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俺が幸せになれる訳なんて  作者: みみみみみかん
3/3

Episode3

偽カップル誕生してから、初めての出勤の日を迎えた話です。




月曜日、今日も寝癖をしっかり直せたか自信が無いまま、いつも通り通勤ラッシュの電車に乗り込む。


ただいつもと違うことといえば、

いつもより一本早い電車に乗り、駅で偽物の恋人である蒲原と待ち合わせをして出社するということだ。


そこまでする必要あんのか·····?


土曜日解散してからというもの、メッセージのやり取りがずっと続いていた。

まるで、本物の恋人同士じゃないか。、


駅の改札前には、また早めに着いたであろう蒲原が待っていた。周りに女性が明らかにチラチラあいつを見ている。


「お待たせ、おはよ」

「おうおはよう」

「お前完璧な立ち姿だったよ」

「何それ?お前はまた完璧な寝癖ついてるぞ?」

「うわやっぱりな!見ないで」

「今日は直さないでいてくれ、可愛いから」

「馬鹿言うなよ」


頭をクシャッとされて、クシャッとした笑顔を向けられて、、、

こんなのに落ちない女子なんているのか?

(26歳、成人男性の感想です)





今日、ハグすんのかな·····?






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






「おー蒲原高山早いじゃん!おはよ」

「ほんとだおはよ、あ、金曜日ごめんな」


いつもの時間に、望月と川崎が出社してくる。2人は営業部のため、デスクが遠いが俺たちを見つけて寄ってきた。


あっそういえば


「2人ともおはよ、川崎は奥さんたち大丈夫??」

「もう2人ともピンピンしてるよ。迷惑かけたな」

「おはよ、いや、俺と高山は全然大丈夫だけど、同じ営業部の望月の方が、、、」

「っとだよ!しわ寄せがしっかり来たんだからな〜」

「ああごめんごめん、なんか奢るわ」

「約束だぞ!」


川崎は既婚者ということもあって、どう見ても俺たち3人よりしっかり者オーラを醸し出している。

タイプが違うかと思いきや、酔ってくると一発ギャグ連発するような面白いやつだ。


「んじゃあ2人ともまたお昼社食で会おーなー」



こうして一日が始まった。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




ほんとだ。

着目して見てると、同じ広報部の佐々木さんは、異常に蒲原にべったりだ。


「蒲原さん〜パソコンの操作について教えて欲しい事があるんですけどお〜」

「そういうのは自分で調べて、調べても分からなかったら聞いて」


あいつは割と露骨に嫌な顔しててちょっと笑える。

じっと見てたら、蒲原と目が合って、泣いてるようなジェスチャーをしてきて、俺も同じジェスチャーで返す。


なんだかこういうのいいな。社内恋愛って感じ。


「ふあ〜、、ねむ」


眠気覚ましのコーヒー(砂糖3本とミルクふたつ)を飲もうと、給湯室に来た。誰もいない。


えーと、コーヒーと、砂糖とミルクはどこだっけ·····



「お疲れ」



バッと振り返ると、ゼロ距離レベルのところに蒲原が立っていた。近っっ!!



「おおおまえいつからいたんだよ?!」

「何気づかなかったの?今来たばっかだけど。お前のあとつけてきた」

「ストーカーこわ」

「忙しくて全然話せなかったから」

「やっと落ち着いたな、、もうすぐ昼休憩か」

「落ち着いたから、今がチャンスじゃない?」

「何が??」

「ハグチャンス」

「待ってここで?割と見えるよ??」

「近くに来なきゃギリ見えない、絶好にリアルな場所じゃん」

「待ってまだ心の準備が·····」

「あはは大袈裟だな、いいから、ハグしよ」



蒲原の意外にしっかりした腕と胸板に優しく挟まれる。

蒲原の香水じゃないって言い張るこの香りは、そうか、柔軟剤だな??



