表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/11

鋼と鍛冶

小説に参考にされた方は、一言でもいいのでコメントいただければ、とても励みになります。ご協力ください。

 玉鋼やダマスカス鋼と聞いて心躍らない男子がいるだろうか、いや、いない。……反語!


 というわけで、今回は冶金、鍛冶について書きます。


 無茶苦茶奥が深くて、調べれば調べるほど、余計に調べるものが出てきて困りました。

今後も、分かり次第改訂を加えていきますので、最終更新日にお気をつけください。


原料調達、

道具

家事工程にわけで書きます。



◆原料調達◆


 その昔、石器時代と別れを告げた人類は、青銅器に手を出しました。

これが紀元前3000年頃。メソポタミア文明のシュメール人が発見しました。


 実はこの当時から鉄は一部生成されていましたが、融点が高いことで、普及していませんでした。

 主にアクセサリーや、儀礼用として使われました。


 鉄が本格的に使われだしたのは、紀元前1200年頃。ヒッタイト人の滅亡後です。

 この頃の鉄の採集場所は地上であったと思われます。


 隕石、隕鉄というものです。

 鉄分95%、ニッケル5%ぐらいと考えてください。

 

 地表で取れるものには限りがありますので、その後は山を切り崩して鉄鉱石を採ったでしょう。

 戦国時代の砂鉄の収集には、川辺で行われました。

 これは川に流れた水酸化鉄が葦のバクテリアの力によって、凝集されたからです。


 これらの鉄は殆どが酸化鉄で、一度還元する必要がありました。



◆鍛冶道具◆


火炉かろ


いわゆる炉。

レン炉、高炉、たたら炉、パドル炉などがある。

初期のレン炉は谷風など、自然の空気を利用していました。


15世紀の水車動力の普及までは、日産10kg前後でした。

水車動力・コークスによって、日産2tぐらいまで増えます。


圧倒的な差ですね。


○金床○

ハンマーを叩く台。鉄床とも書きます。


○ハンマー、槌○

1キロぐらいのものが多く使われる。向う槌で3kgぐらいです。

向う槌は押し広げるために使い、先手と呼ばれます。細かな形成過程は親方の仕事ですね。


トンチンカンは、息の合わない向う槌のことからきています。


ハンマーの形状には、先の尖ったものや、マイナスドライバーのようなものがあり、刀の目釘の部分や、金属と柄の接合部のための切れ込みを入れたりに使われます。


○ハサミ○

板金を挟むものです。切れる意味でのハサミは、つまんでいた部分を切り離すのに使われます。


たがね

切れ込みを入れます。柄を差し込む所を作るのに使われます。



○火かき棒・スコップ○

木炭を混ぜたり、足したりする。


○ふいご○

足踏み、手引き、箱などがあります。

多量に造るためには、押しても引いても風が送れる箱ふいごがよく使われました。

日本のたたら製鉄は、人力ふいごだったので、大変な力がいりました。


○水、もしくは油、またははちみつなど○

金属を急速に覚ます焼入れの際に。

水の温度を知ろうとしたら、腕が斬られる逸話は有名ですね。


グラインダー、もしくは研磨機


水車……ふいご、ハンマー、研磨機の動力として15世紀ごろから。



◆金属の融点◆


「鉄は赤くして打て」

 上げ過ぎると炭素の量が減り、軟らかいナマクラになってしまうので、温度調節が大切です。


酸化鉄の還元温度が900℃前後です。

鉄    1536℃(純鉄なので、あまり意味はありませんが)

