表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】白瑞宮のお料理番~異世界の神様と飯テロスローライフを満喫する~  作者: 巻村 螢
幕間:干からびる? それって最高じゃないですか!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/86

もどってきた平和な日々

 すぐに冬長官が捲っていた天蓋の薄布をおろし、全員、寝台を向いてその場で膝をつく。

 同時に、内側から衣擦れの音と、「わたくしは……」という掠れ声が聞こえてきた。

 間一髪だった。


「失礼いたします、(レン)皇后様。内侍省長官の冬雷宗でございます。お身体の加減はいかがでしょうか」

「冬、長官……。ええ……身体は重いけど……前のような苦しさは、ないわ」


 声は掠れたままだったが言葉ははっきりとしており、安心して良さそうだ。


「そこ、に……あなた以外、誰か……いるの?」

「私と、白瑞の巫女殿とその侍女がおります。皇后様に取り憑いていた魔を祓うため、陛下より遣わされました」


 掛かった薄布で薄らとした影しか見えなかったが、彼女が頭をこちらに向けたように見えた。


「巫女様が……そう……感謝申しあげます……」

「いえ。皇后様がご無事で何よりです」


 彼女の声は徐々に小さくなっていく。

 目覚めたばかりで、まだきついのだろう。精気をほとんど食べられていたわけだし。


「無事に魔は去りましたので、安心してお休みください。私共もこれで失礼いたします故」


 冬長官の言葉で、私達は立ち上がり部屋を出て行く。

 私は白ちゃんを抱き上げ、哮くんには、唇に人差し指を立て、静かに一緒に出るようにと目で促した。


「なに、か……白く眩しいのが……守って、くれたような……」


 背中で聞こえた皇后様の微かな呟き。


「……あの子……だったのかしら……」


 ふっ、と皇后様が微笑んだような気配があった。

 しかし、独り言だと皆はわかっていため、何も言わずに静かに退出していく。だけど、なぜか哮くんだけは足を止め、皇后様を振り返っていた。

 哮くんは、扉が閉まるまでずっと寝台の方を眺めていた。




        ◆




 それから数日。

 あれから皇后様は順調に回復されて、今ではすっかりと以前の様子を取り戻しているという話だった。

 それを聞いて、私含めた白瑞宮の面々は良かったとホッとして、再び安穏とした日々を送っていた。


「ほーら哮くん、良い匂いのする梅の枝だよ――――とってこーい!」

「わーい!」


 私が梅さんからもらった枝を力いっぱい投げると、哮くんは猛然と走っていって、地面に落ちる前に口でキャッチする。ファインプレーだ。哮くんは、枝を咥えて楽しそうに跳ねながら戻ってくる。


 今回力を貸してくれた哮くんだけど、天上には戻らず今でもこうして白瑞宮にいる。白ちゃんに比べて本質が動物寄りなのか、わりと犬と遊んでいるのと代わらない。毎日、無駄に広い白瑞宮内を駆け回っていた。


「よしよし、じゃあもう一投しようね」


 枝を受け取り、今度はさらに飛距離を伸ばそうと、胸にオー●ニショーヘーを抱き、思い切り振りかぶった――ところで。


「本当、お前はいつでも愉快だな」

「あ、冬長官。いらっしゃいませ」


 いつの間にかやって来ていた冬長官に、呆れ半分の眼でため息を吐かれた。もう半分の感情はたぶん、『芋め』だ。

 この枝を冬長官に投げてやろうかなー、哮くんに突進されたらいいのにーなんて考えていたら、彼の後ろに別の人影があることに気付いた。


「礼が遅くなった、巫女殿」

「やっとおあいできましたわ、白瑞の巫女様」

「えっ! 陛下に皇后様!」


 さすがに、哮くんとの枝投げはお開きとなった。





「そうそうこれだコレ! これがずっと食べたくてな」


 ドンと目の前に置かれた果物大福の山を、陛下は嬉しそうに眺め、ひょいっとひとつを手に取った。


「おや? 今回は大福の色が前回のと違うような……前より白いような気が……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