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69 決戦関ヶ原 前編

お待たせしました。

関ヶ原の戦い、開幕です。

慶長5年9月15日

織田信秀率いる東軍と黒田如水率いる西軍合わせて20万近い大軍が睨み合う美濃の関ヶ原には霧が立ち込めていた。

その布陣は以下の通りだ。


挿絵(By みてみん)


「失礼します。敵の数を我が家臣が見て参りました。」


桃配山の光秀の元に黒田長政が訪れた。


「ご苦労。それでどの程度だ?」


「はっ。恐らく4万程度かと……」


「何を申しておる。10万はおると聞いたぞ?」


「戦意があるのは黒田、石田、宇喜多、大谷、小西程度。あとは敵にもなりませぬ。」


「なるほど。面白い考えじゃ。この戦、勝ったぞ!」


光秀は合戦前から勝利を確信した。


そして午前八時頃。


「治部よ……我が妻を手にかけたこと、あの世で悔いるが良い!細川全軍、射撃開始!」


痺れを切らした忠興が石田勢に千五百もの鉄砲隊による攻撃を行った。


「来たか、越中……。左近!迎撃せよ!」


三成も左近に命じついに天下分け目の戦いが始まった。


「与一郎には負けてられん!俺らも行くぞ!目指すは宇喜多秀家の陣!かかれぇぇぇぇ!」


森長可もそれに負けじと攻撃を命令する。


「相手は鬼武蔵か。豊臣家副将の武、味わうが良い!鉄砲隊撃てぇぇぇぇ!」


秀家も突撃してくる森勢に応戦した。


「森も細川も焦りすぎだ。前田殿、お主に任せて良いのだな?」


「おうよ。戦列歩兵の指揮は俺に任せな?」


「では任せたぞ。」


長宗我部軍には元親と共に呂宋に行っていた前田慶次も参陣していた。


「あの野郎、どうも水臭い。本当に大丈夫ですか?」


福留の息子の政親が聞く。


「父上が信用した男なのだから大丈夫であろう。それよりも弟達は大丈夫か?」


今回の戦いには信親の3人の弟の香川親和、津野親忠、吉良盛親も参陣していた。

そして今回先陣を務めるのは盛親だ。


「相手は黒田如水……。北条の支城や太閤の子飼いに比べれば少々きついな……」


「右衛門様。そのような弱音を吐いてはなりませぬぞ。」


家臣の桑名吉成が諌める。


「ではやるとするか。全軍弾を込めろ!俺に続け!」


こちらに向けて動き出した長宗我部軍を見て黒田軍の先陣の後藤又兵衛は驚いた。

土佐の田舎大名には似合わない南蛮製の甲冑と大量の鉄砲を長宗我部軍が持っていたからである。


「なんだあの鉄砲の数は……我らの3倍はあるぞ……」


「よし、はなてぇ!」


黒田勢が目を丸くしてその軍勢を眺めていたのを盛親は逃さなかった。

一気に鉄砲隊に攻撃を命じた。

無数の鉛玉が黒田勢に降りかかった。


「ええぃ!怯むな!全軍突撃!」


「来るぞ!銃剣を付けろ!迎え撃て!」


ここでも戦闘が始まった。


「始まったか!我らも出るぞ!」


その様子を見た信秀も出陣しようとした。


「お待ちなされ。総大将は戦うものではありませぬ。それに堀殿のご子息が殿をお守り致しておられます。」


一時が言う。


信秀の前に着陣する秀治と秀成は揉めていた。


「今、大友と藤堂が戦っておる!我らが行くべきではない!」


「何を申される!我ら堀家は今や織田家の筆頭家老。その我らが戦を眺めていろと仰せか!?」


一帯の防衛を考える秀治と攻撃を考える秀成の間で意見が対立した。


「お二人共落ち着きなされ。お味方同士でいがみ合っていれば勝てる戦も勝てませぬぞ!」


勝定が一喝する。


「勝定の申すとおりじゃ。もしお味方が危のうなったら兵を出すが良い。」


「承知致した……」


