蹂躙
数時間後、まだ暗い時間帯。
「う、う~ん」
俺はなにか物音で目を覚ました。レコは隣で寝息を立てている。
路地裏の入り口の方から声が聞こえる。どうやら何かあったようだ。
「レコ、起きろ」
俺はレコを揺すって起こす。
「むう、何ですかあ主様」
「何かあったようだ。入り口の方に行ってみよう」
「別にたいしたことじゃありませんよ多分。ここでもう一回寝ましょうよ」
レコがすり寄ってくる。
「まあまあ、俺が気になるんだ。行ってみようぜ!」
「仕方ないですね・・・」
俺たちは件の入り口へと向かった。
入り口付近には人だかりが出来ていた。俺はそのうちの適当な一人に話を聞いてみた。
「どうしたんですか?」
「A級冒険者のアビルたちが来たんだ!金品を差し出さないとまたけが人が出る・・・」
なるほど。差別の延長で強盗まがいのことをしに来たッてことか。
よく見ると、お世話になったシンさんたちも不安そうな顔で来ていた。
「レコ、あの人たちには恩がある。なんとか助けて・・・」
言いながらレコを見ると、下を向きながらぷるぷる震えていた。
「レコ?」
「あんなしょーもない奴らのせいで、せっかくの主様との添い寝が邪魔された・・・?そんなっ!」
レコがA級冒険者の方をキッと見定める。
「万死に値するッ!!」
その瞬間レコが魔力を解放した。魔王城の時と同じように、膨大な魔力の柱が立ち上る。それは空に届く勢いだった。
A級冒険者もその場にいた者たちも、その光景に釘付けになった。
「な、なんだ、あれ」
俺は少し興味があった。本気のレコとA級冒険者はどこまで戦えるのだろうか。でもその前に、唯一の懸念を払拭しておこう。
「レコ」
「・・・」
「殺すなよ?」
「・・・承知」
「ふん、所詮は田舎者だ!これくらい蹴散らしてやるぞ!!」
A級冒険者は全部で4人、リーダー、タンク、黒魔法士、白魔法士だ。さすがA級、バランスがいい。対して、こちらはレコ一人。ただしレコは完全生物。殺さないのであれば何も問題はない。
レコが構える。タンクが前に出て攻撃にそなえる。
ドンッ!!
レコがタンクに突進し、タンクの持つ盾を殴った。盾はバラバラに砕け散り、タンクは衝撃で吹き飛ばされた。
「なっ!?」
タンクの男は壁に激突し、気を失った。
レコがゆっくりと残り三人に近づく。
「っくそ!!」
リーダーが斬りかかる。レコはそれを片手で、素手で止めた。
「はッ!?」
レコは剣をそのまま折った。
リーダーが一歩下がる。
「化け物め!!」
「アビル!ここは引いた方ガッ!?」
レコが女白魔法士のところまで瞬時に移動し、腹を思いっきり殴っていた。
「ゲハッ、ゴホッゴホッ」
「逃がすわけないでしょう?」
レコが無慈悲に言う。白魔法士は血を吐いていた。
それは戦闘などではなかった。一方的な蹂躙。まさにそれだった。
黒魔法士の女は完全に絶望し、その場に座り込んだ。
「あとはあなただけのようよ?」
レコはリーダーの男に言う。
「田舎者が、ふざけるな!!」
「あっそ」
レコは地面に魔法陣を展開する。そこから赤黒い触手が現れた。その触手は瞬時にリーダーの男を拘束した。
「あなたには罰を受けてもらうわ。私の邪魔をしたこと、その罪は重いわよ?まず爪を剥いでから手足を引きちぎって、あなたの前であなたの仲間たちにそれを食べさせて・・・」
殺さないとはいえちょっとまずいことになりそうだったので、俺はレコを止めに入った。
「ちょっと待て!!落ち着けレコ。そんなことしても意味がないから、な?」
「主様との添い寝を邪魔したのが悪いんです!!」
「添い寝ならいくらでもしてやるから、はなしてやってくれないか?」
レコの顔が緩む。
「し、仕方ないですねえ~!今回だけですよ?」
すごくうれしそうだ。チョロい。
「ということで皆さん?次来たらレコがまた暴走しちゃうんで、来ないでください。それが出来るなら、許してあげましょう」
「わかった!!約束する!!もう離してくれ!!」
リーダーの男は完全に怯えきっていた。
「レコ、触手を離してやってくれ」
「わかりました!!」
触手を離した途端、冒険者たちは逃げていった。
見ていた人たちは喜んでいいのかわからないようだった。仕方がないだろう。助けられたとはいえ、レコや俺は得体の知れない化け物だからな。
「主様!!まだ暗いですし、もう一度寝ませんか!?」
レコの見え透いた欲望に従いつつ、俺たちはその場を後にした。




