いは確信となって自分の頭の中を渦巻き、消えることは無かった。

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