そして、刑は執行された――
国家が犯罪者に与えた、最も過酷で慈悲深い『夢』。
葉山伸一、三十五歳。
強盗致傷の罪で逮捕され、無期懲役の判決を受けた。
あの夜のことは、今も鮮明に記憶に残っている。生活苦から逃れるため、衝動的に入った店で、増岡三郎という名の男が抵抗した。
伸一はパニックに陥り、手元の凶器を振り下ろしてしまった。
被害者は昏睡状態に陥り、意識を取り戻すことなく病院のベッドに横たわり続けた。
裁判所は伸一に無期懲役を言い渡した。獄中で彼は誰よりも真面目に働いた。黙々と作業に励み、規則を厳守し、ただひたすら出所の日を夢見続けた。
十年が過ぎた頃、昏睡状態のまま生き続けていた増岡三郎が、静かに息を引き取った。
一事不再理の原則により、伸一は再び裁かれることはなかった。だがその後、同房の囚人と些細な言い争いから激しい喧嘩となり、相手を死なせてしまう。
結果として死刑が言い渡された。
死刑囚となった伸一は、それから毎日、増岡三郎への謝罪の手紙を書き続けた。死の恐怖からではなかった。
自分がかつて犯した罪、奪ってしまった命、残された家族の悲しみ――それらすべてに、心の底から詫びずにはいられなかったのだ。
そして死刑執行の日。
彼の独房には、届けられることのなかった手紙が山のように積み上げられていた。
そして、刑は執行された――。
目を覚ましたとき、伸一の前に見知らぬ家族が立っていた。増岡三郎の妻と、娘だった。
すべては、AIによって作り出された仮想の記憶にすぎなかった。何十年と思われた出来事は、わずか一年たらずの出来事であった。
増岡三郎は死んでいなかった。昏睡から回復した彼が、伸一の心からの懺悔を知り、自ら「許す」と決めたのだ。
その決断とともに、死刑は執行され、伸一は長い夢から目覚めた。
西暦二〇五〇年。
日本は深刻な人口不足に陥っていた。たとえ犯罪者であっても、時間を無駄にすることなく効率的に更生させ、社会の労働力として再び組み入れる――
それがこの時代の常識となっていた。高度に進化したAIは、囚人の意識を仮想空間に閉じ込め、
極限の状況を疑似体験させることで、真の反省と更生を促すシステムを確立していた。
増岡家の人々は静かに微笑み、伸一を見つめていた。妻は穏やかな声で言った。
「あなたが書いた手紙を、すべて読みました。三郎も、あなたを許すと言っています」
娘も静かに頷いた。
伸一はただ、深く頭を下げた。喉の奥が熱くなり、言葉にならぬ感情が溢れ出そうとするのを、必死に堪えた。
仮想の世界で味わった痛みと後悔は、現実の彼の中に確かに残っていた。
奪った時間は取り戻せない。それでも、許されたという事実が、彼の胸に重い責任と、わずかな希望を同時に刻み込んだ。
これから始まる現実の人生で、伸一は二度と過ちを繰り返さないと心に誓った。
増岡家の人々の前で、静かに、しかし確かな決意を込めて、もう一度頭を下げた。
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