銅    1084℃

スズ   232℃

スラッグ(ごみ) 1200℃←ここまでは上げる必要がある


◆作業風景◆


 この場合は、もっとも原始的な方法をご紹介しましょう。


 まず、炉の中に木炭を入れ、火をつけます。

 温度表というのがあって、炎の色でおおよその温度がわかります。

 低ければ赤、高ければ白です。黄色ぐらいで鉄が溶けます。


 熱された炉の中に酸化した鉄鉱石と、木炭を入れます。

 800~900度ぐらいに保たれますが、このとき、炉内は酸素不足に陥ります。

 炎が酸素を求め、結果酸化鉄の酸素が還元されます。


 これが第一工程です。


 この後、炉の温度を上げ、鉄鉱石を再び入れると、1200度ぐらいまで上げます。

 鉄鉱石の中の、石の成分などが溶け出していきます。


 この時出るゴミをスラグやスラッグといいます。

 メタルスラッグというゲームがあった気がしますが、鍛鉄の過程で出てくる産廃のことです。


 鉄鉱石の約半分ぐらいが純粋な鉄として、最初に抽出されます。

 スラッグは再度、炉にくべられ、一緒に流れでた鉄を再抽出します。


 スラッグが流れでた鉄は、スポンジというか、軽石のような形になっています。

 続いてこれらの抽出した鉄を、再び加熱し、今度は槌で叩いていきます。


 槌を振る度に火花が飛びます。これも出きっていないスラッグです。

 叩いて如何にスラッグを押し出すかが、鍛造という作業の決め手になります。


 成形された鉄の板金を、叩いて好みの形に変えていきます。

 刀やナイフなどでは、折り返して(二つに折って、1つに纏める)成分の均一化を図ります。


 古刀では1~2回くらいしか行われませんでした。

 ダマスカス鋼のナイフで、私が見た映像では8回していました。

 『日本鍛冶紀行』の職人さんは、古い農具などを再生させるため、15回もの折り返しをしています。


 この時、鉄の表面に酸化被膜ができます。

 スラグの成分があったり、鉄と鉄の鍛接(溶けて一つになる)のを邪魔するので、金ブラシで落とします。


 折り返しには鍛接剤というものを使います。

 色々あるそうですが、調達しやすいものには藁の灰があります。


 「結構出来るよ」その道70年のおじいちゃんが言ってました。

 あとはホウ砂、硼酸ほうさん、鉄粉でも良いようです。


 この鍛接剤、刀や包丁、ナイフなどを作る時、鋼と地金を鍛接するのに大切です。

 鋼だけだと硬すぎて折れてしまうという、日本刀の特徴です。


 鋼と地金が完全に鍛接されたら、最後に焼入れを行います。

 熱した鉄を水、西洋なら油、時にハチミツに浸けます。


 800度ぐらいから500度ぐらいまで急激に冷やされることで、鉄が引き締められます。

 この後、急に冷やしすぎると割れたりヒビが入る原因になりますので、常温で冷やします。


 現在ではこの後、氷点下数十度まで下げる作業があり、サブゼロ処理といいます。


 その後、硬くなりすぎて折れやすい金属を、加熱して戻す焼戻しを行います。

 日本刀などでは180度ほどだそうです。


 パンを焼く時に炙るのは、ナマクラになってしまうので良くないそうですよ。


 後は刃の研磨や、柄との接合があります。


 以上が鍛冶のおおよその工程でした。


 斧の製作動画がyoutubeでJohn Neemanさんによって公開されているので、

興味のある方は一度みてみると分かりやすいと思います。


 ちなみにこの場合は、手引きふいごを使用しています。


◆まとめ◆

ファンタジーの鍛冶技術は、冒険者が多く、鍛冶が栄えていたでしょうが、文明的には15世紀未満の生産力だと思います。

炉の数が多く、鍛冶師が多いので供給が間に合っていたのかもしれません。


高炉を設置して、水車動力を導入すれば、生産性を一気に高めることができます。


刀鍛冶は基本的には儲かりません。

燃料費が高くつく上、商売人に上手く買い叩かれて、数打ちを無理やり打たされた名工はいくらでもいます。


小説の中ぐらい、イキイキとした工匠の姿が見たいものです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] もう執筆されていないでしょうけど… ガラス、製鉄ときたら、「耐火レンガをつくるには、耐火レンガの粉末が必要っていうジレンマ」に挑戦してほしかったです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