第一号 渡来島について【そのいち】
この話は志野、綾桜によるリレー小説になります。
今回は志野執筆です。
side:雛
春の暖かな陽射しが窓ガラスを通り抜け、室内を明るく照らす。今日も一日いい日になりそうだ、なんて思いながら、着慣れた巫女服を身にまとう。最後に腰まで伸びた長い髪を頭の高い位置で結えば準備万端。
真っ白な足袋に包まれた足に草履をひっかけて、手には箒を持つ。
「さあ、今日もがんばりますか」
ここは渡来島と呼ばれる小さな島。私はこの島の神社、豊春神社で神職をしている。私、早乙女雛の一族は代々、この島の守り神である豊春命を奉り、共に島を見守ってきたらしい。らしい、というのは小さな頃に父親に聞かされたことしかないから。あと、本人も言ってた気がする。本人というのはもちろん、豊春命その人だ。
少し話が変わるが、ここ、渡来島には多くの“人ではないもの”が存在する。いわゆる、カミや妖なんて称される存在だ。島民のほとんどは、その“人ではないもの”を認識し、なおかつ共に生きてきた。
かく言う私も、カミや妖といった存在を小さな頃から見ることができたし、知り合いにも多くいる。守り神である豊さんなんかは物心ついたときからの知り合いになる。
「あー!ひなちゃんだー」
「ひなさん、おはようございます」
のんびりと昔を懐かしみながら境内を掃除していれば、拝殿の方から声が聞こえた。声の方を向けば、豊春神社の神使であるこまじろうとししまるがいた。
二人とも子供の姿をしているが実際は、二~三百歳らしい。豊さんもそうだけど、彼らの年齢は本当に予想ができない。そんなことを考えつつも二人に笑いかける。
すると、ぶんぶんと手を振っていたこまじろうは私が気づいたことを知り、白く長い髪をなびかせて走ってくる。
「はい。おはよう」
抱きついてきたこまじろうを受け止める。すると、こまじろうは青と黄のオッドアイの瞳を嬉しそうに細めてぎゅうっと、さっきよりも強く抱きついてきた。
「こら、こま。ひなさんが困ってるだろ」
近くまで来ていたししまるの拳がこつん、と軽くこまじろうの頭にぶつけられる。それに「大丈夫だから」と返しつつ、白のフワフワとした髪を撫でる。
自由なこまじろうに対してししまるは真面目で礼儀正しい。白い髪も、オッドアイの瞳も、外見は似ているところを見つけやすいのに、性格となるとそれは難しい。まあ、だから仲良くやれているのかもしれない。
「そういえば、豊さん知らない?」
「さあ?今日はまだみてないよ」
「もしかしたら、まだ寝てるんじゃないですか?」
今日はまだ会っていない、二人の主でもあるこの島の守り神の居場所を聞けば、二人も会ってないらしい。さて、困ったな。これから島の巡回と称して、豊さんと散歩に行こうと思ってたんだけどな。
「ひなちゃん巡回の時間?」
どうしたものかと唸っていたら、こまじろうとししまるが不思議そうな顔をして見上げてくる。こういった仕草は二人ともシンクロしていて、ただでさえ可愛いのに可愛さが倍以上だ。
「そうそう。まあ、とりあえず祭殿の方まで行ってみることにする」
「じゃあ、その箒はぼくが預かります」
「お留守番は任せてね!」
二人の可愛さに絆されつつも、豊さんを探しにいかねば、と心を強くすれば二人はあっさりと傍を離れる。しかも、ししまるは箒を預かってくれた。
なんていい子達なのかしら、なんて思いながら
「行ってきます」
そう言えば、ニコニコと笑いながら「いってらっしゃい」と返ってくる。それに幸せを感じながら豊さんの元へと向かった。
こんな感じで始まりました。
渡来島通信です。
こんな感じでいいのかな?まだまだ手探り感満載ですがよろしくお願いします。
次はりんちゃんです。