斜め上のカロリンメイト
「はあ~、かったるいなあ~。今日もくっそつまんねぇ残業かよ~」
俺はやさぐれフリーターの相田だ。
いつものバイト先の倉庫で、早く帰れねえかなあとか。重い荷物をベルトコンベヤーに乗っけては、早く終わらねえかなとか考えていた。
あの後、ラスベガスのカジノでは、ディーラーに勝って12憶円を手に入れた。だけど、当然所得税の金が足りない。
日本に着いたら、また辛いバイトの日々に完全に戻った。
「金。どうしようかな……?」
そんなことを考えて、おんぼろアパートの自宅への帰路につく。
「お~い。こっちだ~、こっちだ~」
「あん?」
空耳なのかな?
なんかこっちだ~って、聞こえるけど?
空耳のようにも聞こえるぞ?
雨が降っているからか、空耳の可能性がないとは言えないけど。
耳を凝らすと。
あれ? 人のようなものが手招きしている?!
ボロボロになった服を着ている、男がいた。
男の隣には、ポツンと小汚い占い小屋があるので、前に助けた占い師で間違いないだろう。
「どうだ。宝くじの当選金は、めいいっぱい遊んだか?」
「ああ、一応な……」
「なんだ? そのしけた顔は?」
「いやー、いいんだよ。これで」
「ははーん、さては、大金を使い果たして、一文無しになったんだな。その顔は。そうだろう?」
「……ああ」
「君にそんな顔は似合わないぞ。ほれ」
「うん?」
占い師と思しき男は、また一枚の宝くじを俺に渡した。
「貰ってくれ、礼はいらないが、そうだなあ……」
「あれ? これ?」
「カロリンメイトでいいぞ」
「……お、おう。そんなんで、いいのか?」
俺はチノパンのポケットから、ありったけのカロリンメイトを男に渡してやった。
「ありがとうな、でも、なんで?」
「……たまたまじゃよ。たまたま。じゃ、わしは帰るから」
翌日、見事男から貰った宝くじは当選した。
当選金は、また10憶円!!
今度は、税金の分だけは……とっておこう。




