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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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デトックス

作者: 結城絡繰
掲載日:2026/09/24

●マンションの一室・エステルーム

二十代の女性・上田はソファで紅茶を飲む。

マスクをつけたエスティシャン・長野、上田の前で一礼する。


長野「上田様ですね」

上田「はい」

長野「本日担当させていただく長野です。よろしくお願いします」

上田「お願いします」


上田、やや不愛想な態度で応じる。

長野、笑顔でベッドに招く。


長野「こちらへどうぞ」

上田「はーい」


上田、ベッドで仰向けになる。

長野、ベッドのそばに立って一礼。


長野「それでは施術を始めていきます」

上田「お願いします」


長野、上田の顔にタオルをかける。

机に置かれたアロマディフューザーが起動する。

長野、上田の全身にオイルを塗っていく。


長野「今回の施術は、デトックスに特化しております。老廃物を取り除くことで、一気に身体が軽くなりますよ。違いが一目で分かると思います」

上田「それは楽しみですね」

長野「きっとびっくりすると思います」


長野、嬉しそうに笑う。

長野、上田の指圧を始める。


長野「上田様は、普段何のお仕事をされているんですか?」

上田「まあ……普通に会社員です」

長野「デスクワークって肩が凝りませんか?」

上田「結構凝りますねー。お風呂上りとか、なるべくストレッチして伸ばしてるんですけど……」

長野「なるほど。今回の施術で嘘みたいに軽くなりますから、期待してください」


長野、自信満々に笑う。

上田、冗談めかして尋ねる。


上田「そんなに断言しちゃっていいんですか?」

長野「はい、施術に自信があるんです。効果が出すぎてリピーターがいないくらいなんですよ。正直、困ってます」

上田「へぇ、それはすごいですね」


感心する上田、大きなあくびを洩らす。

それを見た長野、優しく声をかける。


長野「眠たいですか?」

上田「はい、ちょっと……」

長野「紅茶のリラックス効果です。全身の感覚が鈍くなって、触られているのも分からなくなりますが、血行が良くなった証拠なので大丈夫です」

上田「なるほど……」


上田、ぼんやりとした口調で応じる。

長野、淡々と施術をしながら質問をする。


長野「お仕事は上手くいってますか?」

上田「はい……最近は色々とプロジェクトを任されたりして……」

長野「すごいですね。尊敬します」

上田「いやいや……」


上田、褒められてニヤッと笑う。

長野、指圧を続けながら質問する。


長野「上田さんは学生時代はスポーツをされてましたか?」

上田「どうしてですか?」

長野「運動部特有の引き締まった体つきだったので。当てましょうか、バスケ部ですよね?」

上田「そうです、当たりです」


上田、眠たそうに答える。

長野、いきなり上田の耳元に顔を寄せると、早口で喋り始める。


長野「ポジションはセンター、部活のキャプテンで明るく元気な人気者。勉強は少し苦手。現代文は得意。一番苦手なのは英語でいつも赤点だった」

上田「えっ、なんで……」

長野「どうしてだと思います?」


長野、上田の顔をグッと鷲掴みにする。

長野、指に力を込めながら、猫撫で声で話す。


長野「もしも、私があなたにいじめられていたクラスメートだとしたら?」

上田「ひっ!」


上田、怯える。

長野、顔から手を離して優しく笑う。


長野「冗談ですよ、冗談! 私、趣味で占い師をやってるんです」

上田「え……?」

長野「バーナム効果ってご存じですか? 誰にでも当てはまりそうなことをそれっぽく言って、さも的中させたかのように錯覚させるテクニックです。びっくりしました?」

上田「なんだぁ……脅かさないでよ……」


上田、安堵するも、ふと思い出したように言う。


上田「でもお姉さんの顔、どっかで見たことあるかも……でも知り合いに長野って苗字はいないし……」

長野「どうなんでしょう。自分で言うのもなんですが、地味でありふれた顔立ちなので。誰かに似てるってよく言われるんですよー」

上田「そっか……」


上田、相槌を打ちながら眠る。

そこで暗転して時間経過。

長野、上田の顔にかけたタオルを外す。


長野「施術終了です。お疲れ様でした」


長野、手鏡を上田の前に持ってくる。

上田、瞬きしてから鏡に注目する。


長野「どうですか? 顔の艶とハリが良くなってますよ!」

上田「ほんとだ……」


上田、感心する。

長野、鏡を下ろし、にんまりと笑って上田に問う。


長野「ところで上田さん。取り除いた老廃物はどうしますか?」


ベッドのそばに、切断された上田の手足が置かれている。

手足の無い上田、呆然とする。


上田「え……?」

長野「言ったでしょう。違いが一目で分かるほど、身体が軽くなるって」


長野、狂気に歪んだ表情で笑う。


長野「長野って旧姓なの。気付かなかったよね、真理ちゃん」


長野、憎悪を露わにして上田の顔を撫でる。

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