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複雑化した王子様と王女様は道化師だった

作者: アシカ

登場人物

オシリス:ファラオ家の現公爵・イシスの10年前の許嫁

イシス:ホルス家の令嬢・オシリスの10年前の許嫁

セティ:オシリスの世話役

オリオン:イシスの父

ラー:シリウス家の公爵

ヌート:シリウス家の令嬢・現許嫁

セト:イシスの世話役

トート:ゲブ家の侯爵


*オシリスとイシスの手紙

「お久しぶりです。公爵殿、ちょっと見ない間に立派になられた」と、小さい頃からのお世話役セティである。13歳くらいまでは面倒を見てくれた。

私は、久しぶりにお世話役のセティに本音を呟いた。

「公爵という仕事も楽ではない。現代は、複雑化して国民を欺く必要がある。諸外国へ出て留学してよくわかったよ。ビジネスでも直接稼ぐのではなく。いちどポイントで誘い、クレジットキャッシュと甘い蜜で欺き、顧客をつけて数%の未払い者の利子によってお金が膨れ上がる。昔はお金を貸し借りして簡単に増やすことができた。消費者たちも複雑化させ混乱させる必要があるのだ」

「昔は、そんなことをまったく考えていませんでしたな、公爵殿も一家の柱として立派になられた。私はあなたのおおせのままに仕えますとも」

「ごーん」12時の時計が城内に鳴り響く。

「公爵様、幼馴染の許嫁から手紙が届いております」と言い手紙を渡された。

綺麗に折り包まれ丹精を込め書かれたことが分かる。さっそく、内容を読んでみる。


親愛なるオシリスさま

お元気でしょうか?

