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渡来島通信  作者: 志野
3/5

第一号 渡来島について【そのさん】

side:雛



「雛ちゃん、次はどこ行く?」


 海沿いをのんびりと歩きながらそう言った豊さんにどう答えようか頭を巡らせる。せっかく海まできた、という思いもなくはないけれど、このまま真っ直ぐ行っても田畑が広がる農業地帯に行き着くだけだし。

 うーん、うーん、と唸る頭の中にとある人物が思い浮かぶ。最近会っていないからこの機会に会うのもいいかもしれない。けれどこの人に会うためには山を登らないといけない。山自体は問題ないけれど、時間があるかどうか。それでも、一か八かにかけてみるか。

 よし、と呟いて豊さんを見れば豊さんもこちらを見ていたのか目が合う。


「豊さん、時計あります?」

「うん?あるよ」


 コートの袖口に隠れていた時計を見れば14時過ぎを示している。


「豊さん、少しだけ山の方に行きません?」

「山?……嗚呼、なるほど」

「二人とも最近みかけませんからね」

「もっと頻繁に町におりてくればいいのにねぇ」


 山と聞いて私の考えが分かったのか、顔を綻ばせながら頷いてくれた。行けるといってもたぶん山に入ってちょっとした所までだろうけど。

 会えるといいなぁ、なんて思いながら二人で歩いていたときだった。


「雛ちゃん、あれ」

「え?……あ」


 どうやら山まで行く必要はなかったらしい。豊さんが指差す方向には、今まさに会いに行こうとしていた二人が歩いていた。まだ遠くにいるからか、二人は気づいていない。


「山彦さん!狐森さん!」


 ぶんぶんと大きく手を振りながら呼びかければ気づいた二人がこっちに向かって歩き出す。

 山彦さん、フルネームは川端山彦(かわばた やまひこ)さん。さっき会った漁師の海彦さんの双子の兄で、猟師をしている。普段は山に籠もって猟をしているのだけど、こうして定期的におりてきては捌いた肉や毛皮を売っている。

 そして狐森さんは狐森秋人(こもり あきひと)といって山奥にある稲荷神社の神使としている。稲荷神社に稲荷大明神がくることはなく、相方の神使も昔出て行ったきりで帰ってこないらしい。なので今は狐森さんひとりで神社を護っている。


「こりゃあたいしたもんだね」


 豊さんの一言で思考の海に溺れていた意識が浮き上がる。前を見ればすぐそこに山彦さんと狐森さんがいた。山彦さんの手には肉の入ったビニール袋や鹿の毛皮などが握られている。


「はっはっは!いやー、今回は大猟だったよ」

「今回はどれくらい籠もってたんですか?」

「ん?んー、だいたい一週間ちょっと位じゃないかな?まだ降りるつもりはなかったが、珍しいお方に会ったからな!」


 そう言って山彦さんは狐森さんの肩をバシバシと叩く。狐森さんは痛そうにしながらも困ったように笑っていた。


「そういえば珍しい組み合わせだねぇ」

「ちょっと買い出しの為に降りてたら鉢合わせして、鹿肉を貰ったんです。ついでに猪肉もくれるって言うんで」

「お、そうだ!雛ちゃんたちもいるか?今回は鮮度も抜群だし美味しいぞ~」

「雛ちゃん!」


 不思議なコンビの謎が解けたところで山彦さんが有り難い提案をしてくれた。案の定、豊さんは目を輝かせてこちらを見ている。たぶんだけど、鹿肉の刺身を肴に一杯やりたいんだろうな。しょうがない。


「でしたら、巡回の後にいただきに伺います。そん

な直ぐに戻りませんよね?」


 嗚呼、と頷いた山彦さんにお礼を言ってチラリと豊さんを見れば嬉しそうにしている。きっと頭の中は今夜のことでいっぱいになってるんだろうな。


「それじゃあ、私たちは巡回に戻ります」

「おお、またな!」

「バイバイ」


 二人に頭を下げて、頭の中が今夜のことでいっぱいな豊さんの手を引いて歩き出す。

 あ、そうだ。狐森さんにこれだけは言っとかないと。


「狐森さん、しっかりご飯は食べて下さいね!家に来てもらってもいいので」

「……うん。二人とも気をつけてね」


 顔だけ振り返ってそう言えば狐森さんは笑って返事をしてくれた。返事するまでの間に若干の不安を抱きつつ、次の場所へと歩を進めた。




お、終わったー!

若干、途中で方向性を見失いつつの執筆でした。

今回は山男の山彦さんと神使のこもりんが登場。

しかしこもりん、目立たない。

山彦さんのキャラに飲み込まれちゃってます。

うーん、もっと精進せねば。

ってことでりんちゃんにバトンタッチ!

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