表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/15

準備は進む姫の知らない所で

「なるほど…これはっギネヴィアもアルフィンも音を上げる訳だ」

「…本当に「頭の足りないお姫様」なのですね。

そして遠慮がない」

「我儘をいってくれれればくれるほど利用価値があるとつくづく思うな」

「技量は上がることは確かでしょうがストレスも多そうです…

リリー?針子達とデザイナー達は大丈夫?」

「針子の方は問題なさそうですが…

デザイナーの方は後て数着作らせてあげてくださいませ」

「わかったわ…」


報告書を見るたびライセラスとターシャは眉をひそめていた。

それでもセルディアとメロディアの欲望と願望は留まる事を知らない。

ただただ膨れ上げるのだ。


最初はメロディアだけであった毎日の様に針子を呼び出して

「調整」させる事もセルディアも始めていた。

自身をより美しく飾り立てる事に集中し続けるのだ。

出される料理に舌鼓を打ち海産物を出せ故郷の味を再現しろと言えば、

料理人はその要求に全力で答えるのだ。

それは当然と解釈され彼女達の周囲はその引き連れていた侍女を中心に、

華やいでいくことになる。

勿論アクセサリー一式も許せる範囲で…

と言うより叔父様が秘蔵していたどこぞのマインでクラフトなゲームの様な、

四角い原石の塊が屋敷には貯蔵されている。

錬金して作られた破格の大きさは勿論叔父様しか作る事が出来ない一級品。

自然界では絶対に発掘しないその原石を砕いて、

お姫様方のアクセサリーを全力で職人が作り上げていた。

発注があるのだからやらない訳にはいかない。

(因みに原石はデカすぎで原石と思われない為そこらにごろごろ転がっていて、

価値観が可笑しくなりそうになる倉庫が出来上がっている)


勢を凝らした宝飾品に心を躍らせるメロディアとセルディア。

姫君達の感性の赴くままに作り上げられたドレスは日に日に増えていき、

その増えたドレスに合わせる様に周囲も考えを改めていく。


セルディアとメロディアの連れて来たメイドや侍女達も自身の物を、

作らせ始めたのだ。


「少しだけなら…」

「姫様のおこぼれですもの」


そう言い分けして通ってしまえばホッと胸をなでおろすのではない。

次を作らせ始めるのだ。

当然ファルスティンの針子達はその要求に答え続ける。


領主の妻であるターシャが一切の妥協を許さない。

同時に厳命した事もある。


「決してあの者達に引きずられない様に。

要求には応えて差し上げて。

そして線を引き決してその内側に入らない様に。

…何かをくれると言っても恐れ多いと聞き流しなさい。

でないと…「一緒に送り出す」事になりかねませんし。

守れなくなりますからね」

「「「「はい」」」」


直接セルディアとメロディアとその傍付き達に接する者には、

ターシャより言葉を賜りリリーの信頼の厚い者達を当てていた。

理由もこれからどうなっていくのかも説明を受けていた、

使用人達は流される事無くただただ対応をしていったのである。


そして明確な線引きがある事によって、

更にセルディアとメロディア達は調子づいていくのである。

特別な給仕服を与えられる姫様方の侍女もメイドも大喜びで、

彼女達の周囲の物もそれはそれは華やいでいく。

自身の腕を存分に発揮したオースヴァイン王国ではその存在を認められない、

認める訳にはいかないファルスティン製の衣装は無数に作られ、

当然姫様方の知らない所で「嫁入り道具」という形を取って梱包され、

出荷の準備を待つ事になるのだ。

一国の姫が嫁入りするのに相応しい「姫様方」が作り上げた気に入りのドレスは、

当然の様に山の様に積み上がっていく。

そうしたらまぁ大変。

当然そのドレスをしまっておくための家具が必要になるから。

それは事前に都市ギネヴィアにいる家具職人に作らせ搬送されている最中であり、

オースヴァイン王都へと持って行かないなんてことはありえない。

当然そうしたら机や椅子も必要ねと言わんばかりに…

どの家具は似合うでしょうかと用意されたサンプルから、

姫様方は丁寧に自身に相応しい家具まで用意は順調に進んでいた。

姫様を取り巻く特別は増える一方である。


「お気に入りの食器もお造りになりますか?」

「勿論。わたくし達専用な物が必要な物なのよ!

