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インクレディブル・ラッキー・HEAVEN  作者: 主道 学


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モンテネグロ

 バイトをさっさと辞めて、赤ん坊をアパートの友人に預かってもらったバツニ女の佐藤 加代と、おんぼろアパートの大家さんの黒木じいちゃんを連れ、モンテネグロへと旅立った。


「ねえ、私飛行機に乗るの初めてなんだけど、この飛行機の中って、とても広いんだね」

「あ、ああ。俺だって初めてさ」

「わしもじゃよ」

「でも、なんでモンブランクロなの?」

「モンテネグロだよ。金持ちが行くリゾート地なんだってさ」

「ほっほっほ、そのモンブランクロには水着姿のギャルはいるかのう」

「わ・た・し・がいるでしょ。バツニだけど、これでもまだ29よ!」

「ギャル? いるんじゃねえかな? でも、外国人だろ? 金髪の」

「……黒髪ギャルはいないんかい!!」


 初めて乗った飛行機は当然、エコノミークラスじゃなくて、24万円以上もするプレミアムクラスだ。といっても、エコノミークラスを知らないので、どこが違うのかはわからない。羽田空港から雲海を飛行すること16時間ほど、機内食のカナッペやホットコーヒーを飲みながら、ゆったりスペースで寝ながら雑談しながら、やっとモンテネグロのポドゴリツァ空港へと着いた。


 ポドゴリツァ空港から外へ出ると、気温は東京と違い少し肌寒い程度だった。いつも着ている作業服の半袖チノパンでも平気だったが、みんなで東京でハイエンドの高級服を着こなしているから、今では俺は白いトレーナーに肌色のスラックスを履いている。佐藤はツイードジャケットを羽織ったロングスカート姿。黒木じいちゃんは、デニムカバーオールジャケット姿だ。


「さて、まずは……モンテネグロ国立博物館へ行くか?」

「いーやーよー、博物館に行っても意味なくない?」

「わし、黒髪ギャルがいいーんじゃ」

「じゃあ、シュコダル湖?」

「いーやーよー、湖に行っても意味なくない?」

「わし、黒髪ギャルがいいーんじゃ」

「……あ、ハリストス復活大聖堂にすっか。聖女様がいるかもしれないぜ」

「……聖女様?」

「……黒髪の聖女様?」


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