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20 イベント中(※ギルバート殿下視点)

「たたたたたっ大変です!」

 けたたましい音を上げて扉が開いたかと思えば、真っ青になったルシオが猛突進してきた。


「落ち着け。どうしたって言うんだよ」


「あああああっアンドレア卿が、大変なことになっていまして!」


「ア、アンドレアが!」

 彼女の名前を聞き、心穏やかではいられない私は、詰め寄るように聞き返す。


「今、財政部で事件を聞いたのですが、アンドレア卿の机から毒が発見されたということで、現在、監獄棟に幽閉されているようです」


「どうして彼女が毒を持っていたというのだ⁉ 彼女に限ってそんなはずはないだろう」


 発狂とも、怒号ともいえる悲痛な声を上げた。


「今朝、王城の池の魚が多数死んでしており、調べたところ池から猛毒の成分が検出されたようです。その毒と同じものをアンドレア卿が持っていたとのことで拘束された模様です」


「アンドレアが毒を使って何をしようとしていたと言うのだ」


「そ、それは……ギルバート殿下を弑逆するために近づいたのではないかと見られておりまして」


「そんなわけがあるか! 誰がくだらないことを言っているんだ!」


「ギルバート殿下が絶対に傍に置くと言い張ったのは、それ以前から彼女に狙われていたとか、いろんな憶測がついて、一瞬で官僚たちの間に知れ渡っています」


「なぜこんな短時間で噂が広がっているんだ⁉」


「調査班がアンドレア卿の元を訪ねたのが、最後だったため、池に毒が仕込まれて犯人を捜しているという件は、ほぼ全ての関係者が知っていたので、犯人が捕まったと知った途端に爆発的に広がったようです」


「馬鹿な話だ。アンドレアが私を弑逆するはずがないだろう」


「あのう……噂の一つに、パレードでギルバート殿下を暗殺しようとしていた。という話もあるようです。詳しくは聞きませんでしたが、証言者もいるとのことでした」


 顔から血の気が引くのを感じる。


 この短時間で、アンドレアにとって不利な状況ばかりが揃っている。裁判で何を言おうと覆せる気がしない。


 そう思う私が項垂れていると、慌てた様子のルシオが一点を凝視して、悲鳴に近い声を上げた。


「ギルバート殿下! そこにあるラムネは食べてないですよね!」


 そう言って机の上に置いてある、人気菓子店のラムネを指さした。


 カラフルな色合いと、丸い形がかわいいとかで、瓶に入ったラムネが貴族の間で流行っているらしい。


 昨日貰ったハンカチの礼にしては、簡単なものを選んでしまったが、無難なものを贈りたいと思ったのだ。


「アンドレアに贈ろうと思っていたプレゼントを、私が食べるはずがないだろう。いちいち大きい声を出すな」


「申し訳ございません。ですが……ラムネの瓶だと思っていたものが、毒だったようでして。……あっ、でも殿下が持っている瓶とは、蓋の形が違いますね」


 そう言ったルシオが胸を撫でおろしている。

 私の目の前には、円錐形の蓋の瓶が置かれているのだ。


 菓子屋の店主いわく、蓋に高級感を出した方が、貴族たちの食いつきが倍増したため、蓋をこの形に変えたと言っていた。


 ここで考えていても埒が明かないため、立ち上がる。

「アンドレアに会いに行く」


「申し訳ございません。僕ときたら、官僚たちの言葉に惑わされて、一瞬でもアンドレア卿が犯人ではないかと考えてしまいました」


「彼女は誰かにはめられた。それだけだ。急いで真犯人を見つけないと、物証だけでアンドレアが裁判で負けてしまう」


「大至急、各方面から情報を集めてきます」

「頼むぞ」

 と告げ、窓の外に見える監獄棟を見やり、拳を握る。


「あんな所に私のアンドレアを入れやがって。許せない」


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