てか、

うわうわうわうわうわうわ待って、これは刺激的すぎる。




「蒲原っもういいだろっっ離して」

「待って、高山、シャンプーのいい匂いする、もっと嗅がせて」

「やめろって」


割と本気で引き剥がしたくて力出してるのに、

蒲原の力に勝てず、されるがままになって匂いを嗅がれてる。

いやどう考えてもアラサーの頭皮はやばいだろ。


2分くらいすんすんすんすんされて、やっと身体が離れた。


「ははは高山、顔真っ赤。男とのハグそんなに緊張した?」

「からかうなよ、そりゃちょっとは緊張するよ」

「ははははっなんか嬉しいわ」

「なにがだよ」


ちょっとなんてもんじゃない、かなり緊張した。

この時間が続けばいいのにって、頭のどこかで思っている俺もいたことが、嫌だった。



「うわもうこんな時間、戻るぞ」

「えっ俺コーヒー飲めてな、、、」

「いいから!」



コーヒーなんかより断然目が覚めたから、まあいっか·····



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



ハグ以降も、蒲原はちょいちょい際どい攻撃をお見舞してきた。

あいにく、佐々木さんは気づいていないようでそれ以降も蒲原にべったりだった。



「高山ー帰ろうぜ」

「ん!あのふたりは?」

「今日は営業周りしてそのまま帰宅だって」

「ああなるほどね、あーでも俺、この企画書だけ仕上げてから帰りたいから、先帰って」

「なんの企画書?」

「Web広告動画!明日の会議で出さなきゃいけないんだわ。ほぼ出来てるけど」

「なら俺も手伝うわ」

「え?いいよ、遅くなるかもしれないし」

「俺は一緒に帰りたいのよ、お前と」

「そこまでカップルごっこ頑張る必要ある?」

「ぜんぜん頑張ってなんてないよ」

「そう、それならいいけど、、ありがと」



なんなんだ、一緒に帰りたいなんて、、、

自惚れるな、俺。俺を好きってことは絶対ありえないんだから。



「じゃあ私も帰るから、最後よろしくね」

「「 お疲れ様です 」」



俺たち以外の全員が帰ってしまった。

2人きりのオフィスはの静けさが、妙に緊張させてくる。




「企画書、もうこれで充分じゃない?」

「そうかな?ありがと、蒲原のおかげで早く終わったわ。なんか飲み物でも奢らせてよ」

「いーよ全然そんなん」

「いや、なんかお礼させてよ」

「んじゃあ、、、一個お願い」

「なに?」

「今ハグさせて」

「え、今?!する必要ないだろ?」


どういうこと。もう絶対に誰にも見られない。だからただただハグするだけの時間。偽物カップルの俺たちになんの得が。


「俺、お昼にお前とハグしたあと、なんかすげえ元気出たというか、癒されたというか、、、とにかくもっかいさせて?お礼だと思って」

「えっ?!んまあいいけど、、」



俺チョロすぎかよ。



「はは、なんで高山立ちあがんの」

「え?だって立ってするんだろ?」

「はい座って」


再び座ると、正面からぎゅっと包み込まれた。

椅子同士がぶつかって近づけない分、半分くらい俺の椅子に身体を預けて密着してくる。


俺のムスコ、気を確かに。負けるな。


「蒲原、近いって」

「んー、、やっぱ落ち着く」

「重いって」

「んー?耐えてくれ」


あせあせしてる俺とは裏腹に、目を閉じてずっしりと動こうとしない蒲原。


「やっぱりお前、細すぎ」

「ひぁっ」


不意に、腰元を撫でられる。

変な声出たし、俺のムスコ、はい終了。


「あは、、そんな可愛い声出すなよ」

「くすぐったかっただけ!」


どうしよう、勃起している事がバレたらもうおしまいだ。

でも、、こいつは離してくれる気配もなく、ガンガンに身体を密着させてこようとする。




「え?高山お前もしかして·····」




必死で蒲原の身体を引き離して、驚きのスピードで立ち上がり、驚きのスピードでコートを着込む。


「もういい加減帰ろ!!」

「え、ああ、、ごめん帰ろ」








·····終わった。俺の人生おしまいだ。

ご覧いただきありがとうございました!

完全に人生が終わったと思っている幸汰はどうなるんでしょうか、、、、

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