第一話 渡来島について【そのよん】
今回は綾桜が執筆しました。
Side 豊春命
山組の二人と別れて、さてどうしよう。山の方へ行く用事は終わってしまったし。まぁ、とりあえず町の方へと歩を進める。向かう先は島民の憩いの場である公園。
するとそこには先客が一人。見慣れた白衣に栗色の髪の男がベンチに座っている。彼はこの島唯一のお医者様。名前は伊東雅治君。小さな頃から妖の類が見えているからか、妖も診察してる。
「やぁ、雅治君こんにちは」
「往診中ですか?」
「ああ、こんにちは。見ての通りだ」
隣に置いた往診鞄を叩いて笑う。そして大きな伸び一つ。
「まぁ隣にどうぞ?」
遠慮なく雛ちゃんと並んで、隣に座る。
そうして談笑をしているとなんとも情けない声が…。
三人そろって声の方に顔を向けると、自転車をかっ飛ばすお巡りさんがこっちに向かってる。そして、その後ろには見るからに幽霊らしきものが…
「あんの馬鹿…!!」
「うわぁ、随分とアグレッシヴな霊だねぇ」
「そんなことより助けないと」
三人でわちゃわちゃしてる間にもおわまりさんは近づいてくる。
「うわぁああん!!伊東先生助けてください!!」
「何やってんだよ犬っころ!まぁた余計なことしやがったな!?豊さんのお守りは?」
「交番に…」
「この駄犬!!!!」
まるでコントのようなやりとりに笑いそうになる。…けど、雛ちゃんに怒られるから我慢我慢。
「まぁまぁ…とりあえず剛君にはこれをあげるから」
コートのポケットからお守りを渡して、幽霊に目を向ける。さて、どうしたものか…。あまり無理や
り成仏とか消滅とかしたくないんだよねぇ。
「ほら早くお帰り?ここは君のいるべき場所じゃないでしょう?」
ばいばいと手を振れば幽霊は姿を消した。なんだ、剛君と遊びたかっただけか…。相変わらず霊とかに好かれるなぁ、このお巡りさんは。
ぼろぼろと涙を流して、雛ちゃんに慰められる剛くんを見る。彼は犬飼剛。いつぞやの首相みたいな名だけれど、何の関係は無いそうだ。
この島唯一のお巡りさん。本土から来たばかりだけれど、端整な顔と心優しい性格だから子供を中心に人気者だ。難点なのがヘタレで妖に憑かれやすいこと。とり憑かれたら雅治君に泣きついてるとか何とか。
そんな二人と別れて、さて次は…役場にでも顔を出そうかと提案する。
遅れたのに、この短さ。申し訳ない…
お次は志乃っち!お願いするよー