春先になり、小さい頃ともに乗馬したあの時を懐かしく思います。

近頃は、人脈を継ぐために父オリオンの言うことを聞きさまざまなコミュニティーの場に足を運んでおります。

お酒はあまり好きではないのですが、それでも家族の一存をかけ日々を生きております。

父が「近年は情報がすぐ公になるため悪いことをすると臭いがつく。お前も清き尊く生きなさい」と、口をすっぱく言われます。

わたしたちの文通一つのやりとりでもまるでどこかで見張られているような気分です。

そんなときになにも考えず、山々を乗馬したあの頃を懐かく思います。

はやく、あなたに会える日を楽しみにしております。

イシスより


この時代に手書きで書くのは、おそらく彼女なりの思いやりだろう。

すぐに電子を使って送れるこの時代にあえて手紙なのは、電子の内容をどこの、誰が読んでいるかわからない。

あることないことを書かれ世間からの批判や罵倒の嵐になるのだ。

そうやって、揉め事を起こして自分たちの利益を出すようにビジネスも複雑化してしまった。総合的にみれば、足の引っ張りあいであるが目の前の利益に必死なのだ。

どれだけ人を欺くかが勝ち負けの采配というわけだ。騙された人が負けのデジタル資本主義ができあがっている。

それは、共産主義でも資本主義でも変わらない。

人類は、本当に愚かだ。

そのために戦争をして武器つくり、壊して他国に買わせる。わが一族ファラオ家の分家にあたるシリウス家はそうやってお金をつくり権力を得てきた。

そのために私も諸外国に赴き、人脈のパイプを結び複雑化させて欺け欺くための駆け引きをする。

自分は、いったいどうすればいいのか自分を見失っていた。

「ああ、あの頃のイシスの頃はよかった」と、振り返りイシスに手紙を返す。


親愛なるイシス様

私は諸外国に出て人脈を結びなんとか元気にやっています。

あなたの父オリオン様の会見をみました。おっしゃる通り近年は複雑化し情報がすぐに明るみにでるため一つずつの選択が重要になってきています。

あなたも知っての通り権力図が大きく変わろうとしているのです。

汚いものは足がつくのが早い。

私も清き尊く生きるよう努めております。

それでも、人間の心は誠に弱いものです。

自分の中に道化師がいることを感じます。

私の中の道化師により、私は落馬しそうなのです。

私のなかのイシスは、いまでもなんて美しい女神なのでしょう。

ともに乗馬したころが懐かしい。何も考えず山々の原っぱを駆け抜ければどれだけ幸せなことでしょう。

そのまま夜空に向かって飛んでいき星になりたいものです。

しかし、いまはお互いの立場があることでしょう。

安直に会ってしまうと世間が騒ぎ立てあることないことで騒ぎたてることでしょう。

わたしもあなたに会いたく思っております。

女神さまがいるのであれば、7月7日と限らずどうかわたしたちを永遠にあの美しき天の川で泳げますよう祈っております。

オシリスより


書いた文章を読み終え「ふー」っとため息をつく。

机の上のペンはいまは羽のあるインクをつけた筆から、ボールペンになり、ボールペンすらもなくなり電子になりかけていた。

筆箱には、ボールペンのほかにブラックライトとブラックライトペンがある。

10年前にイシスと作った思い出の筆箱だ。

自分で書いた文章は思いが乗る。

一つずつの字の全体をみて、流れ出るポエムに頬に水が流れていた。

道化師はどこかへ行っていた。

「セティ、セティ」と、呼び手紙を預けた。

そして「イシスと会うことはできないのか?」と相談してみた。

「公爵殿、時期が時期であります。もし、お会いした場合ここぞとばかりあなたの地位を引きずり落とされます。お会いすることは難しいと思います」と言った。

「小さい頃は地位や名誉に関係なく会うことができた。時代が違うだけで許嫁であったイシスとあうことができないとは...」

「偽アカウントで会議をすることはできないのか?」と問いかけると、「いまはすべてモニタリングされています。自分たちの自由のために作ったつもりのAIが自分たちの生活を苦しめる状態になっております」と、セティが答え念押しをしてきた。

「あなたの顔とイシスの顔とわかればAIにより直ちに情報は漏れるでしょう。

なんなら、この会話すらもいつどこで見張られているかわからない。便利のために作り出されたAIは、各国の利権のために複雑化したAIに成り果てているのです。もはや人類では把握できないほどの人間のエゴの利権によって我物顔になっているのです。我が一族も変化を余儀なくされています。公爵殿の行動で今後の命運がかかっているのですぞ」と、セティは言った。

「愛しい人に会うこともモニタニングされるとは、全く人間はエロスがあるから子供がうまれるというのに」と、投げゼリフを言った。

「仕方有りません。イシス様とは敵対する利権になってしまったのですから、彼らのAIは、アジアをマーケットとする共産圏。我々は西洋と欧米を中心とするマーケット。もし、あなたさまがそこで手を結んでしまったら、どれだけの人に命が狙われるかおわかりでしょう。証拠を残さず殺すこともいまでは簡単です。いまは世間を味方につけて行動するべきときです」

「AIが進んでも人の心は成長しないものだな」「これこれ、世間の悪口を言うものでないですよ。彼らも少しずつですが何が起きているか理解できるようにもなっている。わたしたちも争いごとがなく生きていければそれが良いのです。しかし、人類はエゴイズムそのもの。領土権の争いがなくなったことがない。人類が生まれてから永遠と続いているのですからな。そのこともお忘れなく」いつまでも私の小さい頃の世話役なため説教っぽい口調で話しつつ部屋を出ていった。


ああ、イシス。私はいつに成ったらあなたに会えるのか窓辺から庭先をみて雲の隙間から沈んでいく太陽を眺めていた。

巣に帰るカラスは、かなり上空を飛んでいる。

明日は、雨のようだ。



*オシリスと道化師

「お前は何も分かっていない。逢いたければ遭えば良いのだ。何を隠すことが有る公にして遭えば良いのだ。隠すから恥になる。アダムとイブは恥じたから服をきたのだ。裸の王様になれば世間も咎めない」

