表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法の法律的解釈  作者: 佐村 蒼
1章、魔法学校とクロノス一族
3/29

2、未知ならぬ魔法との遭遇

連続投稿第2弾。


ベッドの中にいたはずなのに、布団にもぐっていたから、暗いはずなのに。

ガクン、と衝撃を受けて目を開けば、そこはどこまでも白い空間。

目が痛いほど、白い。そして、どこまでもなにもない。右も左も。前も後ろも。

そして、上も、下も。

私はそこを漂うのではなく、ずうっと下まで落ちていくようだった。

何も目印になるものはないのに。あ、空気抵抗を感じている?

けれど、髪が上になびくとか、部屋着のTシャツがはためくとか、そんな現象は一切生じてない。なのに、わかる。落ちている感覚。

なにこれ、どんな悪夢なの。

「まだ夢だと思ってる」

隣で声がした。振り向いてみれば、クノスがふよふよと浮いていた。

「なによ、これ…!!」

私の声はヒステリックに甲高く、どこか冷静な自分が恥ずかしいと言っていたけど、今はそんなことを気にしている余裕はないのだ。

なんなのだ、これは。早く目を覚ましたい。覚まさせて。怖い怖いこわい…!!

「怖い?ただのワープ空間だけど、いうなれば」

「なんでもいいから、とめてっ!」

このどこまでも落ちていく感覚が恐怖だった。ふよふよと自力で浮いていられるクノスにはわかるまい。

「しょうがないなぁ」

そう言って、クノスが私の肩を、軽くピンと指で弾くと。

私の身体は、ふわりと何かに受けとめられたかのように止まった。

「信じた?」

「…何を」

「魔法の存在とか、俺の存在とか、その他もろもろ」

「…信じた」

信じてないといって、またあの恐怖は体感したくなかった。

どうしてだろう、何もない空間にいるのは変わらないのに、落ちる感覚が止まっただけで、随分落ち着いた。

いや、この空間も怖いんだけど。白い分、ただの闇よりも、何もないことを教えるから。

『孤独』という恐怖を味わわせるには最適、っておい。

「すぐに出るよ、沙耶が信じてくれたから」

「え?」

「信じてくれたら、魔法が発動できる。空間魔法を使えば、一発でココをぬけられる。ただし、本当に信じた?」

「え、と、信じてないとどうなるの?」

「魔法を信じていない者に活用した場合、活用した者及びその対象者は、滅失又は損傷する」

この場合、魔法を対象にされた物、すなわち私が滅失又は損傷する、と。…え?

「信じてないなら、沙耶は重症を負うかもしくは死んじゃうから、しない。本当に信じてる?」

もう一度確認するように聞かれて、私は必死に考えた。

信じているか否か。

とりあえず、クノスの存在は信じられるようになってる、と思う。なんか落下を止めてくれたのは、魔法っぽい。ベッドの中から、この白い空間に出たのだって魔法みたい…あれ?

「ね、この空間に来たのと、さっき私を止めたのは、魔法じゃないの?」

「ん?魔法っていえば魔法だね。沙耶のベッドの床とここの空間繋げたから。だから、沙耶自身には魔法はかかってない。もうひとつも同じ、魔法をかけたのは空間の方。沙耶と空間の結び目をひとつ外しただけ」

「…なるほど」

原理は良くわかんないけど。そうであるなら、この空間にいるのが夢じゃないって思えばいいんだよね!これは現実、これは現実、これは現実!

必死に思い込もうとすればするほど、何故か頭が許否してくる。

だって、これが現実なんて。なんて悲しいんだろう。私、まだまだ死にたくなかったよ。

「なんかまた余計なこと考えてない?なんで泣きそうな顔してるわけ」

「…私、やっぱり死んじゃうの?」

「死なない。時間軸もいじってあげるから、本来の沙耶の世界に戻るときは、さっきの二時間後くらいになる。ちゃんと戻れるから」

死なないどころか、戻れるの?同じくらいの時間に?

「本当に?」

「本当に」

それが、本当なら。ちょっとこの事態を現実だと認識してもいい。

一瞬で顔を輝かせた私に、クノスは本当に呆れたような、くたびれたような顔をして、でも「じゃあもう魔法かけていい?」と聞いただけだった。

「うん、多分大丈夫」

これは現実、これは現実、これは現実!

なんだか、おまじないになりそうだな、これ。

「じゃあ、いくよ」

クノスが私の額を指でツンと触って。低く何かを呟いた瞬間。

目の前が一瞬まばゆく光って、次の瞬間には、落下の衝撃が来た。

「うぐっ」

「ちょっとちょっとー、もう少し可愛い声出せないの」

可愛い声って言ったってね、いきなり落とされてそんなことまで計算してられませんよ。

私がムッとしたのが伝わったのか。

「だから、ちゃんと計算してベッドの上に1メートル以内の高さで落としたでしょ」なぞと、クノスは言う。

計算するなら、きちんとベッドの数センチ上から落としてよね!

と、クノスの声が、さっきよりずっと低くなっていることに気づいて、ふと周りを見渡せば、そこはどこか知らない場所で、近くに誰か立っていた。

その誰かの足元から、ゆっくり上へと視線をずらせば、そこにはクノスそっくりの顔があって。

「ちゃんと175センチだよ、よかったね」

なんて、クノスより少し低めの声――さっき、私がクノスだと思っていた声がした。

「…クノス、なの?」

「そう、まぁこれは仮の姿で、さっきのが本当の姿なんだけどね」

そう言って、クノスはくすくすと笑う。彼の顔は整っているから、そういう仕草が良く似合っていた。

まぁ、生憎それに見惚れるほど、若くないんだけどね。

「えーと、クノスって何者?」

「あれ、ここがどこかってことより、俺の正体の方が気になっちゃう?」

クノスがからかうように言うから、なんとなくムカっときて、思わず「全然」なんて冷たく答えてしまう。

クノスが何者なのか、今私が頼れるのはこの人(人か?)だけなんだから、ちゃんと知っておいたほうがいいんだろうけど。

でも、ここの場所も大事だよね!一体、クノスは私をどこに連れてきたのか。

「まぁ、本当は連れてくる前に説明するつもりだったんだけど、どこかの誰かさんがまるで聞く耳もたないから」

「突然あんなこと聞かされて、はいそうですか、なんて信じる人いないわよ」

「そう?巷では、魔法学校の物語がはやってるって聞くけど」

それは、某イギリスの魔法学校の物語のことだろうか。だって、あれは物語だし、大体魔法の改正を頼まれたりしてないし。

「それで?ここはどこなの」

見渡すと、ここは誰かの一人暮らしの部屋のようだった。

私が今いるベッドとその向かい側にタンスとクローゼット、足元の方に作りつけの机と本棚、頭の方にサイドテーブルがひとつ。それが、八畳ほどの部屋にあって。

床には、ふかふかのラグ。机のある方に、ガラス戸があって、綺麗なスカイブルーのカーテンが揺れている。

全体的に、青と白と水色で可愛らしくまとめてある部屋だが、…どこよここ。

「ここは、魔法学校の寮。沙耶の部屋」

「…はい?」

「一応、沙耶好みの部屋になってるはずだけど。まぁ、沙耶の部屋ほど雑然としてないけど、それは自分でやるかな、って」

「汚い部屋で悪かったわね…」

さらりと嫌味を言うんじゃない!

「まぁ、詳しい説明は、校長と寮長に挨拶した後ね。とりあえず、」


「魔法学校へ、ようこそ」


クノスのニッコリ笑顔に、もう何度目になるか分からない頭痛がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