犬をお供にするなら団子だよね!
白瑞宮のとある部屋。
できた果物大福を風呂敷に包み、私は白ちゃんの背中に結びつけた。
見た目は完全に旅に出る子牛。ちょっと可愛い。
「…………」
じっとりとした目で見られる。どうやら人間を救うために自ら動かなければならないことに、まだ釈然としない思いがあるのだろう。
「白ちゃんがお願いしなくていいから。私のところまで連れてきてくれるだけで良いの」
「……まあ、冬花の願い事ならやぶさかではないしのう。ただ、ワシは何も言わぬからな」
「うん、充分! この大福で上手く哮天犬様を釣ってきてね!」
「言い方よ……」
白ちゃんは、はぁと拗ねたため息を漏らしつつも、ぴょんと宙へと飛び上がる。風に薄衣が攫われたように、優雅に宙を上りながら白ちゃんは霞のように消えていった。
私は何食わぬ顔で広間に戻り、待っていた陛下に「お供えしてきました」と嘘を吐く。白ちゃんの存在は、冬長官と菜明以外にはまだ秘密である。元はこの白瑞宮は白ちゃんのための廟堂だし、「お供えする」という嘘は妥当だろう。
陛下も、納得したように頷く。
「聞いても良いか、巫女殿。どうして大福作りが、皇后を救うことに繋がるのだろうか?」
私は、昨日白ちゃんに借りた全知全能の知恵から、鬼車が何を苦手とするのかを知った。
「皇后様の身体に巣くっている鬼車という妖魔ですが、これは犬を非常に怖がっているんです」
鬼車についての知識を得た時、鬼車という妖魔の姿を知った。なんと、十個の頭を持つ怪鳥だった。しかも、そのうちのひとつは頭はかみちぎられ、今は九つになっている。その理由が、かつて犬に頭を食いちぎられたからとか。
それからは犬がいると逃げるようになったんだとか。
なんとも怪鳥のくせに人間くさいことだ。
「なので、犬の神様にお任せしようと思った次第なんです」
「なるほど。犬がきくということはわかった。だが、なぜ大福が必要なのだ?」
「まあ、お願いごとするためのお供え物といいますか。お団子って神饌ですから」
それに、古来より犬を仲間に引き入れるのなら団子と相場は決まっている。
「供え物か。それにしては随分と美味そうな団子だったな。巫女殿の作るものは、前回のふれんちマントウで美味いということは分かっているからな」
食べたかったのだろう。顎を撫でながら、陛下はペロッと唇を舐めていた。
「今回は神饌でしたので。また改めて作りますから」
神様相手だし、普通の団子よりも食いつきやすいように果物大福にしたのだ。
(ちゃんと釣ってきてよ~白ちゃん)
天に向かって密かに念を送る。
「それで、その犬神はなんという名なのだ」
「哮天犬様という瑞獣です」
しっかり、白澤図にも名前はあった。姿形については白い犬ということしか書かれてなかったけど、いったいどんな神様なんだろうか。もっとも身近な瑞獣が、ちょっと性格ひねくれた達観オジイだし気難しい神様だったらどうしよう。
――なんて、杞憂だった。




