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製紙

紙は偉大な発明です。

私がこの資料を作ることが出来ているのも、小説を読めるのも、紙のお陰です。



【紙ができるまでの歴史】

 紙ができるまで、どのようなものが文字の保存媒体として用いられたでしょうか。


 エジプトではパピルスが、中国では竹簡や木簡、布帛ふはくなどが有名ですが、他にはカミヤツデの髄(ライスペーパー)(木のことです)、金属(特に真鍮や銅、青銅、鉛)、白樺しらかばの樹皮、羊皮紙パーチメント、ヴェラム(犢皮紙とくひし=子牛の皮から作る)などがあります。


【紙の歴史】

 紙は中国の宦官、蔡倫さんが発明したとされています。

日本では610年に曇徴どんちょうという仏僧が日本に製紙を伝えました。

コウゾ、ガンピ、麻を用いて作られました。


 ちなみに日本では1031年頃から再生紙が作られ、中国ではそれ以前からされていたと考えられています。


 西洋では751年以降から、サマルカンドに伝わったとされています。

戦があり、中国人の捕虜の中に、紙職人がいたと考えられます。


 サマルカンドからヨーロッパに製紙技術が伝わるには更に500年。

フランスもしくはイタリアに伝わったのが12世紀から13世紀の間と考えられています。


 ちなみに印刷が世界ではじめて行われたのは日本であり、木版印刷を用いられました。

称徳しょうとく女帝が百万塔陀羅尼ひゃくまんとうだらにという経を印刷しました。

百万個の木塔には、4つの陀羅尼のうちのどれかが収められていました。


 西洋の活字印刷はグーテンベルクを待つことになります。


【紙の材料】

 亜麻リネン、綿、大麻、黄麻ジュートが主に使われていました。

木皮だけでなく材の部分も使えると分かるまでは、古着、ボロ布を製紙のために回収され、古着の値段が高騰したといわれます。


 カジノキ、ガンピ、ミツマタ、竹、稲わらなども使えることが分かっています。

珍しいところだと、ジャガイモやイラクサ、コケ、ガマ、アロエの葉なども使って、紙が造られました。

これはボロ布が手に入らなくなったため、他の原料を探した結果、使えることが分かったものです。


 ミツマタは日本紙幣に使われていることで有名です。

真保裕一の『奪取』という偽札造りの小説でもミツマタについて扱われていましたね。


 現在では木の皮だけでなく、材もパルプとして使えることが分かり原料不足に悩まされることはなくなりました。


 木材チップの作り方はまずは巨大な鉛筆削りで木材を薄くスライスし、薬剤につけるか、臼で磨砕します。

 機械的な方法は強度の強い針葉樹が使われます。


【紙の製法の移り変わり】

まずは製紙技術が開発初期のまま残っているインドの手すき向上のやり方を紹介します。


原料にはジュート麻、廃棄された黄麻袋と古紙を使ってます。

これらを小さく切って、石や木製の桶に入れ、数日石灰水に浸します。

アルカリにより繊維がほぐれだしたら、重いきねで叩きます。

これにより、植物繊維をほぐし、紙になるようにします。

テコの原理を使って、体重で杵を動かしたり、水車を使う所もあります。


植物繊維が解けパルプとなったら、これを水桶に移して漉き作業に移ります。

途中で沈んでいくので撹拌したりしながら、手漉き具でパルプを紙状にしていきます。


これを天日干しにしたら、紙が出来上がります。


ただし、この方法では紙はゴワゴワです。

ですので、少し時代が進むと、天日干しの前にプレスをかけることになります。


1568年にヨスト・アンマンが木製螺旋状プレスを使って、大きな圧力をかけています。

このプレス機は無茶苦茶高価だったようです。


生産量は1日に3人の作業員で20の紙束、もしくは5人で250枚の紙を作ることが出来る、と書かれています。


その後、サイジングというにじみ防止や、水分の過剰吸収を抑える作業を行います。

これは皮の削り屑が使われました。いわゆる膠のようなものです。


サイズ液に漬けた後は、また乾燥。

その後、表面を滑らかにする必要があるのですが、これは瑪瑙めのうや滑らかな石を使って表面を磨きました。


ここまでが工程です。


これが16世紀になると、水力を用いて、艶出しハンマーを使うようになります。

そして1720年頃、ロールに取って代わられます。

2本の柱の狭い間に紙を通すという方法です。

現在のようなやり方の原型ですね。


ロールというのは、わかりやすく言うと、麺を薄く伸ばす時に二つの円柱の隙間に通すと、薄く出てくる装置です。



【まとめとポイント】

・手すきから機械化をどれだけ用いるか、これによって生産量が大きく変わっていきます。

・原料に木材を用いることも大切です。

・しかし、いかに製紙技術が発達しようが、手書きでは消費が増えず、頭打ちになること間違いなしです。貴族でも文盲がいたくらいなので、これはかなり大きな問題です。

・そこで、製紙技術を持ち込むトリップものを書く際は、かならず印刷技術の革新も合わせて行うようにしましょう。


参考HP

日本製紙連合会

http://www.jpa.gr.jp/p-world/p_seizou/index.html

見やすく、わかりやすく楽しいサイトです。


参考文献

より詳しい知識はこちらから。まだまだ載っていない情報がたくさん含まれています。


紙・パルプの実際知識 第6版 東洋経済新報社 王子製紙 編

古代製紙の歴史と技術 勉誠出版 著:Dard Hunter 訳:久米康生

小説の更新を優先し、こちらが疎かになって申し訳ないです。

皆様のご強力に感謝し、今後も更新に励みたいと思います。

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