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絶対確実に結婚したい女

「〔弁論〕、とは、敵対者が〔立証〕で示した〔戦う裏由〕、その〔論裏〕よりも、より強い〔論裏〕で〔反証〕し、〔共感(コネクト)〕を破ろうとする行為。〔論破〕しようと試みる行為です」

「より強い〔論裏〕とは、どういったものですか?」

「より強い〔論裏〕とは、〔裏付けのある事実〕などを引き合いに出した、より〔説得力〕のある〔論裏〕です。例えば昨日、天出雲さんが反咲くんに〔質問〕した時に、彼から引き出した事実なんかがあります。反咲くんは〔裏校生か?〕、〔裏野に反逆の意志があるか?〕と天出雲さんに問われて、それぞれ〔裏校生だ〕と〔反逆の意志はない〕と答えました」

「それから?」


 しばしの沈思を経て、一虎が答える。



「・・・それから天出雲さんは、その〔質問〕を後に〔事実〕として扱い、反咲くんの〔論裏〕に対抗しました。〔君はさっき裏校生で、反逆の意志はないと言ったけど、なら君の示した論裏は成り立たない〕って具合に、です」

「適当な答えを返すと、後で痛い目を見るという良い例ですね。〔質問〕に対して返した答えを後から撤回する、その行為自体が〔ジン核〕の不信を呼ぶ。だからこそ、相手の意図を読んで答えを返す必要があるのです。それから?」

「は、はい。それから2人の〔ジン核〕は、天出雲さんの〔論裏〕をより〔説得力〕があると判断した。そうなった時、反咲くんの〔論裏〕に〔共感(コネクト)〕していた〔ジン核〕は混乱します。絶対視している自分の〔論派〕よりも、別の〔論派〕の示した〔論裏〕のほうが、自分の主より〔説得力〕があった。反咲くんによって〔立証〕された〔論裏〕が、〔論破〕されたからです」

「その結果?」

「〔裏論使い〕と〔ジン核〕を結んでいた〔共感(コネクト)〕が崩れ、反咲くんはしばらくの間まともな〔裏論〕が使えなった、はずです」



 一虎の言葉に、鎌足は笑う。

「上出来です、竹叢くん。そう〔弁論〕とは、〔立証責任〕を果たした後に行われる言葉による戦闘行為。〔共感(コネクト)〕の崩し合いです。〔論裏〕という、〔ジン核〕が納得出来る筋道を立てた主張のぶつかりあいなのです。つまり〔論戦〕における勝利には、2つの形がある」



 言って、一虎の3次元ディスプレイに、男の言葉がそのまま浮き上がる。



「1つは〔実戦〕による敵の物裏的な殲滅」



 〔実戦〕=〔物裏的な殲滅〕



「2つ目は、相手の〔論裏〕よりも、より〔説得力〕がある〔論裏〕を用意して、敵対する〔裏論使い(ディベーター)〕の示した、〔戦う裏由〕、〔立証〕された〔論裏〕へと干渉。〔ジン核〕の〔共感(コネクト)〕を断ち、〔裏論武装〕の弱体化や無効化を試みる〔弁論〕によって構成されるのです」



 〔弁論〕=〔論裏〕VS〔論裏〕。



 〔論破〕=〔裏論武装の弱体化もしくは無効化〕。



 さらにディスプレイに新たな表示。



 〔論戦〕=〔実戦〕+〔弁論〕=〔殲滅〕or〔論破〕。



 そして最後に、



 〔立証〕→〔立証に対する質問〕→〔反証〕→〔反証に対する質問〕→〔交互に反論〕。



 どちらかが〔立証〕を求めた後に展開される、〔弁論〕の順序が表示される。

 一虎がそれを見たのを見計らったように、鎌足が言った。



「力の強い者。口が達者な者。それら異なる2つの暴力が同じ場に共存し、闘争しうる。つまりはそれが、〔論戦(ディベート)〕です」



 息を呑む一虎に、さらに笑み混じりの声が続く。



「ちなみにこの構図で見ると、先に相手に〔立証〕を求めた側が有利に見えます。〔立証〕を求めた側は、相手を一方的に否定すること、攻めることに徹することが出来ますからね。しかも攻める間、自分は〔立証〕しなくてもいい。これは絶対的有利、に見える。しかし、そうはならないのが〔弁論〕の面白いところです。なぜだかわかりますか?」



「あ、えっと・・・」



 しばらく頭を悩ませた一虎だったが、



「すみません、わかりません」



 と、流石に手持ちの付け焼刃の知恵では抗しきれず、ギブアップを宣言する。それを責めることもなく、いいですか?と鎌足は言った。



「もし、〔立証〕を求めた側、相手の示す〔論裏〕を否定しようとする〔反証者〕が、〔立証者〕を〔論破出来なかった場合〕、どうなるでしょう?」

「え?あ、えっと・・・〔立証者〕は、自分の示した〔論裏〕を守り切ったわけだから、〔ジン核〕との〔共感状態〕を守ることに成功して、そうなると・・・」



 一虎の脳裏で、閃き。まくし立てるように、言葉が口をついて出る。



「そうか!〔立証者〕が〔反証者〕の示した〔論裏〕から自分の〔論裏〕を守り切った場合、〔立証者〕と〔ジン核〕の〔共感状態〕はより強くなる!〔立証者〕の〔ジン核〕は、〔この使い手は間違いなく論派に則って行動している〕って具合に、迷いや疑念が完全に消える!」

「その通りです、竹叢くん。そして、〔共感状態〕が強くなるということは、その〔論戦〕が終わるまでの間、〔立証者〕の発揮できる力が一時的に増大することを意味します。だから?」

「そう、か。だから大した考えもなく、下手に〔立証〕を求めてはいけないんだ。なぜなら、もし〔論破〕出来なければ、相手が凄く強くなってしまう。そういうことなんですね?」



 一虎の結論に、



「小難しい話でしたが、うまく裏解出来たみたいですね」



 と、鎌足は変わらぬ笑み混じりの声で応え、



「さて、そろそろ〔弁論〕が、次の段階に進みますよ」



 促す言葉に、一虎は模式図から視線を動かす。〔戦う裏由〕を示す〔立証〕を終えて、アインを睨む柳児が叫ぶのを聞く。同時に柳児が両手を交差させ、桧王と共にアインに突っ込んで行く。



「〔質問〕はどうした!?俺の〔立証〕に対して、何も〔質問〕がないのなら、〔反証〕しろ!?」



 一虎は、柳児の言葉に反射的に脳裏に知識を奔らせる。



『〔立証責任〕は、ただ自分の〔論裏〕を示すだけじゃない。相手の〔質問〕に答えるのも、〔立証責任〕に含まれるんだ。だからここで先生は、〔弁論〕の次の段階、相手の〔立証した論裏を否定する論裏〕、〔反証〕で有利に立ち回れるような〔質問〕をするはず』



 そして、皆の注視を受けたアインは気怠そうに立ち尽くして言った。



「〔質問〕。自殺志願者A。反咲柳児。お前には・・・」



 それは、



「お前には、絶対確実に結婚したい女がいるそうだが、それは確かか?」

「なっ!?」



 突進をかけていた柳児の足を止め、怯ませるのに十分な威力を持っていた。


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