新大陸で生きる方法 1-5
ウィンドステップによって颯爽とログハウスまで走って戻ってきた涼。
扉を開けるとスラミがアポリの実の皮をを器用にもシャリシャリと剝きなが涼の帰りを待っていた。
「『おや、ウィンドステップの魔法も習得したのですね。風の魔力をまとっているのが分かります』」
「あぁ、日も暮れそうだったから試しに詠唱してみたんだ。これは便利だな」
そう言いながら涼は摘んできた調理草を持って台所へと向かう。
「さてと、色々動いて腹も減ったしさっきの......マナバスだったっけ?あれを調理するか。調理道具はあるのか?」
テキパキと台所の周りを確かめながらスラミにそう問いかけてみる。
「『用意されております、左の食器棚の下の扉を開けてください』」
「左の......っと、食器もちゃんと用意してくれてるんだな。下のここかな?」
そう言いながら食器棚の中を見ていく涼。
そこには質素ながらもしっかりと使えるようにと木製の平皿や丸皿などが用意されていた。
下の扉を開けるとそこには新品のような鉄の鍋や包丁やまな板なども完備されている。
「使いやすそうな器具ばかりでフォルトゥナには感謝だな。よし、これでマナバスとやらを捌いて焼こう!」
意気揚々と服の袖を捲って調理場に立つ涼、捌こうとしたときにふとした疑問をスラミに質問する。
「ちょっと待てよ、俺は元の世界の魚の捌き方なら分かるけど異世界の魚も同じなのか......?スラミ、この魚は俺の知る方法で捌いて大丈夫か?」
「『問題ないかと思われます、私は貴方の元居た世界の事を全てを把握はしていませんが、そのマナバスに類似した魚が存在している事は把握しております。構造は同じかと』」
「それを聞いて安心したよ、あんまり料理は得意な方じゃなかったけど節約のために色々試したりしたからな......」
そう言って涼はまな板の上にぬめりを水洗いして取ったマナバスを乗せて、まだ少しびちびちと動いていそうなそれを捌いていく。
「確かに構造は鯖とかと同じだけど......身の色が青いのは異世界ならではだな......」
「『魔力を集める性質のあるマナバスには保有している属性によって身体の色が変わる性質があります、青いのならば水属性を多く含んでいるということですね』」
スラミがなにやら解説をしてくれているがそれを流し見しつつ涼は捌いていく。
「そういやスラミは食事はどうするんだ?必要ならスラミの分も調理するけど」
「『私は水さえあれば生存することが可能ですのでそちらは貴方が食べてください』」
「了解、それにしても水だけで大丈夫なのか......俺もそうなったほうがいいのかもな......」
いまいち目の前の魚の色を見て食欲が湧かない涼はブツブツと何かを言いながら調理を続ける。
そうして大骨を取り身をいくつかに切り分けたあと、スラミにIHのような器具の説明を受けて焼いてみた。
「よし、これで調理草をまぶして一緒に焼けば生臭さとかも消えて良い感じになるだろう。にしてもマナクリスタルは便利だな......」
IHのような器具には中心に小さめのマナクリスタルが設置されていて、周りの器具には火属性と水属性の簡単な魔法の術式が組み込まれており使用者が少し魔力を流し込むだけで火を発生させてくれるらしい。
消すときは水の属性の方に魔力を流し込めば、属性が相殺されて消えるらしい。まだよくわからん。
「よーし、焼けたな。異世界に来て最初のちゃんとした飯だ、匂いは......なんかさっぱりしてる?」
元の世界で嗅いだような魚の香ばしい匂いではなく、どちらかといえば果物のような清涼感のある匂いがする魚を不思議に思いながらもテーブルへと運んでいく。
「あとはスラミが剥いてくれていたアポリの実を用意してっと」
食器棚から木の平皿とボウル、それとフォルトゥナが気を使ってくれていたのが箸が用意されていたのでそれを取って席に座る。
「それでは異世界のマナバス、いただききます!」
箸を身にいれると柔らかく小骨もほとんどない、するっと取れた身を口へと涼は運んでいく。
そして口の中で確かめるように嚙みながらゴクリと飲み込む。
「『どうでしょうか?こちらの世界の味は』」
「なんていうか......魚というより野菜のようなフルーツのような......さっぱりしてる、でも」
そう言って涼は箸で大きく身を取って食べた後にスラミに向かって言った。
「異世界って感じがして嫌いじゃない」
異世界に来て最初の食事は驚きの連続だった。
まったり書いてます