8 直政
ここら辺からちょくちょく物語終盤で活躍する武将達が出てきます。
次回からは1話分が長くなるのでご期待ください
「羽柴も大したことありませぬな!」
初戦で羽柴軍の中でも精強で知られる森長可を撃破した徳川勢の士気は上がっていた。
「このまま池田も撃破致しますか?」
榊原康政が家康に問いかけた
「我々はいつでも出る準備は出来ております。」
本多忠勝も続く。
「御二方とも功を焦りなさるな。これは我ら徳川家が天下を取る上で絶対に勝たねばならぬ。それゆえ慎重にいくべきでありましょう。」
井伊直政は冷静だった。
「左様なことお主に言われんくても分かっておるわ!」
本多忠勝が怒鳴りつける。
逆に榊原は
「確かに直政の言う通りじゃ。儂らも焦りすぎたかもしれぬ。」
しかし本多は納得が言ってないようで立ち上がった。
「お主ら、辞めんか。殿の前であるぞ。」
酒井が止めに入った。
それを見ていた石川数正は呆れていた。
(外様の井伊を譜代の本多はまだ認めておらぬ。これでは羽柴に勝てるかどうか……)
「まあ良いでは無いか。平八郎(本多忠勝)は戦の前で気が立っておるのじゃ。」
家康は穏やかな表情だった。
「申し訳ございませぬ。殿の前で。」
「私も出過ぎた真似を。」
2人とも家康に頭を下げた。
仲は悪くても家康への忠義は2人とも同じだった。
「又八と小五郎のおかげで池田も迂闊に我が軍に手は出せぬ。新十郎(大久保忠世)、彦右衛門(鳥居元忠)、お主らで小牧山城を落としてこい。」
「ははっ!」
大久保と鳥居は直ぐに小牧山城を落とした。
その知らせを聞いた家康も直ぐに小牧山城内に入った。
「秀吉が大軍を率いて押し寄せる前に城の防御を固める必要がある。準備は万千代(井伊直政)に任せる。」
「ははっ!猿めが手を出せぬようしてまいります。」
早速直政は準備に取り掛かった。
「なぜあの小僧めに……」
忠勝がボヤいた。
「平八郎。お主が悔しいのはよう分かる。わしもお主を評価していない訳では無い。しかし彼奴はわしと同じように幼い頃から苦労しておる。だからこそ彼奴に手柄をやらねばならぬ。」
「そうなのでござりますか?」
忠勝はキョトンとしていた。
「なんだ知らぬのか?なら話してやろう。」
家康は笑いながら直政の昔話を始めた。
その頃大阪城では
「やはり功に焦りましたな。」
光秀はやっぱりなという顔をしていた。
「武蔵はまだ若いからのう。わしも又左(前田利家)も昔はそうじゃった。」
秀吉は笑っていた。
「笑っている場合ではございませぬ。徳川は既に防備を固めており池田殿は手が出せぬご様子。急いで小牧まで向かうべきでございます。」
黒田が忠告した。
「私も官兵衛殿に同意見でござる。早く行かねば手遅れになりまする。」
光秀も続く
「そうじゃな。皆に命じよ。出陣するぞ!」
ついに秀吉本体も動き始めた。