共感
「え、ええっと、ま、まず〔大前提〕として、〔ジン核〕は使用者の持つ〔裏力〕を受け取って〔裏論〕という超常現象を展開しています」
一虎は確認するように〔ジン核〕の〔化身〕たる赫夜を見やる。すると笑顔で頷きが返ってきた。同時に鎌足のそれとリンクした3次元ディスプレイの隅に、一虎の言葉を模式図とした映像が浮かび上がる。
表題は、〔立証責任〕と〔弁論〕。
模式図は一虎の説明に則り、
〔裏力〕→〔ジン核〕→〔裏論〕、となる。
それを確認し、一虎は続けた。
「えっと、さらに言うと〔裏力〕はその発生に際し、その人間の〔論派〕に染まります。反咲くんは〔異論派〕だから、その〔裏力〕は〔目的のためなら手段を選ばない〕という〔異論派〕の色を持ちます」
「そうですね。そして〔裏論使い〕と〔ジン核〕は、例外を除いて、同じ〔論派〕です。同じ〔論派〕同士は〔共感〕出来、だから〔ジン核〕は使い手の〔裏力〕にも〔共感〕出来る。〔共感〕出来るということは、その〔裏力〕を抽出出来るということになりますね」
鎌足が言うと、構図に変化。
〔裏力〕→〔共感〕→〔ジン核〕→〔裏論〕。
構図が変化したところで、鎌足が続ける。
「この、〔共感〕という状態は、〔同じ論派〕の間にのみ成立し、使い手と〔ジン核〕が互いを認識し、互いの活動を容認することによって生まれます。そして、〔共感状態〕があって初めて〔裏力〕のやりとりが可能になり、〔裏論〕が使えるというわけですね」
しかし、そう前置いて鎌足は言った。
「この〔共感〕という状態は、たやすく崩れる」
「そう、ですね」
一虎は鎌足の言葉を受け取って、現実の事例を引き合いに出す。
「例えば、〔僕は言いたいことは相手にハッキリ言う〕って宣言しておいて、影で他人の愚痴や悪口を言う。〔僕は約束は守る〕って宣言しておいて、待ち合わせの時間に現れない。そういう、〔言葉〕と〔行動〕が矛盾した状態は、相手に不信感や疑惑を生み、〔共感状態〕を崩します」
「その通りです。使い手と〔ジン核〕にも同じことが言えます。〔ジン核〕は常に使い手を見ている。その上、〔ジン核〕は1つの〔論派〕に染まった魂だ。彼らは1つの〔論派〕にしか〔共感〕出来ないのです。だから使い手は〔共感状態〕を維持するために、〔自分は論派に則った活動をしている〕と示さなければならない。〔共感状態〕は、〔同じ論派〕だからこそ成立するからです」
楽しげな教員の声が、そのまま続ける。
「だから〔裏論使い〕はいかなる相手からでも、〔なぜ戦うのか〕と問われれば、〔自分は論派に則って活動している〕と示さなければならない。自分の〔行動〕の裏由を〔言葉〕で説明して、〔論裏的〕に示さなければならない。そうしなければ〔共感〕が崩れ、〔裏力〕のやりとりが不可能になる」
「〔裏論〕が展開出来なくなるんですよね。だから、反咲くんなら、〔自分は異論派らしく、目的のために最善の手を選んでいる。余計なことは考えず、無駄を最小限に抑えている〕と〔ジン核〕に示す必要があるわけですね」
「その通り。つまり、〔使い手は同じ論派であるジン核に、その論派に則って戦っていると、行動を言葉で、論裏で示す責任がある〕。それが〔ジン核〕への〔立証責任〕です」
ディスプレイの構図の横に、
〔裏論使いは共感状態を維持するため、求められた場合、論派に則った自分自身の行動の説明を強いられる〕
と表示される。それを成したらしい鎌足の声が続いて響く。
「〔裏論使い〕は〔裏論〕を使う以上、求められた場合、〔戦う裏由〕を論裏的に〔立証〕しなければならない。また、敵対者がその〔論裏〕に対して行う〔質問〕にも、答える義務が出てきます。そうしなければ、〔共感〕が崩れかねませんからね。そして〔立証を求めた側〕にも、その〔論裏〕を否定する〔論裏〕、〔反証〕を示す義務が生じます。それを利用して行われる〔弁論〕とは?」
会話の内容が、〔裏論使い〕の義務・〔立証責任〕から、〔弁論〕へと移る。勢いづいた一虎が答える。




