【三】一緒にお茶でも
悠癸と愛理が理科室目指して歩き出した丁度その頃、γ班――海斗と翔は既に敵と接触してしまっていた。
「おぃ貴様ら。なぜに学校へ賊の如く進入した?」
翔の静かな声が響く。
日曜日なので中庭には他に人はいない。
……安心して捕縛が出来るな。
「ワテラ、別ニルインを暗殺シニ来タワケチャイマスワー、コンニショワー」
赤毛の邦人が口を開いた。
……なんだこの中途半端な関西弁は……。
「ソデスヨー。タダ『HARAKIRI』見ニ来タダケネ」
意味の不明な理由を述べながら、栗毛の邦人(♀)が同意する。
「そうですか。あ、『HARAKIRI』はここではあっていません、美しきお姉さん。
それより、一緒にお茶でも……?」
「海斗、貴様は何を言っているんだ……?」
「戯言、だ!」
冷たい表情で、殺気を放ちながら翔がにらむ。
あまりに凄まじい殺気のため、海斗の背に悪寒が走る。
「……貴様、三途の川が見たくなったのか……?」
「……済まん! これはあれだ、若気の至り、だ!」
ズボンのベルトに差されている妖刀『白夜』の柄に、翔が手をかけたのを見、慌てて否定する。
翔が柄からゆっくり手を離したのを見、ホッとため息をつく。
緊張がほぐれたところで、さて本題、と二人の邦人を見る。
……それにしても背ー高ーなぁ……。
何食ってんだよ……。
翔(176cm)よりも10cm近く高ぇ……。
赤毛野郎ならまだしも、栗毛の美人な姉さんまでそこまで高いとなると、流石に劣等感が……。
「おぃ、海斗! 来るぞ!」
そう翔が忠告するや否や、栗毛の女が動いた。
いつの間に持ったのか、その手には鞭が握られていた。