表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/46

3-2 もう一人のヒロイン

【イベント発生! 彼に自分の存在を印象づけよう(※成功アイテムあり)】

 というメッセージがゆっくり消えると、次に違う言葉へ変わる。


【どちらに向かう?】


「何よこれ……。リアルにゲームを進めていけっていうの……?」


 ぼやく私の心情をよそに、次の選択肢が頭に浮かんだ。


【行先選択:橋・城門】

 よし! ゲームと一緒だ。

 ここは迷わず『橋』を選択する。


 どちらを答えるかで、好感度の上昇が違う。


 ギルバート第一王子を落とせるとは、ゆめゆめ思っていないが、より難しい方を選択してみた。


 凱旋パレードとあり、馬車の侵入が制限されているため、適当な場所で降ろしてもらい、御者とは別れた。


 幸いにも、警護なしでパレード会場に辿り着けたということだ。

 こうなれば、私の好きにさせてもらう。


 キョロキョロと見回し、目的の人物を探す。


「いたわね」


 ゲームと同じ展開に胸をなでおろし、金髪の髪を一つにまとめた、うら若い女性の元へと向かう。


 そうして何食わぬ顔で彼女の横に立つ。

 黒い瞳の彼女は、これから姿を見せるギルバート殿下を探すのに夢中で、隣に並んだ私のことなど、微塵も気にしていない。


 祝福ムード一色のこの場で、冴えない表情を見せる彼女は、夫を3週間前に戦地で亡くしたばかり。


 両国間での和平条約を結ぶ決断がもう少し早ければ、元侯爵令嬢の彼女が未亡人になることもなく、今日の日を胸躍らせて歓迎していただろう。


 別にギルバート殿下が悪いわけではない。

 だが元侯爵令嬢のエルナは彼を強く恨み、ナイフを隠し持ってこの場にいる。イベントの原因となる人物だ。


 これから起きるイベントに意気込んでいると、白い馬に乗ったギルバート殿下が見えてきた。


 自分が作ったゲームのヒーローだから、最推しの存在であることは間違いない。


 あぁ……。やっぱり彼は尊い。

 離れていても、23歳の彼はキラキラ輝いて見えるもの。


「ぁっ!」


 じっと見つめていると、私と視線がバチッと重なったと思ったが、気のせいだろうか。


 一瞬、ドギマギしてしまったが、気を取り直してエルナに視線を戻す。


 彼女は殿下が乗る白馬にナイフを刺すつもりでいる。

 突き立てられたナイフの痛みに驚いた馬が暴走し、沿道の観衆たちに突進して橋から落ちていくのだ。


 幸い、ギルバート殿下は、馬が河に落ちる直前に飛び降り怪我もないが、突進された庶民に負傷者が何人も発生してしまう。


 負傷者たちを救助することで、ギルバート殿下に強烈なインパクトを与え、出会いのイベントが完了する。


 そろそろ時間が迫ってきたと思うが、ピロンというゲームの音は聞こえない。


 頭の中にゲームのコマンドが表示されないため、勝手にやれということだと納得した。


 いよいよ、ギルバート殿下がエルナの前に差し掛かろうとしている。


 観衆は皆、大きな声援とともにギルバート殿下に釘付けだ。


 そんな状況で今、エルナが包丁を握ったことなんて気づくわけもない。私以外は……。


 緊張が最高潮に高まったとき、エルナがすっと一歩前へ足を踏み出した──。

少しでも先が気になる、面白いなど、気に入っていただけましたら、ブックマーク登録や☆評価等でお知らせいただけると嬉しいです。読者様の温かい応援が、執筆活動の励みになります。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