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修行編 第71話 タイの源を見て日本へ その1(97)


大畑健一の乗せた列車が、「ピサヌローク」の駅に近づいていくと、車掌さんが連絡をしてくれた。

これはチケットの検札時にあらかじめ教えてもらうように念を押したからであった。

駅に着いた時には、外には夕暮れが迫ってきた。

スコータイ遺跡の観光は明日にとって置くこととし、この日は街中の安宿を探して、そこで1泊した。


翌朝、前の日に早く眠ったのが良かったのか目覚めが良い。

朝食を市場の屋台で軽く済ませてからスコータイ行きのバスに乗った。

地元のバスは、車体がとにかく派手で、車内は、運転手の好みなのか?タイの演歌が大きなボリュームで響き渡る。

健一の姿を見て、明らかに旅行者がスコータイ遺跡を見に行くことがわかったのだろうか?

通路を挟んだ隣の席に乗っていた地元の学生らに「スコータイハ、ココダヨ」と教えてくれたので、

両手を合わせ“ワイ”を行い「コープンクラップ(ありがとう)」

とお礼を言ってバスを降りた。


入口の料金所のところにレンタルサイクルの店があり、自転車を借りて見学を開始。

いきなりスコータイ遺跡を紹介した本などで紹介されている仏像や仏塔などが立ち並んでいた。

健一は、元中国史の研究者という経験から、一つ一つを丁寧に見学し、メモをキッチリと取りながら

「アユタヤと違って破壊されなかったとはいえ、見事なまでの造形美だなあ」と研究者の気持ちで感心し切るのだった。


特に、スコータイ遺跡の中心を取り囲んでいる城壁の北側から少し離れた所にある、“ワットシーチェム ”には圧倒されるのだった。

ここは屋根のない石の大きな壁に取り囲まれたような狭い空間にある大きな石仏が鎮座し、表現のしようのない感動を健一に与えるのだった。


歩き回って、少し疲れた健一は、スコータイの公園のベンチで少し横になった。

何も考えずに公園の芝生を見ていると、遠くに、黒髪を靡かせた千恵子らしき姿が見える。「あれ?夢??」不思議な感覚の健一であったが、さらに、その千恵子が泰男らしき子供と手をつないでいるように見えるのだった。しかし、直ぐに幻が消えたかと思うと、目の前にはただ芝生が見えるだけであった。


「あれ?そこに居るのは大畑君?」健一を日本語で呼ぶ声がしたので、慌てて起き上がると、目の前に、黒い後ろ髪が結ばれているのが見える「え?千恵子??」と一瞬思って慌てるが、落ち着いてよく見ると男性であり、カメラのようなものを持っていた。その瞬間にシャッター音が!吉野一也であった。

「ああ、ええ?吉野さん??また僕の間抜けなところを撮られちゃった」

「いやいや、こんな所にまさか大畑君がいるなんて」吉野も驚いた表情をしていた。

「うん、ちょっと休暇を貰ったもので、吉野さんらのお勧めのスコータイに来たんです。やっぱり写真で見るのと実際に見るのは大違いですね。みんなが言うとおり『素晴らしい』の一言に尽きますね。でも吉野さんは確か井本とスリランカに行ったのでは?」

健一の問いに、少し笑みを見せる吉野。

「スリランカには井本さんと確かに行ってきました。3ヶ月ほど滞在後、彼は研究のために日本の大学に戻りましたが、私は急ぐ必要も無かったので、どこかに寄り道をしようと思ってチェンマイとこのスコータイに再度遊びに来たんですよ。スリランカの仏像とも比較したかったので」

「そうだったんですか。実は、僕休暇を貰ったのは理由があって」と健一は、日本に戻るべきかどうか迷っている事を吉野にしゃべるのだった。

「難しいところですね。私がこの問題に結論を出す事はできませんが、逆に何も考えずに直感で動いたほうがいいのではないでしょうか?」

吉野のわかるような、わからないような回答に「はあ~」と気力の無い返事をする健一であった。


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