にんにく+肉+野菜+油=絶対美味しい!
「似合ってますよ」
「知っている」
このっ……。
握った匙がミシッと鳴った。
しかし、彼のこんな態度は今にはじまったことではない。それに、これだけ美男子ならこのくらい自信家にもなるのだろう。彼の部下の青沁さんだって、めちゃくちゃ自信持ってるし。宦官とは、得てしてそういった生き物なのかもしれない。
「昼間も上げたら良いのに」
「これ以上、女人の視線など集めたくないからな。わずらわしい」
「え、私は? その言い方だと、私は女の部類に入ってなくないですか?」
「安心しろ、芋の部類には入ってる」
「ぶ、無礼が過ぎる……っ。何笑ってんですか!」
ニヤッと意地悪な笑みを向けられた。そこそこ長官のくせに!
「はぁ……もう良いですよ。最初から分かりきってたことですし」
「ははっ、お前は特別枠だからな」
「はいはい、どう――もぐっ」
ジュレを食べ終わって顔を上げた瞬間、大福を口に押しつけられた。
何するんだという思いを込めて、湿った目を向ければ、彼はそれすらも楽しいとばかりに笑っていた。悪戯小僧か。
(なんか、今夜の冬長官、妙にテンション高くない?)
念願の大福を食べられたからだろうか。
私は、口に押しつけられた大福を受け取りそのまま食べる。うん、自分で作っておいてなんだが、めちゃくちゃ美味しい!
(それにしても……)
大福がもりもり減っていっていた。
食べ盛りの運動部男子高生かと思うくらい、次々となくなっていく。見ていて気持ちいくらいだ。本来ならば、料理人冥利に尽きる……と言いたいところだが、彼の場合は単純に喜んでいられない。
「冬長官……今日は一食でも食べました?」
「内侍省から食堂は遠くてな。それに今日は、予定外に陛下がお前を訪ねたいと言われて、その後もしばらく陛下と一緒にいたな。それで戻ったら山が――」
「つまり、何も食べてないんですね」
「いや、野菜チップスで凌いだから何もというわけじゃ」
「凌がないでくださいよ」
あくまで補助食なのに主食になりかけている。どこのダイエット女子だ。
「ちょっと軽く作るんで、待っててください。あ、大福はもう控えてくださいね。空腹にそんだけ甘い物を詰めちゃダメですよ」
私は空になった皿を持って、厨房へと入った。
厨房に置いてある材料をしばしな眺め、作れるものに当たりをつける。
「夜食だけど、普段からあんまり食べてないだろうし……今回はそれなりにしっかりとしたものでも作るか」
どうせ、この後も内侍省に戻って仕事をするのだろうし。
「えっと、にんにく、茄子、玉葱、ピーマン、人参……あ、大葉もあったな。あとは、塩漬けのお肉も少し残ってたと思うし……」
調理台にすべての材料を並べ、野菜はひとつずつみじん切りに、肉もできるだけ細かく挽肉にしていく。ちなみにこの肉は羊肉。
塩漬けの肉は、塩抜きのためいったん茹でる。このゆで汁も後で使うから椀に移していったん避難。
巾を被せてある籠の中から、白いマントウを数個取り出して、蒸籠にいれて火に掛ける。主食にもおやつにもなるし作り方も簡単だから、暇があればマントウを作りおきしている。表面のツヤツヤしてピンと張った皮が、いつ見ても魅力的なんだよ。
時々、籠の中身が減ってるし、たぶん白ちゃんか月兎がつまみ食いしてる。
ちょっと口寂しいときに摘まむ、パン籠ならぬマントウ籠である。
下準備が終わったら、油を敷いた丸底鍋ににんにくから投入していく。にんにくは、鍋が温まる前から入れてゆっくりと熱していくと、香りがよく立つ。
「あぁ~にんにくの匂いは、ダイレクトに胃を刺激するんだよなあ」
『これから美味いものができるよ!』と、匂いが言っていた。
そこへ、塩抜きした肉を投入。この時点でもう罪だ。何もしてないのに、もう食材の香りだけで美味しい。しかも、調理台の上には色とりどりの野菜が。鼻も目も楽しい。
つい「ふふふ~ん」と、鼻歌も出るというもの。
鍋を揺らすたびに、ジャッ、ジャッ、と油が跳ねる音がする。ああ、涎が出そう。
肉全体に火が通ったら、みじん切りした野菜を全部投入。
「よっ、ほっ!」
肉のうま味が出た油を野菜に絡ませるように鍋を振る。
油が染みこんで、野菜がツヤツヤと色濃くなる。にんにく、肉、玉葱の香りが厨房に広がる。私の鼻歌の合間に、ジャッと油の軽快な音が挟まる。
全体に火が通ったら、塩、胡椒、八角、醤、唐辛子、砂糖。そして、ちょっとの隠し味に豆味噌で味を調える。
「あ~やっぱり、料理って楽しい」
「なんの歌だ、それは」
「――っわ!」
急に声をかけられ、思いっきり動揺してしまった。
振り向いた先では、腕組みした冬長官が壁に背を預けて、こちらを眺めていた。
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