「ひっひっひ、何を言っているのだ。恥の世界こそ人間の世界。そのまま自分の立ち位置を確保しろ。なんなら、西洋一の美女ヌートと結婚すればいいのだ。すれば、西洋と欧米側の利権はアジアに負けることもない。世界を支配できるぞ。ひっひっひ」


「はっ」とし、ベットから上半身だけ起き上がり目が覚めた。

「ざーーー」と雨が降っていた。

それも、かなり激しめで風も吹いている。嵐のようだ。

シーツには大量の汗の跡がついていた。

今日は、スイスのヴェネツィアで会議が行われる。夢に出てきた美女ヌートのシリウス家も参加する。

午前中にシリウス家とファラオ家の商談をし、午後の世界統一会議でカリキュラムの進捗と利権の割り振りがされる。

具体的にはAIによる情報統制の方法である。

一般市民に閲覧できる範囲を決めているのだ。

そして、利権の争いの領土権をきめる。有利になるように強調するのだ。

アジアの共産圏がかなりの力をつけている。つまり、イシスの父オリオンが勢力をのばしているのだ。資本の仕送りを共産圏と分離して破産も目論んでいる。

さらに、科学技術力の進捗状況を発表する。

原子力やAIによるハッカーの技術者、資本での最新の目標を強調する。

・月から水を取ること

・発展した宇宙人からの技術を盗み具合

・領土を落とすための詰め方

・デジタル通貨による経済の循環

・国民たちの屈服度や労働力

ありとあらゆる手段が用意され自分たちが有利にたつよう進めるのだ。

シリウス家とファラオ家が手を結べば、西洋でもドローン技術とAIが飛躍的に進む。

ファラオ家は、武器や車、スマホのプログラムに強く、シリウス家はドローン技術に強い。

そもそも、シリウス家とファラオ家は1200年前までは同じ家系だった。いまは少し仲が絶たれているためそこで、午前中に会談することになっている。

シリウス家が分家であるため、手を差し伸べてきた。

私は自分の体に近い位置で握手し、メディア用の写真を撮る。明日の記事になっているだろう。「お久しぶりです。若公爵様」とラーが言ってきた。

それに続いて「娘のヌートです。午後からの世界統一会議前の1時間に食事を用意しています。どうぞごゆっくり堪能してください」と、言ってきた。

「ふん、老害たぬきめ」と心で思いつつ「これは、これはお久しぶりです。ラー殿。近頃は諸外国を飛び回っているためなかなか時間を設けれず、申し訳なかった。こうしてお会いでき大変嬉しく思います。彼女の麗しい雰囲気が漂い美しくなりましたね。時間も限られているので、早速会議に入りましょう」と、心の本音とは裏腹のことを言う。

「ドローン技術は、どこまで進んでいるのですか?」

「共同の技術を開示していただき、いまは天候を読み取り自動走行が可能になりました。当然保守のためにも攻めこむためにも使えます」

「そのための生産過程は?」

「こちらの資料があるように、3Dプリンターにより1年間で100万台は可能です」

「工場とは資金が整い次第可能にしてあります」

「的中率はどれくらいだ。向こうはかなりの精度でできている60%で的中だ。我々は40%。これでは、諸外国はアジアのものを買うぞ。トルコ産(東洋マーケット)のドローンを購入することになる」

「精度の方はどうなっている?天候を読み取るプログラムが日本から中国に流れています。そのために、こちらは後手、後手にまわっています」

「解決方法はないのか?AIは、なんて言っている?日本を味方につけろといっています。わたしたちの考えではシリウス家とファラオ家が、手を結べばますます発展していくと考えています。また、資本を建てば共産圏は無理やり行ってできた国。国内から破綻するでしょう。奴らを叩く絶好のチャンスです。ファラオ家とシリウス家が手を結べば資金的に全体の0.2割くらいに到達します。いまの分裂した家系では統一会議でも聞く耳をもってもらえないでしょう」

