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事実の多面体

「リ、バース?」



 顔を上げ、そう繰り返した一虎に、場を取り繕うキッカケを得た柳児は急き立てられるように言った。



「そ、そうだ。確かにこの〔計画〕の不安要素は多く、クリアすべき条件も多い!この〔キメ技〕が完成しなければ、それが天出雲に当たらなければ、考え出したら懸念材料は山積みだ。だけどな」



 柳児が言葉を切って、言った。



「事実ってのは、多面体だ」

「多面、体?」

「そうだ。1つの事実には、色々な側面がある。抽象的に言えば、光ってる部分、真っ暗な部分、赤い部分、青い部分、ってな。だから、まずそれをイメージし、裏解しろ」

「え、っと、なんか、宝石みたいに、事実には、側面がいっぱいあるってこと、かな?」

「そうだ。そして、その事実の多面体がお前に向けてる部分、それをお前に都合のいい面へ〔裏返(リバース)〕しろ」

「〔裏返(リバース)〕?」

「そうだ。〔キメ技〕が完成しなければ負ける。今お前の前にその面が出てるなら、それをひっくり返して、〔キメ技〕が完成すれば勝機がある、という、同じ〔事実の多面体〕の下にある、別の面にすればいい。〔キメ技〕が当たらなければ負けるという面が出てるなら、当たれば勝つ、という面に裏返せばいい。それに・・・」

「・・・それ、に?」

「お前、自分で言ったよな?〔僕は普通だ〕って。ああ、確かにお前は、俺から見ても〔普通〕だ。何の特技もなく、何の強みも、何の目的もない」

「・・・うん」

「だが、誰よりも〔普通〕だって事実があるから、そのおかげでお前はここにいる。〔普通じゃないここに〕、な」

「え?」

「わかんねぇか?この場には〔囚人教師〕に〔幼女で少女〕、〔カタコト人形〕に俺がいる。なぜなら〔普通〕なお前に、現在開催中の〔模擬論戦(プレゼン・ディベート)〕ですでに〔最強〕の評価を獲っている〔カカト女〕を倒してもらうために、だ。さあ、この状況は〔普通〕か?」

「い、いや・・・」



 柳児の言葉に一虎は、そんな考え方もあるのかと、開いた口が塞がらない。勢いを得た柳児は言った。



「ほらな。〔普通〕ってのも見る面を変えれば、悪くねぇだろ?」



 そう言って、紫の瞳の少年は片頬を吊り上げて笑った。一虎はぎこちない笑みを浮かべ、彼のくれたモノ、〔事実の多面体〕、そして〔裏返思考(リバース・シンキング)〕を心の奥に刻んだ。

 そして、



「よし。ならこの〔刀身の延長〕をスムーズかつスピーディに行えるよう、これから訓練だ。最大射程まで伸ばすのに57.64秒のままじゃ、使い物になんねぇからな。並行して、〔基本能力〕である〔身体能力強化〕と〔論裏障壁(ロジカル・シールド)〕の展開も出来るようにしていくぞ!?」

「うん!」



 不安から顔を上げた一虎は、柳児のその言葉に決意を新たにした。


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