秀治の提案を秀成は仕方なく受け入れた。


「何故、毛利が動いておる!」


南宮山の毛利への抑えとして待機していた池田輝政は驚いていた。

なんと毛利軍の攻撃を受けているからである。

これはもちろん毛利本軍ではなく安国寺恵瓊と旗下に入っている毛利勝永の軍なのだが輝政が知る余地などない。


忠興の攻撃から一時間程が経過した。


「くっ!形部め。加賀での戦で勢いづいたか……」


藤堂勢の戦列歩兵による鉄砲攻撃を吉継は盾を使って受け流し逆に矢の雨を降らせていた。


「藤堂殿、ここは突撃した方が良いのでは?」


宇喜多詮家改めて坂崎直盛が聞く。


「向こうは相手の2倍。しかも野戦の名人の平塚為広などもいます。大友が来ない限り厳しいかと……。」


大友勢は宇喜多秀家の家臣、明石全登と交戦していた。


「金吾め……。内通しておるなら早く動かぬか……」


高虎は松尾山の小早川隊を睨みつけた。


「殿!そろそろ我らも去就を明らかにするべきでは?」


家老の平岡頼勝が秀秋に聞く。


「大納言の方が押されておるではないか!これでは大納言に付けば負ける……。如水に味方すべきか……。」


実際、西軍の士気は高く事実上2倍近い織田軍を相手に奮戦していた。


「だからこそ、殿のご決断が重要なのです!早くせねば戦が終わってしまいますぞ!」


「お主に言われずともわかっておるわ!今はまだ戦局を見極める!」


秀秋はイライラしていた。

そして同様に光秀もイライラしていた。


「何故金吾は動かん!毛利は何故池田を攻撃しておる!」


「毛利は恐らく安国寺かと。金吾に関しては……」


長政が説明する。


「甲州よ、金吾の尻を叩いてこい!動かぬなら大友の国崩しで木端微塵にすると申してこい!」


「ははっ!」


長政が出ていくと光秀は1人ボヤいた。」


「これでは山崎と何も変わらぬ……」


その頃山崎の戦いでも光秀と対峙していた如水は呆気に取られていた。

長宗我部軍の攻撃に後藤隊は大苦戦していたのだ。


「治部は倍近い細川勢を抑えておるというのに我らは何故負けておるのじゃ!」


「あれほどの鉄砲を長宗我部が持っておるとは誰も……」


善助もどう説明したらいいのか困っていた。


「太兵衛にも攻撃を命じよ。又兵衛を助けてやれ。」


「ははっ!」


如水の命令を受けた黒田家一の武辺者の母里太兵衛も盛親隊に攻めかかった。

盛親の兵は三千、太兵衛と又兵衛は合わせて六千。不利だと悟った盛親は撤退した。


「よし!この機を逃すな!全軍攻撃せよ!」


それを好機と見た如水はさらに井上九郎右衛門の三千と垣見一直、太田一吉ら三千も送り合計一万二千の黒田軍が盛親に突撃した。


「嘘だろ……。四倍はいるぞ。」


盛親はそれを見て唖然とした。


「やはり如水は逃がしてくれるほど甘くはありませぬな。」


「桑名……。こういう時俺はどうすりゃいいんだ?」


「この吉成に策がございます。」


「申してみよ。」


「逃げるのみ!」


そう言うと吉成は後退した。


「おい!お前だけ逃げるんじゃねぇ!」


盛親も吉成を追うように逃げ出した。


「長宗我部め。やはり優れているのは親父だけだったか。」


それを横目にそう言う忠興も苦戦していた。

島左近は見事に細川軍の攻撃を受け流し逆に押し返していたのだ。


同様に長可も宇喜多秀家に押し返されていた。


「クソガキが!俺が最前線に出てぶちのめしてやる!投石用意!」


長可は石の雨を宇喜多軍に振らせたが秀家はそれを盾で見事に防がせた。


「また盾か……」


以前、徳川との戦いで井伊直政の盾で苦戦したように今回もまた光秀達は盾に苦戦していた。