「手を結んだところで、東洋に有利になるのか?いつまでも古臭い考え方に囚わていないか?」

「若公爵は、分かっておられない。人の心はいまも資本ですぞ。力の形こそ資本。一度ぶち壊して新たに構築するような段階です。0.2割を運用して我々の家系をもっと繁栄させましょうぞ」と、ラーは言ってきた。

そのために娘とこのあと食事をセッティングしたのだろう。

胸糞悪くなってくる。

ああ、イシスよ。お前はどうして東洋側に行ってしまったのだ。シリウス家だったらいまから楽しい食事になるのに。

ヌートの操り人形のような顔が頭に浮かぶ。

ラーにより完全に洗脳され教育されている。

「公爵に使え」と、聞くように調教されている。

いつまでたってもシリウス家は昔からやり方をしているようだ。

噂では、若い娘の生け血の儀式を行って資本の提供すらもしているらしい。

人身売買も当たり前にしているのだ。

かつてより表の顔がファラオ家で裏の顔がシリウス家なのだ。

シリウス家の裏の顔で資本を賄ってきた。

現代では、人身売買の情報が漏れ出し東洋により叩かれだしている。

情報は完全にこちらにとって、向かい風だ。

なぜなら、近年の悪事を洗いざらいだされるからだ。

戦争の勝者をよく思わない人たちが煽っているのだ。

東洋やアフリカ、南米の植民地を現代になって炙り出しているのだ。

東洋と西洋での戦争は、石油利権と炭鉱利権の戦いだった。

見事に西洋の石油利権が勝ったのだ。

その理由は、炭鉱よりも石油のほうがまだマシだったからだろう。

当時は、炭鉱より石油のほうが地球の破壊が緩やかだったのだろう。

炭鉱だったらもっと速くに地球が破壊されて砂漠化していたのだろう。

しかし、いつまでもその勝利は続かない。

あらたに、太陽光利権や水素利権、ハイブリット利権などに取って代わろうとしている。

そこで、石油を跳ね上げていまは車のガソリンを跳ね上げている。

石油利権から電気利権にしたいわけだ。

電気利権は結局、バイオマスや太陽光、水車である。

すこしだけ、自然にマシな利権だ。

いつまで経っても、フリーエネルギーなどは伏せて自分たちが支配・監視できるようにするためマシな選択をする。人の一人ずつを思って統治しようとするものは誰よりも速く命を落とす。

