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【書籍化】白瑞宮のお料理番~異世界の神様と飯テロスローライフを満喫する~  作者: 巻村 螢
十品目:深夜食堂開店~メニューはピリッとタコスサンドでいかが?~

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普通それは、山賊の台詞なんですけどね

 今夜はなんだか眠れなくて、私は白瑞宮の中を意味もなく歩いていた。

 聞こえる虫の音が、秋色に染まりつつある。


「あ、今夜は満月か」


 手燭いらずの明るさに空を見上げれば、まん丸とした白い月が真上で輝いていた。いつもは赤や青や緑と随分と派手に飾られている白瑞宮だが、今は黒と紫と藍色だけの静かな世界になっていた。


「こういう夜は……」


 足を止め、月を見つめた。


「やっぱりお団子食べたいよね。うん」


 お腹がクゥと鳴った。






 梅の部屋に置いていた水(たらい)

 その中には井戸水が汲まれ、蓋された椀が浸されている。水から取り上げ蓋を開ければ、中にはしっかりと固まった寒天がぷるると揺れている。


 夏でも日がまったく入らない梅部屋は、いつもひんやりと一定の気温が保たれ、冷蔵庫のない世界では、保存庫としての役目も果たしてくれていた。

 冷たい井戸水を汲み置いていれば、簡易の水冷蔵庫にもなる。さすがに、氷室ほど冷たくはならないから、肉や生ものを置いておくには向かないけど、こうして寒天を冷やしたりする分には充分だ。


 他にも食べたいものをちょいちょいと摘まんで、厨房へと入る。

 寒天を砕いて、果物を細かく切ったものと混ぜ合わせる。昼間に陛下達に出したジュレフルーツポンチだ。もちろん、団子入り。


 この団子も、昼間に作っていたものだ。砂糖水に浸しておけば、団子は固くならずに保存できる。

 火を使う必要もなく、ささっとできるお手軽スイーツ。


「甘い物って深夜が一番美味しいんだよね。背徳、背徳ぅ~」


 いけないことほど甘美なのが、この世の常である。

 さっそく広間へと運んでいたら、ちょうどコンコンと広間の扉を叩く音がした。もはや誰かを確認するまでもない。


「はいはーい、どうぞ」と返事をするが、扉は「はいはーい」の「はー」の部分ですでに開いていた。相変わらず、どうぞも待てない人だ。


「おっ、良い物を持ってるじゃないか」

「入ってくるなり第一声がそれですか、冬長官」


 どこの山賊だ。


 私はせっかくの深夜スイーツを奪われてはたまらないと、もうひとつ作りに厨房へとターンした。






 厨房から戻ってきてみれば、冬長官はすでに席に着いていた。食べる気満々だな。


「はい、どうぞ。昼間の残りですけど」


 私は卓にジュレフルーツポンチと、例の果物大福も一緒に出した。

「おっ」と冬長官は嬉しそうな声を漏らす。


「大福を食べに来たんですよね?」

「よく分かったな。昼間陛下達が食されているのを見て、ずっと食べたかったんだよ」

「そりゃあ、陛下達が食べてる間中ずっと大福ガン見してれば、嫌でも分かりますよ」


 さすがに陛下と皇后様の席だったし、冬長官もどうぞとは私からは言えなかった。主従関係とかに疎い世界で育った私でも、さすがにそこはわきまえている。


『近々食べさせろって来るんだろうな~』と思っていたが、まさかその日中に来るとは。余程食べたかったらしい。


 まあ、作った方としては悪い気はしないんだけどね。

 私も彼の向かいに座り、さっそくジュレポンチをひと口頬張る。


「ん~っ、つるぷる最高」

「ああ、こののどごしは堪らんな。喉を滑る冷たさがなんとも心地好い」


 二人して止まることなく、匙を上下に動かし続けた。

 そして、今更ながらに、私は冬長官の雰囲気がいつもと違うことに気付いた。


「そういえば冬長官の髪型ですけど、珍しいですね。昼間は違いましたよね?」


 私は自分の頭頂部を指さして、はじめて見る彼の髪型に言及した。

 昼間は普段通り下ろされた髪型だったのに、今は後頭部でひとつに纏められている。つまりポニーテール。


「ん……これか。夏で……暑いからな」

「まあ、夏は暑いですね」


 当たり前のことだが、しかし、ちゃんと体調管理をするのは素晴らしい。熱中症対策は大切だ。


「ちゃんと自己管理できて偉いですよ」

「……それだけか?」


 飲むようにジュレポンチを平らげた冬長官は、もう次なる大福を口へと運んでいた。どこか不服そうに、伸びた大福の皮をむっちんと噛みちぎっている。大福に親でも殺されたかな?


「それだけって……えー?」


 何を言えばいいというのか。


(こういう時の相場は……)


 と考えて、ピンときた。

 男も女も、髪を切ったり服装を変えたりしたら言ってほしいもの。




本日、3/10

『白瑞宮のお料理番』②巻が発売されました!

ちょうど連載しているこの部分と先まで入っておりますが、イラストの神様達もふもふがものすごく可愛くて癒される仕様になっております。

ぜひ、Amazonや書店で購入して応援いただけますと幸いです!

今はただでさえ本が売れない時代ですので、その一冊のが続刊を決め手になっております!!買って読んで見て損はない美味しさと癒しになっておりますので、ぜひお手に取っていただけますと、今後も書き続けることができます

(コミカライズもカドコミさんで始まってますので、また最初から初々しい気持ちでもふもふを楽しめますよ!)

よろしくお願いいたします!!

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