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【超超短編小説】そういうもんだ

掲載日:2025/12/21

 会社に向かう途中、白い杖を持った女学生がバス停に佇んでいるのが見えた。

 彼女がバスを待っていたのか、誰か降りて来るのを待っていたのかは分からない。

 しかし彼女がそうして女生徒服を着用してひとり外出していると言う事は、彼女ひとりでバスには乗れるという事だろう。


 要らないお節介をするべきじゃない。


 だからバスが到着したとも言わなかったし、運転手にその旨も告げなかった。

 俺はバスの座席に座って、バス停に立っている女学生を見ていた。彼女が別のバスを待っていたのか、それとも彼女が実在しているのか俺にはわからない。

 彼女はなぜあそこに立っていたのだろうか。それを知る事は無いだろう。

 そういうもんだ。


 会社から戻る途中、駅にあるコンビニ従業員出入り口の鉄扉を平手でたたく老婆がいた。

 別に今朝の女学生を思い出した訳では無いが、なんとなく気になって何をしているのか訊くと、その老婆は「エレベーターを探している、ここらへんにあったはずだ」と答えた。

 そういうもんか。

 尋ねた流れで、その老婆を真後ろにあるエレベーターに乗せた。

 老婆は「ありがとうございます、目があまりよく見えないもので」と頭を下げた。

 鉄扉とエレベーターの見分けがつかない老婆は、白い杖も持たずに何をしていたのだろうか。どうやってこの駅まで来たのか。

 何となく老婆が実在しないような気がして老婆を電車に乗せた後、そのまま黙って離れた。

 彼女にとって短い悪夢だったかも知れない。

 そういうもんだ。


 白杖の女学生やら、その杖すらない老婆の事を考えると、少し厭な気分になり、立ち飲み屋で酔い散らかした。

 ここ数年ですっかり行儀のよくなった街は、終電前にはほとんどが電気を落としている。

 薄暗い街だ。

 それでもまだ明るいコンビニでアイスクリームでも買って帰ろうと歩いていると、同じようにまだ明るい銀行のATMで電話を片手に持った老人が見えた。


 もしかしたら詐欺かも知れない。

 その場合は明日の朝一で銀行に連絡をすれば間に合うだろうと思って放置した。あの爺さんだって存在しているかは分からない。

 それに、助けたところで何になる。

 爺さんを救ったって、だれもおれを救ったりはしない。

「ありがとうございます、お陰様で詐欺に遭わずに済みました。お礼をしたいので連絡先を……」

 そうして最後に通話した記録のおれが誤認逮捕される。



 まぁそういうものだ。助からないさ。

 あぁ、ラーメン食べておけばよかったな。煙草もやめるんじゃなかった。

 まぁいいか。仕方ないな。

 うん。まぁ、そういうもんだ。

 そういうもんだ。

 そういうもんだ。


 そうやって半端な事ばかりしているから仕方ない。

 見えてないのかも知れないな。

 まぁ、そういうもんだ。

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