ターシャは現実になる夢物語を描く
しなければいけない事だと分かっていても混乱した頭がそれを許してくれない。
ターシャはそんなライセラスに笑顔を崩さずに話し続けるのだ。
「決まっているではありませんか。
オースヴァイン王国は「セルディア・デルフィナス」をどう思っているのか?
第2王子のレヴァンズ様が正室として迎えるはずだった、
「セルディア」をどうするのか…」
それは「セルディア・デルフィナス王女」が本物であるかの確認であり、
王家同士が隠していたのか解らないが、
見つかってしまった「セルディア王女」どう扱うべきなのか、
オースヴァイン王国にお伺いを立ててみようという事だった。
けれどターシャは話しながら別の事を思いついてしまった様で、
話を先に進める事を考えついてしまうみたいだった。
「…あぁ。
間違えてしまいました。
セルディア・デルフィナスとレヴァンズ・オースヴァインの、
婚儀の準備は出来ているのか?
その方が宜しいでしょう」
笑顔だった顔が満面の笑みへと切り変わりターシャはリリーの方を確認したのだ。
何かを確認出来たみたいにリリーはターシャに「できる」と合図を送ったのだ。
それは素敵なストーリーが出来上がってしまったという事に他ならない。
「最後の外遊をして楽しんだセルディア・デルフィナス王女が、
レヴァンズ・オースヴァイン第2王子殿下に嫁ぐ準備を、
ファルスティンは最大限支援してさしあげましょう。
嫁入り用の「貢物として食料」を「いっぱい」持たせてあげましょう」
それはファルスティンを正面に出さないオースヴァイン王国に対する支援の方法だった。
ファルスティンはあくまで祝福のお手伝い。
そしてこの地に「亡命」を求めた人などいないという事にしてしまおうという、
ターシャの考えであり当然見返りとして求める物も出てくる。
と言うか出て来ざるを得ないし求める物なんて決まっている上に、
ライセラスとターシャの悩みの種を減らせそうなのだ。
せっかくのチャンスを消したりしたくないターシャはストーリーを書き続ける。
「婚礼の儀の準備をファルスティンが「手伝った」のです。
そうすればファルスティンは表向き「支援」した事になりませんから。
デルフィナス王国がオースヴァイン王国を支援した事になりましょう。
王国は「支援」さえして貰えればその「支援元」が何処だって構わないでしょう?
それに王国の食糧危機は「今年」だけではないのです。
これから来年も同じように起きてしまいますし…
何よりこれで可愛い義妹達の安全が買えると思えば、
安すぎると思うのです」
「あぁ、レヴァンズ殿下が結婚しさえすれば、
エルゼリアを迎え入れる理由が無くなるな」
「あの子を「側室」に入れる事は、
ボルフォードの「やらかし」からできません。
であれば妃の座を埋めてさし上げればよいのです。
「足りない」のであれば、妹を名乗る「メロディア」を側室用として、
同時に宛がえばもう妹達の入り込む隙間はないでしょう?
第2側室なんて、ねぇ?エルゼリアには与えられない。
跳ね避ける理由としては十分な理由となってしまいましょう。
その為に貢ぐ物が廃棄予定の「小麦」を輸送するだけで解決するのですから。
安い取引となると思うのです」
「それは確かにそうなのだが…
本当に「亡命」を求めて来た「セルディア・デルフィナス」なのかは、
確認しなくてはいけないだろう?」
「本物のセルディアでなくとも構いません。
王国はこの食糧危機を乗り切るためにファルスティンが「捨てる小麦」が、
どうしても必要でしょう?
