79 豊臣征伐 ⅲ
「今福にて佐竹勢が豊臣方の盾で苦戦したのは知っておるな?」
光秀が呼び出した毛利秀元に聞いた。
「ははっ。鉄砲では歯が立たぬと聞きました。」
「それでな、博労淵の攻撃は長宗我部のところの津野宮内少輔であったがお主に任せようと思う。」
「何故にございます?」
「お主の家は強力な弓兵部隊があるであろう。それなら盾の上から攻撃できる。盾は壊さずあと降伏した敵は皆殺しにしろ。」
「なるほど、左様な理由でございましたらそれがしにおまかせくだされ。されど何故皆殺しに?」
「織田に逆らうとどうなるか教えてやるのだ。上様のご命令である。」
その日の未明、博労淵を攻撃した毛利勢だったが敵はあっさりと降伏した。
「え、なんで?」
砦に入った秀元は唖然としていた。
「というか敵の大将が見当たらぬがどこにいった?」
砦の守将の薄田兼相がいないのだ。
「おい、大将はどこへ行った?」
そこら辺にいた兵士を捕まえて秀元が聞く。
「女子の所へ行かれてから帰ってこられませぬ。」
「え?」
「ですから遊郭に行っておるのです!」
秀元は呆れた。
せっかく毛利軍の誇る弓兵隊を使う時が来たと思ったのに盾も敵の大将もいなかったのだ。
「殿、如何致しますか?」
「敵を明日の朝、大坂城の方に逃がし背後から撃て。」
翌日の朝、秀元は捕虜達を大坂城の方へ逃がした。
「どうやら織田にも慈悲の心はあったようですな。」
こちらに向かってくる捕虜達を見て治長が言う。
「されど我らを許すとは思えぬ。そのような事が分からぬお主ではあるまい。」
吉継が言ったその瞬間だった。
ダダダァァァァァァッン
大量の銃声が鳴り響き捕虜達がバタバタと倒れていく。
「まさか……」
吉継も治長も絶句した。
「これぞ、毛利の矢。毛利を騙した事、忘れはせぬぞ。」
秀元はそう言いながら弓を引き矢を放った。
高速で飛んだその矢は逃げる捕虜の頭を貫いた。
その光景を見て怒りを顕にしたのは砦の守将の薄田兼相だった。
「俺の家臣をなぶり殺した事、後悔させてやる……」
近くにいた井伊直政は自業自得だろと思ったが家臣を失う辛さはよく分かってるので黙っていた。
同じように幕府軍は野田福島においても投降した兵士を大坂城から見えるところで皆殺しにした。
「生殺与奪、全ては我らの思うがままよ。」
鳴り響く銃声を聞きながら信秀が言った。
「そろそろ投降兵が出る頃ですな。」
光秀が予想する。
「そ奴らも皆殺しにするのですか?少々やり過ぎなのでは?」
秀治が聞く。
「ここで反乱分子を皆殺しにせんと我の天下の邪魔になるのでな。」
「左様。上様の天下を完璧なものにせねばならぬ。」
「な、なるほど……。」
口ではそう言いながらも秀治はどうも納得していない様子だった。
織田本陣を出た後、
「ところで秀成はどうじゃ?」
光秀が聞く。
「森殿と池田殿の所におります。豊臣の兵を皆殺しにしてやると言っております。」
「そうか。良き心がけじゃな。」
この兄弟はお互いの未熟な部分を上手いこと補えていると光秀は思った。
その頃、大坂城では投降しようとする兵たちが足早に外へと向かっていた。
「どこへ行くのじゃ?」
門を出ようとした時、どこからが声がした。
「わ、我らは見回りに。」
「ほう、見回りか。この時間の見回りは私の兵のはずだが?」
「……!」
そう言って出てきたのは槍を持った井伊直政だ。
「こ、これは兵部様。こんな夜中に何を?」
兵士達が汗を流し震えながら聞く。
「ふむ。不届き者どもを始末しに来たのじゃ。お主らではないだろうな?」
直政が顔を近づけて聞く。
「め、滅相にもありませぬ!持ち場に戻りますゆえ何卒御容赦を!」
「そうか、ならぬ。」
笑顔でそう言った直政は全員をあっという間に突き殺した。
「目には目を、恐怖には恐怖を。なかなか良い考えだろ?」
「これは形部殿、ここでこれらを見逃しては大納言の思う壷でしょう。」
「兵部殿の申すとおり、これは敵の罠じゃ。これらは首を切り取り城門にでも晒すとしよう。」
その日に逃げ出そうとした兵士たちが殺害され首を晒されたことで投降兵は一切出なくなった。
それから数日後
吉継は自身が作った砦、大谷丸にいた。
眼下に広がるのは堀秀成、池田輝政、森長可ら東国勢。
今ここで後世伝説とされる戦が始まろうとしていた




