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修行編 第47話 バンコクで待つ新たな修行の日々 その1(74)


大畑健一は、バンコクでの新しい職場への勤務まで2日間休めたので、バンコクでの生活に必要な物を買い揃えたり、青木貿易のバンコク事務所に挨拶に行ったりした。

しかし健一をチェンマイに導いてくれた中堀幸治は現在南部のプーケットにいるとのことで、

残念ながら再会は果たせなかった。


いろいろ準備を続けているうちに、休暇もあと半日となった午後、いつものようにチャイナタウンへ散歩、そのままチャオプラヤー川のほとりに。

「今度こそ、このバンコクで頑張って、いつか必ず独立するぞ!」健一が、川に向かって叫ぶ。


『おう!君は大畑君じゃないか!!』

後ろで大きな怒声が聞こえ、振り向くと本松親子が立っていた。父・友和は、いつものように空手衣姿であったが、その隣にいる息子和武は、上半身裸のムエタイ選手の格好をしているのだった。


「あっ本松さん。今日は試合ですか?」

『そうだ!!君に会えたのも吉兆に違いない。これで和武の勝利を確信したぞー!!』

いつもにもまして、吼えるような大声を川に向かって投げつける友和。


「大畑さん。チェンマイでお会いしてから、デビュー戦と第2戦と連勝できました。

実は、今夜第3戦目の試合が夜あるので、その前にここで気合を入れにきました。でもまたお会いできるとは・・・。もしお時間がありましたら、ぜひ試合を!」「あっごめんなさい。今日はさすがに無理なんですよ」和武の話をあわてて遮って断る健一。

「実は、僕もバンコクに転勤に成りまして、その準備をしている最中に、ここに抜けてきたんですよ。だから落ち着いたらということで」

「そうなんですか!それでは、一緒に川で気合を入れましょうよ」

和武の提案に大きくうなづいた健一は、

友和と3人で大声を川にぶつけた。

『頑張るぞー』



“ターベチェンマイ バンコクサイアム店 ”での初出勤の日を迎えた。

サイアム店の店長がスタッフに健一を紹介。

すぐに厨房に入り、一人前の料理人として迎え入れてくれた。「バンコクの別の店で、かつてゴミ収集など酷い扱いを受けたことを、ほろ苦い思い出として懐かしく感じるなあ」健一は感慨深くつぶやいた。


健一にはシェフとして料理を作ることに加えて、若いシェフの育成も任されてることになっていた。

実は、ターベチェンマイがバンコクで多店舗展開を目指している関係で、シェフの数が慢性的に足りない状況であった。


バンコクに転勤になったとはいえ、あくまで健一の表向きの仕事は、青木貿易から派遣された日本料理人である。

だが、実質的にはタイ料理全般を担当する立場であった。


ウィチャイ社長は、健一が非常に熱心に勉強して、技術をものにしたことを横で見ていたので、若い料理人の育成を担当させる事が適任と考えたようであった。

健一は、厨房に入ったその日から、

ウィチャイ社長の意向に従い、事情を知っている店長の許可を得て、若いシェフの育成を積極的に行った。


元々東京に居る時から、家庭教師のアルバイトをしていたりタイ料理研究会で、料理講師として指導し、トンブリーレストランでも新人を育成した経験があった。

その上、今の健一のタイ語の能力は、ネイティブのタイ人とも十分渡り合える(議論も出来る)くらいの上達振りだったので、すべてがスムーズ行われた。

さらに、チェンマイでは、モンディ師から料理の味について高い評価を頂いたことが、バンコク店でも噂として広まっていたことも有利に働いた。


健一は、タイ料理だけでなく、日本料理のほうも積極的に指導。

社長の許可を得て、バンコクサイアム店では、メニューも増やした。

チェンマイの本店で用意した3品(寿司盛り合わせ、てんぷら盛り合わせ、寄せ鍋)

に加えて、コロッケ、トンカツ、鶏の唐揚の単品3品を追加。

いずれも、かつて居酒屋源次で客として親しみ、チェンマイの日本料理店武士王の大塚信長の指導を受けた料理の数々であった。


だが、健一にとって一つだけ気になることがあった。赴任してから2ヶ月後の8月から、なぜか健一の勤務日が週6日から5日に減っているのだった。

店長に理由を聞くと「社長からの意向だ、それ以上は俺もわからない」という。

健一にとっては、不気味以外の何物でも無く、日々の気持ちの中でも少し引っかかるのだった。


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