そのことをどこの一族の人たちも知っている。そして、世間を味方につけ、世間を敵にしたものも滅びる。

とても複雑化した利権争いに突入している。

それを恐れて、いつまでたってもAIの答えよりも自分たちの有利なことだけを考えるわけだ。AIは、「西洋と東洋が協力して答えをみつけよ」と言っている。

そのことは、メディアでは伏せている。

おれもいつかは、あの古狸になっているのだろう。

「オシリス公爵殿。聞いておりますか?」

「なんだった?」

「我々の家系を繁栄させましょうぞ。一ヶ月前に言った答えをお聞かせくださいませ。もし、断ることがあるのであれば分かっておりますな。掟があるのですからな」

「その件はヌートに直接するよ。とりあえず今回の会議だ。お互いの資本にして0.2割。合同会社にして進める方向でいきましょう」

「その場合はメディアの都合上、結納はしていただきますぞ」

「ラー殿、くどいぞ。直接、ヌートと話して決める」

「おお、それなら時間は早いですがそれならヌートをいまから呼びましょう」

と、使い人に合図しヌートが入ってきた。

「こんにちは。親愛なるオシリス様。立派になられて」と言い、手を差し出してきた。

口をつけて挨拶するのが習わしなのだ。

仕方なく、手に口をつけ挨拶をする。

相変わらず目が虚ろで洗脳されている。

人を人として思わない所業で虫唾が走る。

「親愛なるヌートよ。また綺麗になられましたな」というと、少しだけ頬を赤くさせる。

人の心を弄び、理想の王子様のように教えこんでいるのだろう。

「あなたのためなら何だってわたくしはなりますとも」と、決められたような文句が返ってくる。

「私をお好きなようにしてくださいませ」と結納するように勧めてくる。

「私は、席についてまずはお食事しましょう」と回答を逸らす。

私の言うことを聞き席につく。

すると、ラーが「私は30分、席を外しますぞ。二人の時間を楽しんで、よい返事をお待ちしておりますよ。ほっほほ」といって、断ったときはおそらく何かしらの方法を企てているのだろう。

いつまでもシリウス家は影から成し遂げるのだ。最新技術でもそのやり方は、いつまでも古いのだ。

そんなことを考えている間にラーは部屋を出ていった。

「ヌート、そなたの一日はどんなものだい?」

「朝から担当の教師がついて、話し方などを学んでいます。花や音楽なども少し行い社交の場へ行き、自分の動画を撮って立ち振舞を日々繰り返し学んでいます」

ふぅ、なんて退屈な毎日だろうか。

自分の意志などまったくなくお人形さんだ。

「オシリスさんは、どのようにお過ごしなのでしょうか?」決まり文句のようなオウムの返答がくる。

「わたしも近頃はヌートと同じだよ。世界を飛び回り社交の場に行き人脈を拡げている。そのなかで、自分のできる範囲でできることを探しているよ」

「自分のできることですか?」と、ヌートは思いもよらないことのように聞き返してきた。

「そうだ。たしかに自分の立ち位置はあくまでオシリス公爵だ。しかし、その立ち位置のなかでできることもあるはずだ」

「そうなんですね。なんとも立派になられましたね。私はあなたさまにどこまでもついていきますよ」と、結納するためにすべて仕込まれている。

「ヌートは、心のそこから結ばれたい人はいないのか?」と、聞くと「私は貴方様と結婚するよう生まれ育ってきました。あなただけが私の結ばれる人です」

古狸の顔が頭をよぎる。

自分でも分かっている。もし、これを断れば私は命を落とし影武者とヌートが結納されだろう。

良くて牢獄に入って調教され古狸のおもちゃになるだろう。

背筋がゾクゾクっとした。

道化師がヌートと私の背中についていた。

シリウス家とファラオ家は、シリウス家が分家だが、いまは資本の関係上シリウス家が実際の権力を握っている。

しかし、ファラオ家にはかつてより伝わる奥義があるとされている。

それは、800年に一度もしくはある時期が来たときにファラオ家に宿るとされている。その力をシリウス家は恐れ信じ、有利に勧めたいのだ。

また「大いなる力には、大いなる責任が伴う」と、語られている。

その時だった。「ズッドン」と庭になる一番高い木に雷が走った。

そう、今日は嵐なのだ。

ヌートの道化師と私の道化師のどちらか分からないが確かに言った。

「二人は結ばれた」と。


*イシスのお城

「お父様、お父様」とイシスは言った。

「どうした?イシス?」

「実は、個人的にとても打ち解けたいことがあってお時間を設けれないでしょうか?」

「私でなければいけないのか?」

「ええ、とっても込み入ったお話なのです」

「まずは、相談役のセトにお話しろ。それから聞く。私は忙しいんだ。ようやく、我が一族の意見を聞いてもらえ有利にことが進んでいる。それでもやることはいっぱいなのだ。なりふり構わず走ってきたので、右往左往して世間を無理やり丸め込む必要があるのだ。間違いなく、資産凍結を狙ってくる。そのために技術開発と人脈のパイプを結ぶ必要があるのだ。わかってくれイシス」と、言って慌ただしく今日も朝から出ていった。

