1/2
序章
クーラーの切れた部屋は蒸し暑い。リモコンが遠くに転がっていて、手を伸ばしても届かず、かといって起き上がるのも面倒だった。窓を開けることだって同じだ。
その窓の向こうでは夏を告げる蝉がやかましく鳴いている。盛んな「生」を感じて、ベッドの上で顔をしかめた。
いつもなら通知表にずらりと並ぶはずの『5』が姿を消すであろうことも、無遅刻無欠席、無早退、ついでに言えば無欠課で守り抜いてきた『皆勤』も。
毎夜繰り返される悪夢と、飛び起きるときのあの嫌な感じ。背中や額に滲む脂汗さえも。
ぜんぶが全部、どうでもよかった。
だって私、やめるって決めたんだから。
初めて学校を無断欠席したその日、私は薄暗い部屋でパソコンの電源を入れた。