それ位理解できていなかったの?!

少しは頭をつかいなさい!」


と返事が返ってくるのだ。

歯止めの聞かなくなった彼女達はデルフィナス王国で使っていた、

食器を思いだしながらそれを再現させようと躍起になる。

自身の為だけに作られる自身の為だけの食器。

セルディア姫とメロディア姫の周囲はファルスティン内で作られた物で、

見事に揃えられていくのだった。


いままでオースヴァイン王国という柵の下領内以外に出荷する特捜品を、

作らず隠して来た反動が出てきたようにゼファード・バルダーと言う偉人が、

作り上げてしまった製造する場所。

出来る物は言うまでもなく生活に関する全てを網羅し、

この時代に置いて王族が思いつくようなものなどでも、

その要求に応えられ作れてしまう技量を、

領民達に蓄えさせていたと言う証拠であった。

姫君が言えば何でも用意できるファルスティン。

その姫に仕えるに相応しい「侍女」と「メイド」も華やいで…

瞬く間にに姫君が求める物が無くなりつつあった。

セルディア様とメロディア様の為に作られた周囲を彩る、

姫君達専用の「全て」

要求できる物が無くなれば、

後は今まで使って来た者の質を上げるしかなくなってくる。

新しい物が出来上がり古いものと入れ替わる。

そうすれば綺麗に梱包されればそれは出荷の準備が出来た製品。

「姫君のお気に入り」と言うラベルが箱には張られ嫁入り道具の仲間入り。

当然周囲にいるメイド達の要求するグレードも上がり、

姫君達に相応しい従者が出来上がってきていた。

頭脳を気取り姫と同様に「お世話される」従者とメイド達。

もう誰が見ても嫁ぐ姫に付いていく専属のメイドと侍女。

その立場に相応しい装具を身に着け華やいで花嫁行列に加われる準備が、

出来上がっていたのである。

嫁ぐ姫様とその従者達と表現できる一団のパッケージが出来上がっていた。



リリーもターシャも大切な身近な者達はその一団から徐々に遠ざけられ、

隔離も始まっている。

急激な変化であるが全てセルディアとメロディアの望むがまま。

良い方向への変化でしかなく要求が惜し通ったとしか考えられない。

ファルスティン内で王都へと出荷する準備が完了するタイミングを見計らって、

仕込まれていた事態が動きだしていた事にも気づけない。

王国から使者が訪れていたのだ。

勿論それは非公式でありライセラスやターシャに挨拶する為ではない。

リリーと協議した結果でもあり王都に持っていくものに不足がないかの確認であった。

姫君達が持っていく物を厳選し選ぶこともまたオースヴァインから派遣された、

使者達の大切な仕事。

彼等はくまなく確認し嫁入り道具に不備がないかの確認も始めていた。

準備にファルスティンが費やして失う物はドレスや宝石など物質的な物だけ。

家具も食器も故郷の代りに王都で必要な物は全てファルスティンが用意してしまった。


「…そろっておりますな」

「ありがとうございます。

姫様方の要求がとても多いので嫁入りまでには物も増えます」

「それはそれは…素晴らしいですな」

「…そうですね」


リリーと交渉をする使者はその準備に喜びただひたすらに、

目録を確認していくのである。


「嫁入り道具として〇〇が無いから嫁入りできないわっ!」


なんて言い訳も当然セルディア姫もメロディア姫も言い出せない。

ライセラス・ファルスティンは、

ファルスティン領は定めた「出立の日」に必ず二人の姫を送り出すために、

ライセラスに使える使用人達は戦力で取り組んだのだ。

なにせこれが成功すればこの地で愛し大切に育てるべき、

エルゼリア・ファルスティンがオースヴァイン王国に煩わされる事なく、

目一杯動く事が出来る様になるのだから。

ライセラスからエルゼリアに対する援護射撃でもあったのだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