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異世界転移は唐突に 0-3

ーー夜24時過ぎ、最終電車の中で人の波にのまれながらスマートフォンで動画を眺める男が一人。


「(やっぱり疲れた仕事終わりは可愛い動物の動画を見て癒されるに限る......)」


電車内の吊り革に捕まりながら耳にイヤホンを刺し、犬が飼い主とじゃれて遊んでいる動画をまじまじと見ている。


「(おっと、忘れてた。えーっと『今日もタロウ君可愛い!毎日見て癒されています!』っと。やっぱ動画にコメントを残すのは大事だからな......」


慣れた手つきで応援コメントを動画に残してスマートフォンのアプリを閉じて別のアプリを開く。

そこには『誰でも分かる!安心安全なペットの飼い方!』と書かれた表紙が映し出されていた。


「(この本、あまりにもペットが飼いたくて勢いで買ったはいいけど今の俺の部屋はペットを飼える広さじゃないしなぁ。まぁ将来的に飼うために勉強しないとな。あーあ、早くもふもふと生活したい)」


スマートフォンの画面をスライドしてページを読み進めていく。そこにはペットを飼うための設備の紹介やコミュニケーションの方法、餌の種類や温度など様々な事が記載されている。


「(やっぱ読み進めていくと犬や猫っていうポピュラーなペットでも色々設備とかストレスにならないように考えないといけないんだな......もっと読んでみよう)」


そうして電車に揺られながら暫くの間本を真剣に読んでいると、気が付けば辺りに人影が少なくなってきた。


「(ん......?もしかして本を読みすぎて降りる駅過ぎちゃったかな)」


男は少し慌てた様子で車両の出入口の上部にあるであろう電光掲示板をきょろきょろと探して確認する。


「......あれ?」


男は掲示板を見た際にそこに書かれていた思ってもいなかった事態に声を出してしまい、恥ずかしくなって辺りを見回すが辺りには()()姿()()()()()()()()()()


「......知らない間にもしかして電車が事故ってたかな?それとも終着駅?上の電光掲示板も真っ暗で何も書かれてないし」


辺りを見渡した後先ほどまでスマートフォンで読んでいた電子書籍を閉じ、時間と電波状況を確認する。


「あれ、スマホも電波が無くなってるし時計も進んでない......?」


流石におかしすぎる状況に男も少しは危機感を感じたのか、少なくとも運転士が居るであろう端の車両を目指して歩き始めた時。


「終点でーす、ここはエピクロス駅!さぁさぁ!早く降りて来てよ!降りた先で待ってるからさ、深海涼(・・・)クン!」


何とも中性的で気の抜けたような幼い子供のような喋り方。だが確実に聴いた者に伝わり、この声には従わなければならない(・・・・・・・・・・)という強い魅力のような声が車内アナウンスで聞えてくる。


「一体何だって言うんだ?それに俺の名前を呼んでいた......?」


涼の頭の中には様々な疑問が浮かんでくるが、先ほどの声に呼ばれているような衝動が彼を動かし、ゆっくりとだが開いていた電車のドアへと歩いていくのだった。


ドアを出た先は実にシンプルな作りで細く長い廊下のような場所に通じており、電車は涼が下りたのを確認した後ドアを閉じ発車して行ってしまった。


「......電車も行っちまったし、これでもう戻れないし進むしかないって訳か」


廊下のような道を前に進むことを決心し、奥に見える少し装飾のされた豪華な両開きの扉を目指して進んでいく。

その道中よくある無料の求人誌やガイドブックのような冊子の棚が置いてあり、子供のような字で『今なら無料!エピクロスの名物スポット集!』と書かれたポップが貼ってあったり『これは食べ逃せない!大陸メシ!』など他にも色々書かれている冊子や地図のようなものが配置されていた。


「なんだこれ?エピクロスなんて国は知らないがそれにしてはどの冊子も凝ってるな......」


その中でも涼の目についた『激レアモンスターを特集!新大陸は広い!』と書かれ、見たこともない生物が飾られている冊子をペラペラと捲ってみる。


「この写真は......CGか?それにしてはちゃんと生きてるって感じが伝わって来て妙にリアルで存在感がある」


ページには様々な生物の写真と一言コメントが添えられている。

『額の宝石は時価1000000G!?驚きの生物ゴールデンカーバンクル!』や『目撃した者は生きては帰れない!?湖の悪魔リヴァイアサン!』など近年のオカルト雑誌のような文字や写真が連なっていた。


「何かの新作ゲームの攻略本?にしてもゲームには疎いがこんなリアルなゲームを作れる時代になったのか...?」


などペラペラと捲ったあと涼は冊子を元の場所に戻して恐らく先ほどの声の主が待っているであろう先へ進むことにした。

そうして少しだけ歩いたあと、道中にはまだほかの冊子もあったがそれほど興味はそそられなかった。それよりもこの状況をどうにかして家に帰らねばいけない、明日だってまだ仕事ある日であり帰宅して睡眠時間を確保しないといけない。


「さてと。とりあえず見えてた扉の前まで来たけど......」


電車を降りた時から見えていた少し豪華な扉の前まで来た涼は扉の向こう側から感じる何かのプレッシャーのような物をヒリヒリと肌で感じながらドアの取っ手に手を置いた。


「開けるしかないか、頼むから帰らせてくれよ...!」


意を決して両開きの扉をゆっくりと身体で押しながら開いていく。

ドアの隙間からは光が徐々に漏れてきており、涼が扉を開いていくにつれてその量も増していく。

そうして開ききった先、ただ真っ白で広い空間にちょこんと置かれた高級そうなテーブルと左右に置かれた椅子。

テーブルの上にはティーカップが対で置かれており、クッキーなどの茶菓子も同時に置かれている。

その右側に腰を掛けて上品な仕草で恐らく紅茶を嗜んでいる存在がいた。

そして、電車の中で聞こえた声と同じ声で涼に向かい話しかけた。


「ーーようこそ、新世界《エピクロス》へ」

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