12-2 2人目のヒロイン
「石の話は殿下の近くにいる者から聞いたことがある。どうして殿下のプライベートな話を知っているんだ……?」
「ですから、ギルバート殿下と露店街で出会ったからですわ。臣下として当然のことをしただけでなのに、高価なお返しをいただくのは気が引けて、目に留まったこのブレスレットをお願いしたので」
ブレスレットの存在を印象付けようと、顔に手首を近づけて見せておく。
これでこの先、多少服に合わない組み合わせだろうと文句は言われないだろう。
「信じられない。アンドレアは……ギルバート殿下の馬車に乗ったというのか? 令嬢を同乗させた話なんて聞いたことがない。明日、私から改めて礼をしておく」
「そうしてくださいませ」
それまで激昂していたコンラートが一気にトーンダウンし真顔になっていたため、私も同じく冷静に言葉を返した。
「へぇ〜、お姉様ってばすごいですわね。私のネックレスには、お手紙も入っていませんでしたから、殿下の言葉を直接いただいていなくて……。お礼の手紙と一緒にハンカチを贈ったけど、まだお返事がないので、お姉様が羨ましいですわ」
私たちの会話を青くなりながら聞いていたヘイゼルが、喉を震わせ声を振り絞っている。
ヘイゼルの感情はどちらだろうか?
表情筋を強張らせたその顔からは、怒っているのか、それとも恐れているのか、はっきりしない。
ただ、言葉と態度が合致しないところを見ると、私へ取り繕えなくなっているようだ。
このまま大人しく、あなたに殺されるわけにはいかない私は、この屋敷から逃げて、自立できる道を探すんだから。
「ふふ、そうなのね私はギルバート殿下から、この国の話をいろいろうかがって、私も官僚になりたいと思ったのですわ」
アンドレアへ笑顔を向けた。
そうすればヘイゼルは俯いたが、コンラートから投げやりな返答がある。
「勝手にしたらいいだろう。だが試験に関する質問をしてきても、俺は一切答えないからな」
◇◇◇
王城官僚試験を受けると伝えてから2日後のことだ。
エルナに外出の支度を整えてもらった私は、王城へと向かう。いわゆる受験の手続きである。
「アンドレアお嬢様、王城まで私がご一緒しなくてもよろしいのでしょうか?」
「エルナから教えてもらった説明で場所は理解できたし、そのあとに図書館で勉強をしてきたいから、一人の方が時間を気にしなくていいからね」
「左様でございますか」
置いていかれることを気落ち気味に答えていたが、エルナは私を気持ちよく送り出してくれた。
そうして事務的に動けば混乱なく申し込みを終えた。
そうなれば自分の目的である図書館へ足を運ぼうと考え、左右どちらの廊下だろうかとキョロキョロと見渡す。
すると、ピロンという音とともに、ゲームウィンドウに【イベント発生】という言葉が表示された。
このタイミングでイベントなんてあったかしらと小首を傾げたが、ひとまずその内容を確認する。
【イベント発生! 彼に自分をアピールしよう(※アイテム報酬あり)】
【どちらに向かう?】
【行先選択:庭・図書室】
この行先選択に迷う必要はない。
幸いその方向に矢印が出ているため、自分の目的のまま進めば、イベント会場ということだ。
彼に自分をアピールするなんてできるだろうか……。
あまり期待せずに図書室へ来れば、誰もいない。
少しだけホッとし、自分の目的を果たすべく借りたい本を抱えた。
そうして振り返ると、後ろにギルバート殿下が立っていたため、驚いた私はビクッと肩が上がった。
全然気づいていなかった。
「ギルバート殿下……いつからいらっしゃったのですか?」
「アンドレアがその本を手に取って、中を開きながらぶつぶつ言っている姿が面白くて、ずっと見ていた」
「それって、最初からずっといるじゃないですか」
いるなら声をかけてよねと、ジト目で見つめる。
すると、彼が形ばかりの謝罪を口にした。
「あはは、悪い、悪い。アンドレアが何に興味を持つのか気になってな」
「王城官僚試験を受けようと思っておりまして、そのための勉強で本を借りに来たんです」
そう告げると彼が目を見開き、私が抱えている本を凝視する。
「アンドレア……その本は……」
「え……?」
何かまずいことでもやらかしているかしらと、うかがう私と彼の視線が重なり合う──。
お読みいただきありがとうございます!
投稿できるかしらと連休明けのドタバタを引きずる朝にスパートをかけて、最終チェックをしていました。
この先もよろしくお願いします。




