その4
空港からバスに乗って、ふと車窓から景色を眺めた。なんだ日本人もいるんじゃんか。これなら黒髪ギャルもいるとかいないとか、黒木じいちゃんと言い合ってから、到着。バスターミナルから徒歩一分のところに、白い外観の美しいハリストス復活大聖堂があった。
「うん? 竣工したのは2013年だって」
「意外と新しいのね。ねえ、そのガイドブックってこの国の空港で買ったのよね。日本語じゃないんじゃない? あんた。良く読めるわねえ」
「黒髪の聖女様はどこじゃ?」
俺たちは、このまま金色に輝くビザンツ様式の内観を見て回るはずだった。だが、人が疎らの階段付近で蹲っている私服の美しい女性を発見した。
「どうしたんだろ? あの、具合でも悪いんですか?」
三人で通行人や観光客をかき分けて行き、その女性の傍によった。それから、俺は試しに日本語で話し掛けてみると、ゆるりと女性が顔を上げた。怪訝そうにこちらをしばらく見てから、首を左右に振り力なく俯いてしまった。
「やっぱ、日本語じゃだめねえ」
「こっちの国の言葉じゃないとな」
「うーん……そうだな。それならガイドさん呼んでみよう。多分、クレジットカードにそんな感じのサービスがあったような?」
チノパンの後ろポケットから、プラチナ級のクレジットカードの一枚を取出し、海外ガイドサービスに連絡を取り始めた。しばらくすると、地元のボランティア数人と通訳者を頼めた。
通訳者が丁寧に女性と話している間。俺たちは、ボランティアの人達と一緒に、女性の知り合いを探しに行った。
「どうやら、教会の一年間の維持管理費用がバブル崩壊で消えたんだそうです」
「へえ……はい。これ使って……」
「それは大変? うん?」
「……黒髪……ギャル少しちゃうけど、こっちもいいんやあ」
俺は宝くじの当選金が、全て入金されている銀行のキャッシュカードに付帯してあるデビッドカードを彼女に渡した。
「じゃ、帰ろうか……」
「ええーーー!! なんでーーー!!」
「帰る?! 何故じゃあーーー!! 黒髪ギャルーーーー!!」