私達が「セルディア・デルフィナス王女」と言う人物を迎え入れ、
外遊を終らせたセルディア様をファルスティンから送り出して差し上げるだけ。
第2王子の妃の座を埋める代わりにオースヴァイン王国から、
エルゼリアが解放される為の必要経費と思えば安い物でしょう」
それはターシャ・ファルスティンが求める愉快な物語。
エルゼリアを人質として求めるオースヴァイン王国から、
引き離せるのであれば万々歳。
ファルスティンは外遊していたセルディア・デルフィナスを、
王国の一領地としてもてなすだけ。
花嫁が伝統あるオースヴァイン王国へ嫁ぐ前に王国の内情を知りたいと思って、
王国内を視察して歩き周り、最後にゴミ溜のファルスティンにまでお越し下された。
それは心優しいセルディア様にターシャ・ファルスティンは感動して、
なけなしのおもてなしをするのだ。
何日でも何十日でもかけて、レヴァンズ・オースヴァイン殿下が、
セルディア・デルフィナス王女を受け入れるまで「王国の一領主の妻」として、
甲斐甲斐しくお世話をして素敵なドレスを用意して差し上げる。
そしてその後に第2王子が求める「伝統」の花嫁衣装を着せて送り出すのだ。
もちろん何故か「2着」用意されていたら、もう一人の姫も娶りたいという事。
メロディア姫に着せて送り出して差し上げる。
正室、側室共に埋めてしまえばもう王国はエルゼリアを求められない。
ライセラスは王都にいる王太子に手紙を出すのだ。
―セルディア・デルフィナス様が花嫁となる為に我が領地―
―ファルスティンでお待ちになられています―
―いつでも送り出せるご準備は出来ていますし―
―この日の為、当家でも「特別」に嫁入り道具も取りそろえ終えております―
―是非とも婚礼の儀を王都で上げるべくご準備を進めていただきたい―
それはセルディア・デルフィナスが見つかったと言う王国にとっての訃報であり、
ファルスティンにとっては朗報となる事であった。
そして王太子は返事を出してしまうのだ。
それはオースヴァインにとって喜ばしい結果であり一番望ましい事であった。
王国としては当然エルゼリアとセルディアを迎え入れて、
2か所からその支援を受け入れる。
同時に一国の姫と辺境の一領地の娘でしかないエルゼリア伯爵令嬢を、
同時に迎え入れるとすれば王族と同列にエルゼリアの名前を、
書き記す訳にはいかない。
その為に返事は曖昧な物となるのだがそれこそ、
ターシャとライセラスの望む所なのだ。
―セルディア・デルフィナス姫ともう一人を同時に王室に迎え入れる―
―準備して待たれよ―
―なお取り消しは出来ぬことを国王陛下と王太子の名において宣言する―
―よく伝えてくれた感謝する―
―そして覚悟が出来た事を友として喜ばしく思うよ―
そう返答が帰って来たのだった。
この瞬間セルディアと王女ともう一人「高貴なる者」を、
ライセラス・ファルスティンは送り出さないといけなくなってしまった。
けれど、送り出すのは「高貴なる人」であってその人物が、
「エルゼリア」である必要は全くないのだ。
オースヴァイン王国としては「セルディア姫」が見つかり婚礼が勧められる。
今ファルスティン内にいる高貴な独身女性はエルゼリアだけと、
思い込んでいるからこそ「セルディア」の名前以外、
出したりしないし出来ないのだ。
簡単な言葉遊びではあるがそれ故に重い。
保護した「セルディア」と「メロディア」の両姫は、
ファルスティンに亡命する権利はないのである。
彼女達はただ外遊の果てにファルスティンにたどり着いただけ。
そしてファルスティンで王家の花嫁となるために喜ばしい生活をこれから、
送らされる日々が始まるのである。
本人にその事実が知らされるのは、王家から迎えが着て、
拷問器具の様な婚礼用のドレスを着せられる時であった。
「エルゼリアを花嫁として差し出すなんて一言も書いてないからな」
「ええ。義妹をさしださなくとも高貴なお方は「2人」いるのです」
「確認してこないし、デルフィナス王家2人と婚礼のご祝儀代わりの、
小麦を出すだけで良いのであれば良い取引となるな」
「頑張って「可愛い人」と同じ様なドレスを着れる様に準備させますね」
「ああ。デルフィナス王家も泣いて喜んでくれるだろう」
夫婦の会話の果てに二人の姫は亡命する事を許されず、
王家に嫁ぐための準備として生活する場所をファルスティン領都に、
準備される事になるのだった。
もちろん周囲のメイドや使用人も領都で正しく「管理」される事になる。
狭い領都ではあるが二人の姫とその使用人を優雅に暮らさせるだけの、
スペースは十分にあり、お姫様らしい日常生活も送らせて差し上げる準備を、
ターシャとリリーは始めるのだった。
二人の姫が窮屈に感じない様に。
働かなくても良いように迎え入れて差し上げるのだ。
その待遇は「亡命」した一般人ではなくて「一国の姫」として、
迎え入れる事になる。
整えられ続けるその「場」は当然今のファルスティンとして、
は最上級の人員を用意しておもてなしをする事になるのだ。
そこに配置される人員はよく理解できてしまっていた。
当然である。
ターシャとリリーの下につく侍女とメイド達なのだ。
守らなくてはいけないエルゼリアの代りに人身御供として、
王国に嫁いでくれる大切な人達を不快な気持ちにする訳にはいかない。
最大級の礼節を持って迎え入れ、そして何時でもオースヴァイン王国の、
要望に応じて婚礼ドレスを運び込ませ送り出せる準備を進めるのだ。
領都の中で革命が起きたと言っても良いかも知れない。
お姫様達を入れる素敵な鳥籠が完成したのだった。
予想通りの展開でしょうか。
第2王子であるレヴァンズに花嫁として正室側室を埋めてしまって、
また一つファルスティンは王国から離れられるのです。
ターシャは義妹達には優しいです。
というよりターシャの守るべき義妹は2人しかいないので、
その分手厚くなるのです。
将来的に隣接する他家の御令嬢にも駕籠を与える必要が、
出てくるかもしれませんがエルゼリアとギネヴィア並みに、
大切にしてはくれないでしょうね。
ターシャの大切な物はファルスティンとルクレイン以外ありませんから。
学友は「可愛い人」の為に切り捨てられたためにいませんし。
その辺りの割り切りは他の人より明確ではっきりとしています。




