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81 豊臣征伐 ⅴ

「前田勢は筒井勢が進撃したため退路を立たれ死者四千人、その筒井勢も大谷勢の攻撃に耐えられず死者五千人、続く堀勢は死者二千、藤堂勢は千、伊達勢は五百、八丁目口を攻めた森勢は敵に大した打撃を与えられず撤退、谷町口の長宗我部勢は敵を追い詰めるも大谷、井伊両軍の攻撃を受け撤退。この戦は完敗です。」


池田輝政が報告する。


その横では前田利常、筒井定次、森長可、堀秀成が座していた。

皆額から汗を流し震えていた。


「能登守、父の汚名を晴らそうとしたようだな。その心がけは悪うない。」


「うう、面目次第もございませぬ。」


利常はまだ13歳、これからの政治の時代を担う若者に武功を求めるのは少しキツいと考えた信秀は彼を許した。


「それで筒井……。貴様はどうしてくれる?」


信秀の目の色が変わった。


「そ、その……我らは前田殿が危ないと考え……」


「危ないならむしろ退路を作るべきでは?そのような言い訳はやめられよ。」


光秀も冷たく言う。


「下知は後で降す。お主は大和にて蟄居しておれ。兵は秀雄に預ける。」


「くっ!ははぁ。」


定次は悔しそうだったが味方の退路を立ち結果的に大損害を蒙ったのだから当たり前だろう。

この後、彼は切腹させられ大和は別の者に与えられる。


「武蔵はとりあえず毛利か長宗我部から弓を借りてこい。秀成も副将として行動を慎め。」


「申し訳ありませぬ。」


2人とも不手際を謝った。


5人が出ていった後、長宗我部信親が変わって入ってきた。


「私に何か御用で?」


「そなたの水軍が展開しておるだろ。あれに詰んである石火矢はどこまで届く?」


「天守閣もいとも簡単に壊せましょう。しかし何故?」


「上様はとりあえず淀君を脅し和議を結ばせ堀と大谷丸を破壊するお考えです。」


「なるほど、堀さえなくしてしまえば大坂城など裸同然。お見事なお考えでございます。」


「うむ、では大任任されてくれるか?」


「お任せくだされ。」


翌日から長宗我部勢は昼夜問わず鉄砲やら大筒やら石火矢やらで豊臣方に圧力をかけた。

さらに南蛮製の大砲まで持ち出し撃ちまくった。

すると天守閣に直撃したのだ。


「な、なんと……。治長!」


その惨状を目の当たりにした淀君は


「ははっ!如何なさいました?」


「和睦じゃ!和睦を結べ!早う!」


「何故にございます!形部殿、兵部殿その他の方方は奮戦されております。」


「うるさい!和睦を結ぶのじゃ!」


パニック状態になりまもなく和睦の使者が織田本陣に訪れた。


和睦を結んでからの織田方の対応は早かった。


本丸を残して二の丸、三の丸を破壊し、惣構の南堀、西堀、東堀を埋めることと大野治長から人質を取ることを条件に秀頼と浪人衆の安全を保証した。


戦が終わって亀山城に戻った光秀に信じ難い報せが入ってきた。


「直政様が危篤とのこと!」


「なに!?」


光秀は直ぐに姫路城に向かった。


「これは殿……。申し訳ございませぬ。」


「謝ることはない!まだお主には生きてもらわねば困る!」


そうは言う光秀だが秀満が衰弱しているのは明らかだった。


「十兵衛様、美濃より追われ50年、まさかここまで来るとは思えませんでした。」


「まだまだ終わりとは言わせんぞ。」


「倅は生き延び大名になり私もこのような立派な城を頂けました。」


「……。」


「それと帰蝶様の元にも1度行ってあげてください。殿のことを打ち明けたら全てが終われば顔を出せと。」


「言ったのか!?」


「細川殿と相談致しましてな。そろそろお別れのようです。」


「左馬助!」


「あの世にて利三とお待ちしておりますぞ。」


そういうと秀満は静かに目を閉じた。


「忠義者め……」


光秀は涙を堪え手を合わせ出ていった。


秀満は利三と共に堀家にも明智家にも縁のある美濃に埋められた。


しかし光秀には悲しむ間もなかった。

秀満が死したとなれば次は自分だ。

それまでに何としても豊臣を滅ぼさねばならないと。

そして慶長20年、ついに最期の戦いが始まる。

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