父オリオンは、自分の抱える問題で周りを見る余裕などなかった。

アジアの権力が増しているが、不満も募っている。

そして、日本をいかに有利に自分のものにするかを最優先で考えている。

自国の民は、信用ならない。

いつどこで裏切るか分からないうえに、自分の命を常に狙ってくる。

とても自己中な国民性だと住んでいるからはっきり分かるのだ。

共産圏は、より強く監視されており情報を均一化して都合の良くないことを隠す。

そして、自分の都合のいい情報しか流さない。

そのことを国民も知っている。

監視に対して誰もが憤りを抱えて眼の前の損得勘定ですべてを考える。

お金持ちは、膨大な資産家だが貧乏は生きるのがやっとのスラム街だ。

まるで、自分とそのちょっとした周り以外は虫けらと思って生きているのだ。

人はすぐに増え、命などなんとも思っていない。

誰もが、自分の命に執着している。

イシスは、そのことを理解していた。

ああ、オシリス。私はどうすればいいのでしょう。

このままこの一族にいてもAI利権ばかりでまったくもって先行きが見えない。

どうせ、また新たな権力者が現れて殺されないかビクビクして生きるだけ。

あの頃が懐かしい。

そう、私は英才教育を受けるためスパイとしてイギリスの名門校へ通うことになった。

そこで出会ったのが何を隠そうオシリス。

スパイとあなたは分かっていて敵対する一族と知っていながら、私を何の疑いもなく受け入れてくれた。

「あなたが何者であろうと、あなたはあなたです」と、乗馬して優しく声をかけてくれた。

私は家族すら信用できないのに、あなただけは信じられる。その声でどれだけ救われただろうか。

いまでもはっきりと覚えている。

父オシリスは「清いお前なら、ファラオ家と手を結べる。スパイが成功する」と、最初は述べていた。

ホルス家もいよいよ世界統一会議に呼ばれるまでになりあなたと逢える機会があるかもしれない。

けど、いまの両者の状態では、西洋側の権力者が黙っておらず私は殺される。。

父は、ゲブ家のトートと結婚させるつもりです。

ああ、トートがあなたであったらどれだけ良いことでしょう。

そんなふうに考えていると、父が「トートとお前を会議の前に結婚させる。すれば、さらに権力は拡大しより有利に世界統一会議に持ち込める」と、言い出しました。

こうなったときの父を引き止める術を私はしりません。

「はい。わかりました」と、返事をした。

女は、権力への道具にしか思っていないのでしょう。

ここに最後の手紙を書き綴ります。


オシリス殿

私は、ゲブ家であるトートと結婚することになりました。

非常に哀しく思っております。

なぜなら、私の心はいまでもオシリスあなただけを思っているからです。

しかし、父に逆らえば報いを受けます。

勇気のない私をどうぞお許しください。

貴方ならきっとわかってくれることでしょう。

少しだけいいアイデアが生まれました。

あなたの子を私は生むのです。

我が一族に対する正当な仕返しにもなるでしょう。

それは、世界統一会議では夜に遊女と一晩眠れるように仮面をして逢えます。

権力を維持している人たちは「最高の娯楽」と思っているのでしょう。

そこで、私と落ち合っていただけないでしょうか。

仮面を被って参加できるので、私の見張り役にそのことを打ち解け、パーティでは身代わり役になっていただきます。

すれば、あなたの子を私は産めるかもしれません。

このふざけた利権社会を終わらせ西と東を統一する子供を生むわけです。

どうでしょう?