「藤堂の後詰に秀成を、長可の後詰に直政を送ってやれ。あの鉄砲を使う時が来たぞ。」


ついに光秀が開発した鉄砲が火を吹いた。

大口径の弾は楽々と木製の盾を貫通し盾部隊のの背後にいる歩兵の甲冑さえも砕いた。


「なんじゃあれは……」


秀家も吉継もそれを見て絶句した。


「この時代にこのようなものが作れるはずが……。敵は突っ込んでくるぞ!迎撃の準備をせよ!」


吉継が命じる。

そんな中粉塵から現れた一団を見て吉継は驚いた。


「六文銭の旗……。真田か!」


真田信繁率いる千の軍は皆、騎馬に乗り猛スピードでこちらに向かってきた。


「義父を討つのは誠に心苦しいこと……。されど争うことになったならば天下をかけて争わん!」


信繁は短銃を抜いた。


「面白い!どちらが早く撃てるかじゃ!」


吉継も近くにいた家臣の鉄砲を取り構えた。


2発の銃声が鳴り信繁の草摺に穴が空いた。


「甘い!甘いぞ源次郎!それでは私を討ち取る事など出来ぬわ!」


信繁の撃った弾は吉継を外れ後ろの旗印に命中していた。


「くっ!次はあなたを討ち取りますぞ!形部様!」


信繁自身は吉継を討ちとるのに失敗し撤退したがこの突撃は大友勢の立花宗茂にも影響を与えた。


「真田に負けてられないな。我らも行くぞ!かかれぇぇ!」


それまで一進一退だった大友勢と宇喜多勢との戦いにケリをつけるべく宗茂は三千の兵を率いて突撃を開始した。


「来たか、鎮西一の武士……。私が相手だ!」


それを見た明石も動き出した。


西国最強の男たちの戦いが今始まった。


「なぜ毛利は動かぬ?安国寺は戦っているぞ?」


南宮山のさらに後方に六千の兵を構える鍋島勝茂は家臣に聞いた。


「機を伺っておるのでは?」


「なるほどのう。」


「殿!大変でございます!」


そこに血相を変えた別の家臣がやって来た。


「大殿が……大殿がお亡くなりなさりました!」


「父上が……」


勝茂の父、直茂は最近病がちで今回も国許にて療養していた。


「父上は大納言に付けと申されていたが……。」


「しかしこの状況で大納言に付くというのは少し厳しいかと。」


「とりあえず様子を見るか。」


その先で池田勢と激戦を繰り広げる毛利勝永は家臣に聞いた。


「何故宰相は動かぬ!吉川は!?」


「分かりませぬ。安国寺殿も出陣を催促する使者を送っておられるのですが……」


「ええぃ!日和見する気か!卑怯なり!」


「見つけたぞ、毛利勝永!その首もらった!」


近くにいた雑兵が数人で斬りかかって来たのを勝永は難なく返り討ちにすると


「一旦引いて宰相の元へ行って参る!お主らはここを維持せよ!」


勝永は急いで南宮山に向かった。


激戦が繰り広げられる関ヶ原から東にある大垣城。

七千程の西軍の大垣城守備隊を徳川秀康率いる一万五千が包囲していた。


「力攻めは……やめておくべきか?」


「城攻めには三倍の兵力が必要と言われております。ちと数が足りません。水野殿が城内の将と密談を行うとの事なのでその結果を待つべきかと。」


家老の大久保忠隣が答える。


「そうか。誠つまらぬものよ。」


「1年前に謀反の疑いをかけられているのですから仕方ありませぬ。」


「とりあえず鉄砲でも撃っておくか。」


秀康の命令で大量の鉄砲が大垣城を攻撃した。

それを連続で行うことで敵の士気を下げる作戦だ。

見事に作戦は成功し敵から投降するものが出てきた。


(見てろよ、タヌキ親父。俺をコケにした事を後悔させてやる。)


秀康はそう思いながら空を眺めた。

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