鍼灸
あなたは鍼灸にどんなイメージがあるでしょうか?
鍼灸というと、そもそも、保険が効くのか効かないのか分からなかったり、
凄い効きそうな反面、ぜんぜん効かなさそうな怪しさがあったり。
正しく把握している人が少ない印象を私は持っています。
個人的に「秘孔を突いた」で有名な『北斗の拳』や、『必殺仕事人』など、作品によるイメージが大きく影響を与えている気がします。
そこで、鍼灸とはなんぞや、ということを一番最初に説明しましょう。
鍼灸は、WHO(世界保健機構)にも認められている代替療法の一つです。
すごく大雑把にいうと、経絡経穴という気脈の流れを、ツボを刺激することで心身を整え、痛みや不調を解消します。
鍼灸は以前は都道府県資格でしたが、今は国家資格化しました。
特定の学校で三年間勉強し、国家試験に合格すれば、晴れて鍼灸師になります。
整体やカイロプラクティックなどは、民間資格なので、最低限の医学知識があることになります。
日本では医師の同意があれば、特定疾患に限り保険の適応が認められています。
1.鍼灸の歴史
さて、鍼灸の歴史です。
元々は傷口を焼いたり、膿を突いて排出したりするところから出たのではないか、と言われています。
春秋戦国時代には、すでに文献が見られていますから、二千年以上の歴史は間違いありません。
古典好きな鍼灸師がよく参考にする『黄帝内経』と呼ばれるものは、前漢の時代になります。
老荘思想を取り入れ、易経より東洋思想である陰陽五行論が取り入れられ始めました。
当時はまだ陰陽五行論を完全には用いていなかったのですが、唐の時代や宋の時代では、かなり円熟した思想が出来上がっていました。
日本においては、安土桃山時代の御薗意斎が打鍼術という技法を、
江戸時代には、杉山和一が『鍼管法』という、現代使われている鍼の技術が開発されました。
この鍼管法というのは、撚鍼法と呼ばれるこれまで直接ブスッ、と刺す方法と違い、筒を用いることで、痛みを減らすことが出来る画期的な技術革新でした。
杉山和一が撚鍼法を苦手としていたから発明されたと言われています。
現代においては、各社による鍼の多様化(太さや長さ、針先の形状)などが工夫されているだけでなく、美容鍼といった、これまで考えられなかった技術も広がっています。
2.鍼灸の分類
さて、鍼灸の分類なのですが、実は鍼には結構な種類があるんです。
知らない人が一番驚くのは、刺さない鍼がある、ということでしょうか?
解りやすいのはエレキバン。あのシールに鍼がついたものです。
これは接触鍼と呼ばれるもので、鍼の代わりに小さい粒がついたり、いろいろな種類があります。
接触鍼は他にも『てい鍼』や『いちょう針』『ローラー鍼』など様々なものがあり、小児鍼として、疳の虫や夜泣きなどの治療として行われることが多いです。
鍼灸は非常に多くの流派、治療法の考え方がありますが、今回はその中で代表的なものを三つ紹介します。
2-1 経絡治療
一つは、『経絡治療』と呼ばれるもの。
東洋医学の思想 陰陽五行論から、体を整えるという方法です。
体のバランスの偏りを、吐き出したり(瀉法)、補ったり(補法)して、整えていきます。
方法は、正経十二経という全身を上下に巡った経絡と、体の成虫を走る、奇経二脈の任脈、督脈を用います。
五行論の木・火・土・金・水は、
陰ではそれぞれ肝・心・脾・肺・腎に対応し、
陽ではそれぞれ胆・小腸・胃・大腸・膀胱に対応しています。
一般的に聞き覚えのある言葉として、『五臓六腑』という言葉がありますが、
これは『臓』が陰を、
そして『腑』が陽を表しています。
更にいうと、実際は心包経というものがあり、六臓六腑を整えるという方法です。
脈を見て、その打ち方などから判断する脈診、
お腹の硬軟を診て、その場所から調べる腹診、
舌の色や、舌苔の付き方などから調べる舌診、
などの診断方法があります。これに問診などを加えて判断します。
痛いところと離れた遠隔治療を用いることが多く、「何をされているか分からないけど、知らずに治った」というパターンが多いです。
一番胡散臭いけど、実は一番難病などにも対応できる可能性がある治療法です。
先生が一番勉強熱心で、同時に変人臭いのも、この治療法の特徴の一つです(魅力的という意味で捉えてください)。
2-2 特効穴治療
経穴を、特定の場所で捉える方法です。
肩こりなら『肩井』、腰痛なら『腰痛点』、歯痛なら『合谷』と、症状に対応した場所を刺激します。
この治療法は、一般人がツボの本を読んで勉強できることで分かるように、一番わかり易いのが特徴です。
もちろん、簡単に見えて、刺激の仕方や強さなど、奥深さがあるので、簡単といってもバカには出来ません。
走ることは誰にでもできても、早く走ることはとても難しいようなものです。
2-3 トリガーポイント療法
アメリカやヨーロッパなどで有名な治療法です。
考え方は特効穴治療とよく似ていますが、こちらは『硬結』と呼ばれる、筋肉のしこりに注目して治療するのが特徴です。
臨床データなどが集まりやすく、アジア圏以外では主流です。
3.鍼灸治療の逸話
鍼灸には、いくつか得意な分野があります。
一つは逆子。
これはお灸ですね。足の小指の至陰というツボにお灸を据えます。
もう一つは女性不妊。
今のように不妊治療薬がない時代なら、非常に強い売りになるでしょう。
EDもお手の物で、仙骨の二つ目の穴、次髎という穴を刺激すると、大変なことになるそうです。
効きすぎて収まらなくなった例がある、とある鍼灸師から聞きました。
ちなみに女性にも同じ効果があるそうです。
他にも薬でも治らないような頭痛が治ったり、一発でぎっくり腰が治ったり、腕の良い鍼灸師は時々魔法のような結果を見せます。
4.まとめ
鍼灸は非常に奥が深く、本も何百、何千と出ているはずなので、ここではさわりだけをご紹介しました。
今回あえて出産系を紹介したのは、子作りはあらゆる権力者の一番の悩みだからです。
富も権力も実力もあるが、子どもに恵まれないとある権力者が、著名な医師などを招く例は枚挙にいとまがないですからね。
この資料が少しでも執筆の助けになれば幸いです。
非常に久しぶりの更新になります。
今後もゆっくりですが、更新していくつもりですので、よろしくお願いします。