19時に仮面を被ってあなたに近づきます。

どうか幸運を祈り無事に会議がお開きになれば幸いです。

イシスより


綴って誰かに読まれないように指紋をつけた。

父の耳に入る可能性もあった。そのために行間を開けてブラックライトで書いた。

これは、お互いに10年前に連絡する手当として作っておいた。

彼にしかわからないようにできる。

わざわざそこまでの注意を払うものはいなくなっているが、それ以上に目の前が問題山積みで構っていられない。

AIばかりの監視社会に目が言っているのだ。

いまごろ手紙を重要視する人が少ない。

あるいみの抜け目であるのだ。


彼から手紙が返ってきた。


イシス様

この手紙のことをシリウス家にバレてしまった。

「おまえは、スパイに手を貸すのか」と案の定監視が入った。

もちろんこの手紙も見られているがそれは了承を得ている。

つまり、これで最後になる。

この人脈から会議を開けないか、打算もされたが、おそらくここまで拗れた利権関係で過去数百年上手くいった試しがない。手打ちもできないのだ。

結納をすることと引き換えに手紙を書かせてもらった。

そのため残念ながらこれが最後だ。

いままでありがとう。

わたしは、ヌートと結ばれる。。

さようなら。

オシリスより


手紙に「ブラックライト」をあてる。お互いが作った特殊性で、そのライトしか反応しないのだ。

波長を組み込んだ超特殊技術だ。

すると、浮かび上がってきた。


19時、君をまっている。

私も無理やり結納してしまった。

どうしようもなかったのだ。どうか許して欲しい。

そして、時間ギリギリの手紙になったことを許して欲しい。

最後の最後まで、君と結ばれる手段を探ったのだがなかったようだ。

どうか、君の幸福を祈っている。

そして、夜を最高の時間にしよう。


はっきりと行間を使って書いてあった。

ああ、念願のあの人に10年ぶりに逢える。

そうやって思うと、とても不思議な気持ちに襲われた。


*会議

会議の内容が馬鹿らしくなってきた。

どいつもこいつも、自分の立ち位置ばかりで国民のことや地球のことなどまったく興味がないようだった。

あったとしてもあくまで自分たちの立ち位置を担保してどうやって地球の天変地異を乗り越えるか、その意見だけだった。


例えばこんな感じだ。

田舎に自分たちの利権の村をつくり、そこでAIに連結させ監視する。

一人の信者を村ごとにつけ、そいつが我々の手先であれば、世界の村は我々の利権そのものになり、世界中の村は我々のものだ。

デジタル監視の新たな村ができるわけだ。

「これは、プランEとして実行しよう」とアメン公爵が請け負うことになった。

プランAはあくまで、都心部に地下都市監視社会を創ることだ。

まずは、日本で実験してやってみよう。日本はメディアの言うことを素直に聞く。

実験国として最適なのだ。

理想の都市「ウーブンシティ」と言って、地球温暖に適した最先端の都市造りと公表すれば世間も納得するだろう。

もし、反感をかい実現できなさそうならプランBだ。

プランBは、戦争で追い込み無理やり進める。

そのための資産だったらいくらでもやろう。

こんな感じで、起き得る可能性を出しては進める。

お金は国民の税で複雑化させ二重で徴収する。

「他国から被害が出る可能性が高い。軍事費が必要だ」と報道すれば、自分たちを守ってくれるのだから仕方ないと受け入れるわけだ。

しかし、流石にやりすぎればデモが起きる。

デモを起こして、戦争道具を売りつける。

なんともプランニングされた昔ながらのやり方だ。

とても退屈で仕方がなかった。

わたしの頭の中では、それよりもこの利権のくだらない争いが終わる爆発を産み新たな風を吹かせることに想像を膨らませていた。


そしてその時がきたのだ。


*密会

会議も終わりパーティーがはじまった。

おのおのメンツの方向性がきまった。

結果をあげてこなかったものは、次の会議の参加権を剥奪された。

数百年しがみつく我が一族はこんかいも無事参加権を確保でき、ファラオ家とシリウス家が800年ぶりに結ばれることにさらなる期待を寄せられていた。

