表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】白瑞宮のお料理番~異世界の神様と飯テロスローライフを満喫する~  作者: 巻村 螢
十品目:深夜食堂開店~メニューはピリッとタコスサンドでいかが?~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/87

にんにく+肉+野菜+油=絶対美味しい!

「似合ってますよ」

「知っている」


 このっ……。


 握った匙がミシッと鳴った。

 しかし、彼のこんな態度は今にはじまったことではない。それに、これだけ美男子ならこのくらい自信家にもなるのだろう。彼の部下の青沁さんだって、めちゃくちゃ自信持ってるし。宦官とは、得てしてそういった生き物なのかもしれない。


「昼間も上げたら良いのに」

「これ以上、女人の視線など集めたくないからな。わずらわしい」

「え、私は? その言い方だと、私は女の部類に入ってなくないですか?」

「安心しろ、芋の部類には入ってる」

「ぶ、無礼が過ぎる……っ。何笑ってんですか!」


 ニヤッと意地悪な笑みを向けられた。そこそこ長官のくせに!


「はぁ……もう良いですよ。最初から分かりきってたことですし」

「ははっ、お前は特別枠だからな」

「はいはい、どう――もぐっ」


 ジュレを食べ終わって顔を上げた瞬間、大福を口に押しつけられた。

 何するんだという思いを込めて、湿った目を向ければ、彼はそれすらも楽しいとばかりに笑っていた。悪戯小僧か。


(なんか、今夜の冬長官、妙にテンション高くない?)


 念願の大福を食べられたからだろうか。

 私は、口に押しつけられた大福を受け取りそのまま食べる。うん、自分で作っておいてなんだが、めちゃくちゃ美味しい!


(それにしても……)


 大福がもりもり減っていっていた。

 食べ盛りの運動部男子高生かと思うくらい、次々となくなっていく。見ていて気持ちいくらいだ。本来ならば、料理人冥利に尽きる……と言いたいところだが、彼の場合は単純に喜んでいられない。


「冬長官……今日は一食でも食べました?」

「内侍省から食堂は遠くてな。それに今日は、予定外に陛下がお前を訪ねたいと言われて、その後もしばらく陛下と一緒にいたな。それで戻ったら山が――」

「つまり、何も食べてないんですね」

「いや、野菜チップスで凌いだから何もというわけじゃ」

「凌がないでくださいよ」


 あくまで補助食なのに主食になりかけている。どこのダイエット女子だ。


「ちょっと軽く作るんで、待っててください。あ、大福はもう控えてくださいね。空腹にそんだけ甘い物を詰めちゃダメですよ」


 私は空になった皿を持って、厨房へと入った。






 厨房に置いてある材料をしばしな眺め、作れるものに当たりをつける。


「夜食だけど、普段からあんまり食べてないだろうし……今回はそれなりにしっかりとしたものでも作るか」


 どうせ、この後も内侍省に戻って仕事をするのだろうし。


「えっと、にんにく、茄子、玉葱、ピーマン、人参……あ、大葉もあったな。あとは、塩漬けのお肉も少し残ってたと思うし……」


 調理台にすべての材料を並べ、野菜はひとつずつみじん切りに、肉もできるだけ細かく挽肉にしていく。ちなみにこの肉は羊肉。

 塩漬けの肉は、塩抜きのためいったん茹でる。このゆで汁も後で使うから椀に移していったん避難。


 巾を被せてある籠の中から、白いマントウを数個取り出して、蒸籠にいれて火に掛ける。主食にもおやつにもなるし作り方も簡単だから、暇があればマントウを作りおきしている。表面のツヤツヤしてピンと張った皮が、いつ見ても魅力的なんだよ。


 時々、籠の中身が減ってるし、たぶん白ちゃんか月兎がつまみ食いしてる。

 ちょっと口寂しいときに摘まむ、パン籠ならぬマントウ籠である。


 下準備が終わったら、油を敷いた丸底鍋ににんにくから投入していく。にんにくは、鍋が温まる前から入れてゆっくりと熱していくと、香りがよく立つ。


「あぁ~にんにくの匂いは、ダイレクトに胃を刺激するんだよなあ」


『これから美味いものができるよ!』と、匂いが言っていた。


 そこへ、塩抜きした肉を投入。この時点でもう罪だ。何もしてないのに、もう食材の香りだけで美味しい。しかも、調理台の上には色とりどりの野菜が。鼻も目も楽しい。

 つい「ふふふ~ん」と、鼻歌も出るというもの。


 鍋を揺らすたびに、ジャッ、ジャッ、と油が跳ねる音がする。ああ、涎が出そう。

 肉全体に火が通ったら、みじん切りした野菜を全部投入。


「よっ、ほっ!」


 肉のうま味が出た油を野菜に絡ませるように鍋を振る。

 油が染みこんで、野菜がツヤツヤと色濃くなる。にんにく、肉、玉葱の香りが厨房に広がる。私の鼻歌の合間に、ジャッと油の軽快な音が挟まる。


 全体に火が通ったら、塩、胡椒、八角、醤、唐辛子、砂糖。そして、ちょっとの隠し味に豆味噌で味を調える。


「あ~やっぱり、料理って楽しい」

「なんの歌だ、それは」

「――っわ!」


 急に声をかけられ、思いっきり動揺してしまった。

 振り向いた先では、腕組みした冬長官が壁に背を預けて、こちらを眺めていた。



面白い、続きが読みたいと思ってくだされば、ブクマや下部から★をつけていただけるととても嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