キラキラフルーツ大福
「よくわかりましたね! そうなんです。実は今回、包む餡を二種類用意したんですよ」
神饌として陛下として作った時は、小豆で作った普通の黒い餡。それに加え、今日は白いんげんで作った白餡も使って作っていた。
薄い餅皮から透ける色は、仄かに違っている。
「しかも、今回の中身はいちじくだけじゃなくて、色々楽しめるように種類も増やしたんですよ」
「ほう、それは楽しみだな。どれどれ」
どうぞどうぞと、並んで座る陛下と皇后様に勧めれば、先に陛下がひょいっとひと口に大福を頬張った。膨らんだ頬をもぐもぐさせ、「んっ!」と呻きを漏らす。
「これは杏子だな」
「正解です」
「まあ、陛下。ご名答ですわ」
となりの皇后様が、ニコニコと嬉しそうに小さく拍手を送る。それを受けて、陛下も「まあな」と子供のような無邪気な笑みを返していた。
二人して見つめ合って、ふふと笑う姿は見ているこっちが幸せになってくる。
冬長官や楚雄君なんて、いつも後宮を伏魔殿みたいな言い方するし、どんだけ后妃様達は恐ろしいんだって思ってたけど、一番上に立つ皇后様がこれならそれほど怖い場所じゃないのではと思えた。
私が無闇に白瑞宮の外に出ないように、あえて脅している可能性すら出てきた。
「ほら、皇后も食べなさい。巫女殿の作ったものは美味いんだ」
「万灯祭のあのマントウも、とても美味しかったですものね」
ちょっと照れる。
皇后様は白いほうの大福を選びとって、まず半分だけ囓った。さすがに陛下みたいにひと口は無理だったみたいだ。まあ、私もひと口で食べられる大きさでは作ってないし。陛下の口が大きいだけだ。
「んんん――っ」
打ち粉で口を白くした皇后様が、誰が聞いても気に入ったとわかる声を出した。
「わたくしのは茘枝ですわ。茘枝はそのまま食べるものと思っておりましたが、団子や餡とも合うのですね」
茘枝が覗く断面を見つめて、皇后様はパクッと残り全てを口へと収めた。
「果汁と……んっんっ……もちもちが、堪りませんわ……んっ」
頬が落ちそうだと言わんばかりに、頬を手で押さえながらとろけた顔をする皇后様。うっとりとして咀嚼する皇后様の表情を見て、陛下は「どれが茘枝だ」と、外見で茘枝大福を当てようと必死になっていた。
果汁の多い果物は大福に合わなそうに思えるが、意外や意外しっかりと合う。むしろ、ねっとりと重い餡をさっぱりとした甘さの果汁が洗い流してくれ、後味すっきりとなのだ。大福にはお茶が必須だが(個人調べ)、この果物大福は大福のくせに後に余計なものは残さない。まさに飲める大福。
「あと、大福だけじゃ飽きるとおもって、ジュレフルーツポンチも作ってみました」
「じゅれ?」
「ふるぅつぽんち……ですの?」
二人は興味津々に、出した椀の中を覗いていた。
椀には、大福に使った団子の粉を使用して作った団子――というより白玉と、余った果物を一緒にシロップに入れたフルーツポンチ。
しかし、普通のフルーツポンチじゃない。
「んっ! 舌が痺れるな」
「た、確かにチクチクします。ですが……爽やかでクセになりますわ」
炭酸の梅ジュースを寒天で固めて、細かく砕いたものをシロップ代わりにしていた。ただの砂糖水のシロップよりも酸味があるおかげで、食べやすくなっている。大福も甘いから、こっちはちょっと甘さ控えめ。控えた分は炭酸の刺激をいれることで、満足感は変わらず。
特に夏の暑い日なんかは最高なんだよね、この炭酸ジュレ。まとまっているから掬いやすいし、シロップと違ってフルーツや白玉と一緒に絡めてしっかりと食べる事ができる。あと砕けた寒天がキラキラして、見た目がすっごく綺麗! 宝石の砂にフルーツとかが埋まってるみたいなんだ。目にも舌にも涼しい逸品。
二人とも、大福やフルーツポンチをキャッキャとしながら食べていた。
良かった。二人に笑顔が戻ってきて。
山盛りだった大福が半分になったくらいで、皇后様の手が止まった。そして、こちらを向くと頭を下げたのだ。
「巫女様、この度は助けてくださってありがとうございます。陛下より伺いました。わたくしのために神に祈ってくださったと」
「そんな頭を下げないでください、当たり前のことをしただけですから。それに、後宮に置いてもらってるし、こういった時しか役に立てませんから」
陛下も皇后様も首を横に振ってくれたけど、本当に何かこの国の役に立てることなんてないしなあ。
「そんなこと言わないでくれ、巫女殿。あなたがいてくれる、それだけで私達は安心して日々を過ごせているのだ」
「そう思ってもらえるのなら、嬉しいです」
必要とされているのなら、素直に嬉しかった。
「あの……そういえば、先ほど庭にいた白い犬はどちらに? なんだかはじめて会った気がしませんの」
「ああ、たぶん近くに……あ、いたいた」
広間の奥へと繋がる入り口から、哮くんが顔を覗かせていた。