支配管理し、ドローン技術によるサポートが割り当てられた。

これはプランEでもプランAでも必要で、輸送手段として用いる。

それをぶっ壊して、また新たに作るための指向性エネルギー。宇宙から打ち込むレーザーのプログラムも進める許可がおりた。

自分でドローンをつくり、自分で指向性エネルギーで壊して打ち込み、またドローンを創る。そうやって、ドローン技術を高めお金儲けもできる。一石二鳥なのだ。

こうすることで利益が無限に拡がるわけだ。

そんな期待を寄せられ周りには多くの著名人が集まってきた。

ぜひ、ヌート令嬢との結婚式には参加したい。

「いつ執り行うのかね?」と、こんな感じにだ。

16時からパーティが始まり18時30分になると、ぼちぼち人は引いていく。

ストレスを発散するためハイにしてイチャイチャしだす老害古狸だ。

欲の塊で、自分だけは可愛いようだ。

反吐が出る。

しかし、わたしも今回ばかりはいつもと違う。ハイになっていることを自覚している。

そして、19時ぴったりに仮面を被った女性がやってきた。

ああ、きっと彼女だ。

立ち振る舞いで分かる。いくら、仮面で周りから分からなくても間違いない。

カーニバルが始まった。

二人だけの部屋に移り、仮面をとる。

すると、そこには彼女がいた。

「おお、イシス。なんであなたは道化師なの?」

「ああ、オシリス。いつからあなたも道化師なの?」と、冗談まじりの挨拶をしてお互い向き合ってキスをした。


「あっ」と言う間に1時間が過ぎてしまった。

お互い、これ以上の時間は危険とふんで仮面を被りパーティに戻ろうとした。

身代わりさんの立場もある。

すると「ゴンゴン、ゴンゴン」とドアが無理やり開けられた。

お互い驚きその状況を察した。

だれかが、この繋がりを壊したいのだろう。

人も壊してはまた創り循環させる。

ドローンの道具と大して変わらないのだろう。

この事を予期していたので、手紙にはもう一つ書き記していた。


新たな技術として、遠隔電子操作がある。

ある程度の位置だったら電子レンジの卵のように人間を爆発できる。

なんとも恐ろしい兵器だ。

わたしの意思で操作可能で「アトム」と言い了承をするだけだ。

もしものときは、お互いを受け入れよう。


上記のように綴っていた。


彼女も、そのことを察っしたらしく。

イシスと目を合わせ最後に二人で「アトム」と言った。


*道化師の笑い

道化師は、笑っていた。

ふっふっふ。あなたたちは本当に手の平で踊るように転がっていく。

複雑化したシステムでも、生と死はなんにも変わらない。

なぜなら、シンプルなことがこの世界だからさ。

おまえらは、AIによって答えを見つけることができた。

武器をつくるのをもっと平和的なものにすればよかったのだ。

相手の心を偶像崇拝するオンオフの洗脳道具の開発やAIによる支配者まるごとモラル点数・評価指標にしたりすればこんな踊らずに済んだのだ。

ほっほっほ。

人間は、本当に面白い。自分たちだけは特別で価値のあるように勘違いをしている。

ほんの一部の道具に成っていることにすら気がつかない。

しかし、この二人は幸せだったのかもしれない。

こうして最後二人で死ねたのだから。ふっふっふ。


*終焉

シリウス家は、怒って「東洋の魔女のせいだ」とした。

反対に、ホルス家も威圧して「西洋の陰謀のマーラ」とした。

ドローンと指向性エネルギーであちこちが焼かれ、食料危機が起き餓死者が増え、疫病として免疫剤といいつつワクチンでお金を設け、金融を壊しては創りなおした。

プラン「A」なのか「D」なのか、いまではだれも知らない。地球が悲鳴を上げたのだから。プロン「?」に、水の都デジタル管理があったが、海に浸ってしまえば生存率が下がり淘汰された。

人類は、当然の報いを受けた。

一部の人間は、標高の高いところでノアの方舟を作りました。また、あるものによると、宇宙船の方舟に乗る人間もいたという。

結局「魔女やマーラのプランは成立しなかった」という。


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