新大陸で生きる方法 1-2
まずはログハウスの近くの地理を把握するために涼とスラミの二人は獣道を通りながら木々の間を進んでいる。
進みながら涼はスマートフォンに追加されていたマップアプリを確認していた。
アプリは地点の登録が出来たので帰り道に迷わないようにログハウスの位置を先に登録しておき、まだ行ったことのない地点については表示されていないがスマートフォンを持ち歩けば自動的にマッピングしてくれるらしい。
フォルトゥナの技術力には驚かされるばかりだが、神ということなのでそれぐらいは簡単なのだろうか。
そんな事を考えながら二人は近くの水が汲める場所、川か湖を探していたのだった。
「なぁ、スラミ。大分歩いてるけどもし水辺を発見してもこんなに歩いてたらいちいちログハウスまで水を運べないんじゃないか?」
先導するスラミの背中、もとい身体を追いかけながら涼はふと思った疑問を口にした。
スラミは器用にも前に進みながらいつものように体内から看板を取り出して頭の上に設置して涼に読ませた。
「『その点については問題ありません、短期的な解決策と長期的な解決策の2つを用意してあります』」
そうスラミは涼に読ませながらどんどん前に進んでいく。
スライムの弾力のありそうな体で木々の間をどんどん跳ねながら進んでいくスラミに置いて行かれないように涼は看板を読みながらついていく。
「それならいいけどな、にしてもマジで大自然って感じだな......見渡す限り木と草と花ばっかりだ」
エピクロスに転移する前の涼は都会育ちだったためあまり自然に触れてこなかった。そのため新鮮な気持ちで探索をしていく。
「おっ!ちょっと待ってくれスラミ!そこの木に美味しそうな果物みたいのが沢山生ってるぞ!」
涼はそうスラミに話しかけて、木に生っている赤いリンゴのような物を指さして止まる。
スラミもその声を聞いて立ち止まってその生えている木に近寄っていく。
そうして涼が自分の背丈よりも高い木にジャンプしながら一つもぎ取ろうとしている横で、スラミは自身の身体を触手のように伸ばし簡単にいくつか収穫して手頃な大きさの物を手渡してくる。
「流石にジャンプじゃ届かないか、スラミありがとう。ちなみにこれリンゴに似てるけど食べても大丈夫な奴か?」
「『そちらの実はこの世界で一般的に食されているアポリの実です、自然に生えてることは珍しく普通は農家が栽培していますが新大陸では普通に生えているみたいですね』」
そういって涼は受け取ったアポリの実を一口かじりついてみる。
シャリと軽快な音を鳴らして味わってみると爽やかな風味と共に果汁が口の中に溢れてくる。
「酸っぱさが結構強いけど美味しいなこれ」
そう言って涼は食べれる部分をぺろりと食べてしまった。行儀は悪いが持っているわけにも行かないので残った芯の部分やヘタの部分はぽいっとそこらへんに投げ捨ててしまう。
「『本来はもう少し赤く熟した頃合いが食べごろとされています、まだ少し青い部分が残っていますので酸っぱさはそのせいでしょう』」
そう言いながらスラミは生っている実を次々収穫しながら身体の中にしまっていく。
その様子を涼は見ながらどういう構造になっているのか疑問に思いつつアポリの実をもう一つかじるのであった。
ーー
そうして少し腹ごしらえもした所で二人はまた水辺を探しに歩き始めると比較的早く湖のような大きい水辺を発見することが出来た。
「おーっ!広いな!ここなら魚とかも釣れるんじゃないか?」
湖を視界に入れた涼は駆け足で湖畔まで近づいていき、身体をうーんと伸ばして空気を味わっている。
そうして自然を満喫した後水面の中を見つめて魚を探してみたりと前の世界の都会では味わえなかった体験を楽しんでいる。
そうしてスマートフォンを取り出してマップを開いてこの場所を登録する、森の中を大分歩いたみたいだがログハウスから徒歩で20分ぐらいの場所のようだ。
そんなことをしている涼の横にスラミがやってきて身体の一部を触手に変形させて湖の水の中に潜らせていく。
「えっと......スラミは何をやっているんだ?」
「『この湖の水質がヒト族である貴方が摂取しても安全かを確認しています』」
そういってスラミは触手部分から水を汲み上げている様子で身体を小刻みに震わせている。
暫くそうしたあとスラミは看板をまた出して結果を報告してきた。
「『この湖の水はヒト族が摂取しても安全だと判断出来ました、しかし微量ながら魔力が浸透している様なので過剰な摂取は魔力酔を起こす危険性があります』」
そうスラミが提示してきた結果を見て涼は見慣れない言葉を疑問に思い質問をする。
「その過剰な接種ってのはどれぐらいになるんだ?あと魔力酔って?」
「『魔力酔とはその生物が身体に秘めている魔力量を何らかの影響で大幅に溢れてしまった際に身体に悪影響を及ぼす事です、この湖の水と貴方で計算すると1時間以内に50ℓぐらい飲めば魔力酔になるでしょう』」
「50ℓって......そんなに飲んで魔力酔とやらになる前に確実にお腹が爆発するな。ってことは普通に飲んだりする分には問題ないってことか、さてどうやってログハウスまで水を運ぶかだけど......」
そう言う涼の横ではスラミが身体の一部を湖に入れた状態でまだ水を汲み上げていた。
心なしかスラミの身体がさっきより一回り近く大きくなっている気がしている。
「『運搬方法に関しては問題ありません、ある程度の量でしたら私の体内に汲み上げて拠点まで運搬することが可能です。本日はこの方法に致しましょう』」
そう看板を出しながらスラミの身体はどんどん大きくなっていく、最初に涼が出会った時の大きさがバランスボールぐらいだとすれば大量に水を汲み上げたスラミの身体は2倍近くまで大きくなっていた。
それぐらい大きな体になったスラミはどう移動するのかというと跳ねるのではなく歩いてきた方向にゆっくりと転がりながら進んでいくのだった。
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