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【九】俺の死に場所

「やれやれ。これで終わったな…。早々と悠癸の所に行くか…」


そうつぶやいて、翔が歩き出そうとした瞬間、背後から声がした。


「まだ行かせはしないよ?

 その年齢であれほどの技をだせるとは、君はただ者じゃないね」

「まだ生きていたのか…。俺の連技を切り抜けるとは貴様もただ者ではないな…。

 全く、いつになればくたばるのかと…」

「まだまだ行きます、氷の侍よ!」

「…来い、霧の剣士!」


そう叫ぶなり、翔は振り返り際に『白夜』を横一文字に振り抜く。

しかし、ジョナサンも負けては居らず、剣で受け止めた。


「剣ごと凍らしてくれるわ!」


『白夜』の刃が輝きを増し、場の空気が急速に下がる。

秋なのにもかかわらず、極北よりも気温が低くなっていた。

しかし、翔の思惑どおりにジョナサンの剣が凍ることはなかった。

さらに『白夜』の温度を下げるが凍らない。


「ふっ、驚いているね? 凍らないのは当然さ。

 我が聖剣『聖霧』(HOLY MIST)は妖刀の邪気を払う。

 そのジャパニーズソードは妖刀だね?」


ジョナサンの言葉に、思わず舌打ちをする。


「…そう言うことか…。だがっ!」


そう吐き捨てるなり、剣を薙ぎ払いつつ、左足を踏み込んで、右下から斬り上げる。

流石のジョナサンもこれは防げず、後ろに飛んだ。

しかし、ジョナサンが着地する前に、更に間合いを詰め、左肩へ刃の峰をたたき込む。

肩を押さえてうなるジョナサンの腹部に氷をまとった右拳をたたき込んだ。


小さなうめき声と共に、ジョナサンは気を失った。

翔は、その横に静かにたたずみ、しかし肩で息をしている。


「貴様がいかなる者であろうと、俺とアイツとの間を拒める者はいやしない…。

 アイツは俺を倒した唯一の男だからな…。アイツの傍が俺の死に場所だ……!」


何げに危ない言葉を吐きつつ、『白夜』を鞘に納め、ジョナサンの両手首をベルトで締めた。

気を失ってはいるが、これほどの者はいつ目を覚ますか分からないため、一応動きを封じておくのである。


予測どおり、すぐにジョナサンが目を覚ました。


「う…。思ったより動きが早く、私でさえ捕らえられなかった…。

 しかし、まだまだコブシの入りが甘いですよ…。あの程度じゃ決定打にはなりません」

「…目を覚ましたと思えば良く喋るやつだ。…俺は主に刀しか使わない。

 だが貴様がそう言うのならば仕方ない。悠癸に教わるか…」

「ははは。余程悠癸さんのことがスキなんですね」

「…っ!」


思わず、爽やかにほほえむジョナサンをにらむ。

しかしジョナサンは全く笑顔を壊さない。


その姿を見、長いため息を翔は吐いた。


「俺は、奴を尊敬しているだけだ。勘違いする奴が多いが…」

「ハハハ…」


その笑顔のまま、静かにジョナサンは眠りに落ちていった。

あまりに体力の消費が激しかったためか、安心したためかは定かではないが。


刀をベルトから抜き、地に座り込んでジョナサンを見張る。

翔はそのまま、眠ることなく瞑想状態へと入っていった。


そんな二人を、桜の香りを運ぶ風が撫でていった…。


――ジョナサン=ドーベル Vs 神田 翔


 勝者 神田 翔――

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