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【書籍化】白瑞宮のお料理番~異世界の神様と飯テロスローライフを満喫する~  作者: 巻村 螢
幕間:干からびる? それって最高じゃないですか!

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ホカホカご飯と、うま味ぎっしりふんわり干物があれば充分!

 広間の卓を囲むのは、私に冬長官、菜明、白ちゃん、月兎。そして、魃様だ。

「いただきまーす!」と、全員の声が重なった(月兎だけは「スー!」だったけど)。

 卓に並んでいるのは、干物とほっかほかの白いご飯。


 それだけ。

 それだけなんだけど、干物にはこのシンプルさで充分なのだ。

 それに、たまり醤油と大根おろしもある。

 この大根だが、まさかの白瑞宮産。




 

 干物を焼いた後で、『しまった、大根おろしで食べたい!』と思いついたが、今から食膳処まで行って帰ってくると、せっかくの焼きたての干物が冷めてしまう。菜明が、自分が行ってきますからと言ったが、私は、皆一緒にできたての一番美味しいご飯を食べてほしいの。


 ということで、ダメ元で天井で寝ていた月兎に尋ねてみた。


『あの、月兎さん。もしかしてですよ。もしかして、大根とかある?』


 薬草畑だけど畑だし、何かの間違いがあって大根も育ててくれていないかな~、なんて思って聞いてみたんだけど。よく考えれば、薬の神様だから薬草を育ててるんであって、野菜なんか育てないよね。


『やっぱりないよね』

『アリュー』

『あるの!?』


 まさかの。よし、畑から一本拝借してこようと、裏庭へと行こうとしたら、月兎は『ココ』と変なことを言った。

 振り返って見れば、いつも月兎が背負っている小さな籠から、ズルッと原寸大の大根が出てきていた。


『え?』


 ズルズルと、籠の深さ以上に長い大根が引っこ抜かれ、ごろんと厨房の床に転がった。


『トーカ、ドーゾ』

『あ、ありがとう……ございます?』


 質量保存の法則だとか物理法則だとか、深く考えるのはやめた。神様だし……ね。


 

 ということで、手に入った大根をおろしにして添えてある。醤油はいつものたまり醤油。


「美味い! これが本当に妾が干からびさせたあの魚かえ!?」


 身に箸を入れると、むわっと白い湯気が立ち上り、見た目からは想像できないふんわりとした白い身が現れる。塩気があるからそのままでも美味しいけど、そこに大根おろしを乗っけて、醤油をちょこっと垂らす。


 これをパクッと食べた後、すぐにご飯をかき込む。

 噛みしめるほどに溢れてくる濃縮された魚のうま味、醤油の塩味、大根おろしのシャキシャキとした歯触りとサッパリとした風味。それぞれしっかりと立っている味が、ご飯を食べる事で見事に調和する。


 干物とご飯。

 たったこれだけだが、皆の箸は留まるところを知らず、右に左にと交互に動く。

 美味しい! やっぱり干物最高! うまっ! たまらない!


 凝った料理も素敵だけど、シンプルイズベスト。素材のうま味だけでも、こんなに食が進む。大根おろしや醤油をつける量を毎度変えたりして、味の変化を楽しむ。しかも、今回は干物に合うように、米も少し柔らかめに炊いている。もっちりとした米に塩味が絡みつく。


「はふっ、はふっ」


 熱々で食べていると身体も熱くなってくるが、それすらも心地好かった。


「こんなもの、妾が人間と暮らしていた時でも、食べたことはなかったぞ」


 魃様はキラキラした目で干物を見つめていた。


「魃様のおかげで、こんなに美味しいものを食べることができました。ありがとうございます」


 卓を見回せば、冬長官はいつも通り無言だが箸を休める暇なく動かし、菜明は、月兎と一緒に身をほぐして「美味しいですね」「ネー」と分け合って食べている。白ちゃんは干物を両手で掴んで、大胆に頭からむしゃむしゃと食べていた。もう二匹目だ。


 皆顔が美味しいと言っており、嬉しくなってくる。自分が作ったものを喜んでもらえるのは、何よりの誉れだ。

 それは魃様も同じだったようで、皆が食べる様子を優しい眼差しで見ていた。


「妾のこの力で、皆がこのような顔をしてくれるとは……この力も捨てたものではないな」

「じゃな」と、白ちゃんが二匹目も口に放り入れ、三匹目に手を伸ばしていた。





 あっという間に、干物は全て空になった。

 今は、食後のお口直しに、野菜チップスを食べている。


 皆、しっかりご飯と干物も食べたのに、ヒョイパクとヒョイパクと手が止まらない。わかる。こういうチップス系って、無意識で食べちゃうよね。テレビ見ながらポテ●チップスとか食べてると、いつの間にか空になってたりする。五分ももたない。


「また、魚釣りに行かなきゃ。その時はまた、魃様にお願いしても良いですか」

「ほう、どうやって妾を呼ぶつもりじゃ」


 南瓜のチップスをパキンと歯で折りながら、魃様は片口をつり上げた。


「それは……白ちゃんに頼んで迎えに行ってもらう……とか」

「白澤様を伝書鳩にするとは、中々の娘じゃな。だが、もっと簡単な方法があるだろう」

「もっと簡単?」


 席を立った魃様は、私のところまでやって来るといきなり椅子の横で跪いた。




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